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賃貸物流倉庫・大型貸し倉庫の記事

値上げ交渉がうまくいかない理由を、人間心理から考える

値上げ交渉って、難しいです。

断られるならばまだしも、「取引を切られたらどうしよう!?」といった最悪の結末を想像し、交渉を躊躇してしまうケースもあるでしょう。

現在、燃料費の高騰が続き、私たちの日常を支える食料品、日用品なども次々と値上げラッシュが続いています。「7月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は114.5と、前年同月比8.6%上昇した。前年の水準を上回るのは17カ月連続」、こんなニュースも飛び込んできました。

しかし、実際のところ、値上げをお願いされる側となるお客さまは、どのように感じているのでしょうね?

値上げ交渉がうまくいかない理由を、人間心理から考える

燃料サーチャージ導入に二の足を踏む運送会社

筆者は物流ジャーナリストを自称し、さまざまなWebメディア、企業オウンドメディアなどで執筆活動を行っています。

先日、物流費高騰をテーマにした記事を執筆しました。

多くのメーカーや商社などは値上げの理由として、原材料費と物流費の高騰を挙げてきます。でも実際のところ、実運送を担う運送会社では、運賃の値上げなどできていないのではないかと、私は考えたわけです。

実際、東京都トラック協会が2022年1月31日に行った「第36回運賃動向に関するアンケート調査」によれば、過去半年以内に運賃を値上げした運送会社は5.3%。さらに、燃料費高騰をカバーすることができるはずの燃料サーチャージについて、導入している運送会社は、13.6%に留まります。

このアンケート結果だけを見ると、立場の弱い実運送を担う運送会社が運賃値上げ交渉を行っても、立場の強い親請け物流企業や、製造・卸・小売などの荷主企業が受け入れてくれないという構図が思い浮かびます。

しかし、私が運送会社に取材をしたところ、予想とは少し違う実態が見えてきました。

「荷主は、『燃料サーチャージだったら受け入れられるんだけど』って言うんだけど、計算の仕方が分からないんだよなぁ」

1社だけではないですよ。表現は違えど、同様の趣旨の回答を、複数の運送会社から得ました。

「燃料費が高騰しているから、燃料サーチャージで高騰分を負担する(してもらう)」──この考え方は、荷主企業の立場からも、運送会社の立場からも、理にかなっています。だから、「運賃値上げは受け入れるけど、ただし燃料サーチャージで賄わせてくれ」と言う荷主がいるわけです。

理にかなった行動をしていないのは、むしろ運送会社の側ということになります。

マーケットを見る投資家、隣を見る不動産オーナー

人の考えは、立場によって異なります。
さらに言えば、常に合理的な考え方ができるわけでもありません。

不動産賃貸を例に考えましょうか。

「賃貸マーケットが上昇基調にあるのであれば、当然自分が投資している物件の賃料も上がるだろう」──これは投資家の目線ですね。

一方で、不動産物件のオーナーや、不動産会社の営業の中には、「確かにマーケットレポートでは賃料は上昇基調にあるって言ってるけど。でも実は、隣の物件が賃料を値上げしているとは限らないし。むしろ、レポートにあった平均賃料よりも、安い賃料で提供している可能性もあるよな…?」と考える人もいるでしょう。

物件オーナーや営業は、自身の判断に基づき、時としてマーケットの相場感よりも安い賃料で物件を貸してしまうことがあります。

「バカなことをしやがって...」と思う投資家と、「現場を知らないくせに...」と思う物件オーナーや営業たち。

この違いは、どうして生まれるのでしょうか?

