空室率は過去最低値の0.6%を記録。賃料水準は引き続き上昇。
賃料改定では増額交渉が増加
当社の調査によると、2017年6月期の福岡市中心部の空室率は、対前期(同年3月期)比0.4ポイント低下し、0.6%となった。想定成約賃料は、同2.4%上昇し、12,560円/坪(共益費込)となっている。
前年同期(2016年6月期)の空室率2.2%と比較すると、空室率は、この1年で1.6ポイントの大幅な低下となっている。オフィスマーケットの品薄感から、市場には多くの移転ニーズが蓄積されてきており、さらにオフィスの新規開設や、建替予定ビルからの立ち退きニーズも多い。今後も、さらなる空室率の低下が予想される。
オーナーサイドから入居テナントへの賃料増額交渉では、成功事例が増加。それが後押しとなり、さらに多くのビルが値上げを始めている。新規成約賃料は、大型ビルを中心に大幅に上昇。大型ビルの想定成約賃料は、前年同期の16,000円/坪(共益費込)から、坪当たり1,000円以上の上昇が見られる。博多・天神エリアの一等地に建つ大型ビルでは、空室が発生すると、一定の募集期間を定めて入居希望者を募り、その中からテナントを決めるといった入札形式の手法を取るケースも増えており、賃料上昇の要因となっている。
今後の新規供給に期待
2018年春に竣工予定の「紙与博多中央ビル」は、満室での竣工が予想されており、賃料については、博多エリアの最高値での成約が進んでいる。博多エリアでは、現在、3棟のビル開発計画が進められており、2018~2019年の竣工を予定している。これらの計画が具体化すれば、同エリア内のテナントの動きが活発化し、賃料水準の底上げにつながるものと思われる。
天神エリアの再開発促進の鍵となるのは、航空法による高さ制限の緩和である。同エリアの再開発計画地である「旧大名小学校跡」では、39メートルの規制緩和が認められ、現在の76メートル(地上17階相当)から、115メートル(地上26階相当)の建物が建てられるようになった。規制緩和エリアが限定的ではあるものの、他ブロックにも緩和が適用されれば、老朽化したビルの建替促進の起爆剤となる可能性が高い。この他、天神エリアの新築予定は、「天神ビッグバン」第一号となる「(仮称)天神ビジネスセンター」で、2021年竣工を目処に、既存ビルの解体が始まっている。
福岡支店 午頭 涼輔
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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博多駅前 | 11,500~14,500 円/坪 |
駅至近の大型ビル、築浅ビルに空室がなく、周辺ビルへの引き合いが増加し賃料は上昇。来年竣工のビルへの移転に伴う二次空室も限定的。
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博多駅東 | 10,000~12,000 円/坪 |
エリア全体の空室は品薄感あり。それに伴い、多少築年数の経過したビルも空室が減少傾向。新規成約賃料は上昇。
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呉服町 | 10,000~12,000 円/坪 |
主要エリアの空室減少により呉服町エリアもテナント需要は増加。空室自体も品薄な状況になってきており、成約賃料も上昇傾向。
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天神 | 12,000~14,500 円/坪 |
需要は旺盛であるが、博多エリア同様、大型空室はほぼない。中心部の空室は非常に少ない状況で、新規・継続賃料ともに上昇が続く。
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赤坂大名 | 10,000~11,500 円/坪 |
大きな動きはないものの、緩やかに空室は減少し続けている。新規賃料に関しては緩やかながら上昇傾向に転じている。
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北九州小倉 | 7,500~10,000 円/坪 | 緩やかながら空室は減少しているが、依然としてテナント需要は停滞気味。大型空室もまだ残っており、賃料水準は横ばい。 | |
中・大型倉庫 市内 |
2,500~3,200 円/坪 |
需要は引き続き堅調。注目されていた大型物流施設が竣工し募集が続いている。既存倉庫は品薄感が続く。
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空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。