空室率は過去最低値の0.5%を記録。今後も需給タイトな市況が継続。
テナント需要は引き続き堅調
シービーアールイー(株)の調査による、2017年12月期の福岡主要オフィスゾーンの空室率は、前期(同年9月期)から0.1ポイント低下の0.5%となった。テナント需要は相変わらず堅調で、既存オフィスからの分室設立、入居ビル建て替えによる立ち退き、IT企業を中心とした福岡への新規開設、周辺エリアの自社物件からの移転等、二次空室の発生しない使用床純増のオフィス需要が活況となっている。
空室率は低下の一途を辿っており、新規の空室予定が出た際には、外部の募集に出る前に、館内の入居テナントによる増床ニーズで空室を消化するケースや、外部募集に出ても、解約予告期間内に後継テナントが決定するケースが一般的となっている。移転を検討している企業にとっては、これまでより一層、意思決定にスピード感が求められる状況となっている。
平均想定成約賃料は、前期から2.6%上昇し、13,270円/坪(共益費込)となった。博多区、中央区の競争力のある物件では、旺盛な需要から、18,000円/坪前後の募集だったものを20,000円/坪の水準まで引き上げるケースも見受けられた。ビルによっては、入札形式による募集方法で、想定よりはるかに高い賃料で決定するケースさえあった。このような成約賃料の上昇を背景に、貸主による既存賃料の増額改定交渉が、継続して行われている。
大型新築ビルは満室竣工
今春竣工の「紙与博多中央ビル」は、好立地、ハイスペック、大型の希少物件なため、供給量以上の需要を呼び込み、満室に近い状態で竣工を迎える。また、今後の新規供給としては、2018年11月に竣工する予定の「博多祇園NKビル」、2019年1月に竣工する予定の「(仮称)冷泉町ビル」がある。「博多祇園NKビル」は、地下鉄祇園駅から徒歩約2分、貸室延床面積は約945坪、基準階面積約127坪の地上8階建。「(仮称)冷泉町ビル」は、地下鉄呉服町駅から徒歩約3分、貸室延床面積は約1,573坪、基準階面積約213坪の地上8階建である。ただし、この2棟の供給量は限定的なため、深刻な受け皿不足を解消するほどではない。今後も、タイトな市況が継続していくと予測される。
既存ビルの空室が枯渇し、市場が停滞し続ける福岡のオフィス市況においては、経済情勢が劇的に悪化しない限り、継続した需給の逼迫が想定される。これは、福岡全体の賃料水準の底上げに繋がっていくものと思われる。
福岡支店 江頭 秀人
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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博多駅前 | 12,500円~15,000円/坪 | 引き続き大型空室は枯渇。館内移転さえ停滞している。継続して入居テナント賃料の値上げが行われており、新規・継続賃料とも上昇している。 | |
博多駅東 | 10,000円~12,500円/坪 | 大型テナントの成約があり空室は若干減少。大型空室が少ないエリアのため大幅な賃料上昇はないが、引き続き上昇傾向は継続するものと思われる。 | |
呉服町 | 10,500円~12,500円/坪 | 大型テナントの成約があり空室は減少。優良物件では募集後すぐに内定してしまう。今年竣工予定のビルがあり、需要喚起が想定される。 | |
天神 | 13,000円~15,500円/坪 | 博多同様に動きは活発だが、大型空室はほぼない。新規・継続賃料とも上昇傾向。好立地な大型空き予定が、さらなる賃料上昇に影響するか留意。 | |
赤坂大名 | 10,000円~11,500円/坪 | 大型空室はほぼないため、大きな動きはなし。供給も少なく、賃料・空室率の推移は横ばいとなっている。 | |
北九州小倉 | 7,500円~10,000円/坪 | 大型テナントの需要はあるが、全体的に需要は低水準。空室は微減しているものの、相場が上昇するほどの逼迫度合いではなく賃料は横ばい。 | |
中・大型倉庫 市内 |
2,500円~3,200円/坪 | 需要は堅調。ただし、昨年、近郊に竣工した大型マルチ倉庫2棟は引き続き募集中。既存倉庫は中型を中心に品薄感が続く。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。