空室不足はさらに深刻化。賃料の上昇基調が強まる。
底堅い関西の景気
関西の景気は、一部にマイナス指標が見られるものの、底堅く、緩やかな拡大が続いている。米中の貿易摩擦やイギリスのEU離脱、さらにはアメリカとイランとの緊張関係等の懸念材料も多く、政治的な不安要素はあるものの、現状では企業の設備投資も堅調である。また、安定した雇用状況を背景に、昨年10月の増税以後、個人消費も緩やかながら増加。インバウンド効果の継続もあり、百貨店やスーパー、家電量販店の販売額も増加している。
新築ビルは強気の賃料設定
シービーアールイー(株)の調査による2019年12月期の大阪オールグレードの空室率は、0.8%となった。「梅田」「堂島」エリアは、それぞれ0.4%、「中之島」「淀屋橋」エリアは、それぞれ0.1%となっており、空室不足の深刻度が強まっている。特に「淀屋橋」エリアの大型物件については、いずれのビルも満室状態で、空室予定が出たとしても、館内増床で消化され、外部への募集が出ない状況が長く続いている。同エリアでは建て替え予定のビルが4棟あり、建て替えに伴う退去願いが出され、移転を余儀なくされる多くのテナントが物件を求めていることもあり、かつてない特異なマーケットとなっている。
このような状況を背景に、どのエリアにおいても賃料の上昇基調が強まっている。新規募集の場合に限らず、現入居テナントへの継続賃料の値上げ要請も強まっている。移転先がない状況であり、周辺相場も上がっていることから、値上げ要請に対して容認せざるを得ない状況で、テナントにとっては非常に厳しいマーケットとなっている。特に大型ビルの賃料上昇は激しく、既存ビルの賃料が新築ビルと遜色ない水準にまで上昇しているものもあり、今後竣工するビルへの影響も大きいと言わざるを得ない。
その動向が注目されていた「オービック御堂筋ビル」が、年明けに竣工を迎えた。さらに2020年の後半にかけては、瓦町二丁目と新大阪に各1棟ずつ新築ビルが竣工予定となっている。いずれも賃料設定については強気であり、さらに数年続くことになる新規供給ラッシュを占う上でも、どの程度の水準で決まるのか、関心が高まるところである。
関西支社 粟井 克彦
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
---|---|---|---|
梅田 大規模ビル |
25,000円~36,000円/坪 | 依然として低空室率かつ賃料上昇が続いており、借り手にとって非常に厳しい局面が続く。募集があっても複数の競合に競り勝たなければならず、難易度が高い。 | |
梅田 中小規模ビル |
20,000円~25,000円/坪 | 低空室率かつ賃料上昇傾向。特に好立地、築浅物件の場合は梅田大規模ビルと同様の逼迫感があり、区画確保の難易度は高い。 | |
淀屋橋・本町 大規模ビル |
20,000円~30,000円/坪 | オフィス街としての評価が高く梅田と同様の状況。募集区画が出た際もその多くの場合、競合が存在しており難易度は非常に高い。 | |
淀屋橋・本町 中小規模ビル |
15,000円~18,000円/坪 | 大規模ビルに比べやや逼迫感は緩和されるものの、募集区画の面積が中小規模のため、より一層早い意思決定を求められるケースも多い。 | |
難波・心斎橋 大規模ビル |
15,000円~25,000円/坪 | 大阪全域で低空室率にあるため、借り手の検討範囲が広がりつつある。グレードや割安感が評価され決定するケースも増えており、賃料上昇が進んでいる。 | |
難波・心斎橋 中小規模ビル |
12,000円~16,000円/坪 | 梅田、淀屋橋・本町エリアや大規模ビルほどではないものの、空室消化は着実に進んでおり、好立地、築浅物件の空室に対する決定スピードも速まっている。 | |
周辺都市 大規模ビル |
13,000円~17,000円/坪 | 中心部の賃料上昇により、割安感から需要が増加。特に中心部では大型空室が非常に限定的であることから、稀少性もあり引き合いが増えている。 | |
周辺都市 中小規模ビル |
11,000円~15,000円/坪 | 中心部に比べると上昇率は穏やかではあるものの、着実に賃料は上昇している。 | |
事務所兼倉庫 市内・北摂・東大 |
4,500円~7,000円/坪 | 事務所兼倉庫タイプの空室は少ない状態が続き、企業の移転ニーズを満たすことができていない。汎用性が高い物件は早期満室になる傾向。 | |
倉庫・配送センター 郊外 |
3,600円~4,300円/坪 | LMTの空室率は4%まで低下。特定物件に偏って空室があるのみで選択肢は殆どない状況。既存物件においてもタイトなマーケットで賃料はさらに上昇へ。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。