値上げ交渉がうまくいかない理由を、人間心理から考える

人は常に合理的な意思決定ができる...わけではない

初期の経済学・経営学は、「人は己の利益を最大化するために、完全に合理的な意思決定ができる」という考え方をとってきました。

これは、経済人モデルと呼ばれます。

しかし、時として人は、非合理とも思える選択をしてしまうことを、私たちは経験則として知っています。

この、「人は完全に合理的な意思決定ができるわけではなく、とりあえず満足できる水準で意思決定を行う」という考え方を、経営人モデルと呼びます。

燃料サーチャージを良しとする荷主や、不動産賃料はマーケットに支配されると考える投資家は、「人は常に合理的な意思決定ができる」と考える経済人モデルに従っていると言えます。

一方で、物件オーナーや営業は、経営人モデルの振る舞いをしてしまったと考えられます。ただし、「合理的な意思決定ができていない」とまで断じるのは違うかもしれません。

物件オーナーや営業は、自分なりに合理的と思える意思決定をしたのですから。

値上げ交渉がうまくいかない理由を、人間心理から考える

お客さまに怯え、見積すら出せなかった運送会社

人は全知全能ではありません。

人はみな、自分の理解できる範囲の知見、業界の常識の範疇で判断せざるを得ません。もちろん、相手のことを、完全に推しはかることなど、できるわけがありません。

それゆえに、客観的に見ればとんでもない行動を選択してしまうこともあります。

以前、私はある運送会社にお客さまを紹介したことがあります。

その運送会社は、精密機械輸送を得意としていました。しかし、得意分野の特殊性もあり、経営が悪化していたのです。

一方、私が紹介した会社は、製造機械のメーカーでした。

仕事の内容から見れば、お互いの相性はバッチリでした。「これはうまくいきそうだ!」、私は手応えを感じていました。

運送会社からメーカーに対し、見積書を後日提出することを約束し、打ち合わせは終わったのですが。

「見積書の提出、お断りしてはダメでしょうか?」と、運送会社社長が言い出したのです。

理由は、メーカーの部長が打ち合わせ中に発した、「価格勝負はできないと思うよ」という一言にありました。

運送会社社長は、これを値下げ圧力と受け取ったのです。

「違いますって!、あれは『価格ではなく、提案内容で勝負してね!』って意味です」と私は、フォローしました。

ちなみに私は、このメーカーとは10年来の付き合いであり、私自身、何度も同様のことを部長から言われたことがあります。

この部長は、とても合理的な考え方をする方です。言ってみれば、常に経済人モデルを実践することを自身に課しているような方とも言えます。部長が求めるのは、「安いだけのもの」ではなく「費用対効果が高いもの」です。常に取引先の価格と能力を比較検討し、より費用対効果の高い取引先を求めます。

「貴社の考える最高の提案と、貴社にとっての最適な価格を提示すれば良いだけですよ」と諭す私に対し、運送会社社長はポツリとつぶやきました。

「最高の提案って、何を提案すれば良いんですか?どうせ、最終的には価格で判断するくせに...」

結果、この運送会社は、見積書を提出することはありませんでした。

運送会社社長が、これまでどのように営業活動を行ってきたのか、私は詳しくは知りませんが、この方はこれまでの経験から、価格勝負ではなく提案内容で取引先を決めるという考え方をする人がいるということを、信じられなくなっていたのでしょうね。

違う見方をすると、10年の付き合いがある私のメーカー部長に対する人物評よりも、たかが1時間位の打ち合わせで感じた、自分自身の人物評に囚われてしまったとも言えます。

こういう考え方をしてしまう社長だから、経営を悪化させたのか。
それとも経営が悪化していく中で、合理的にものごとを観察、判断することができなくなっていったのか。

どちらにせよ、結果、この運送会社社長は、ビジネスのチャンスを自ら棒に振ったのです。

営業交渉や、価格交渉(値上げ交渉)に、絶対に成功する方程式などありません。ただ、非合理でよくわからないものに怯え、自らチャンスを手放すくらいならば、思い切って思うがままに交渉を行い玉砕したほうが良いと、私は思います。
失敗からでも、学びと成長は得られますから。

ところで、本稿の中で「理にかなった行動をしていないのは、むしろ運送会社の側」と指摘しました。この原因って、何でしょうね?

物流に従事する人々は、皆、物流のプロフェッショナルです。
ただし、輸送、保管、荷役、包装、流通加工といういわゆる物流の基本5大要素を現場で実施することは得意でも、その知見を荷主などの(誤解を恐れずに言えば)物流の素人に提供することができる「物流のプロフェッショナル」はどれほどいるのでしょうか?

次回は「物流従事者は、ホントに物流のプロなのか?」を考えてみましょう。

執筆・物流ジャーナリスト 坂田良平

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