三菱商事グループのスケールメリットを活かした
施設開発ソリューションを展開。
デベロッパーとして、物流施設開発の大型案件を多数手掛ける三菱商事都市開発株式会社。三菱商事グループとして開発や運用を行う上で、同社はどのような戦略を掲げているのだろうか。また、三菱商事グループであるというメリットは、どのような形で活かされるのだろうか。横浜、川崎、千葉で新規物件の開発に取り掛かるなど、着実に活動範囲を広げる三菱商事都市開発の物流開発部長・神崎圭輔氏に話を聞いた。

営業部門担当役員補佐
物流開発部長/情報開発部長
神崎 圭輔 氏
三菱商事時代からの経験と実績を継承する会社
三菱商事都市開発株式会社は、お客様のニーズを把握した個性豊かな都市型商業施設や物流施設の収益不動産の開発を手掛けるデベロッパーだ。設立は2002年9月。2007年5月に三菱商事都市開発株式会社へ商号変更を行い、今に至っている。
「三菱商事都市開発とは何か、という問いに対しては、三菱商事グループの中で、国内の投資家向け収益不動産の開発を行う会社という答えになります。従来三菱商事に不動産開発部門があり、そこで物流施設やマンション、オフィス、商業などの収益不動産の開発を進めていましたが、国内の収益不動産開発事業については三菱商事都市開発に集約させていくという戦略を取ることになりました。この流れに従い、物流施設の開発を移管したのが2013年の10月です」と、同社の物流施設開発を統括する営業部門担当役員補佐、物流開発部長/情報開発部長の神崎圭輔氏がその設立を語る。
三菱商事都市開発は、会社設立こそ比較的新興のデベロッパーであるが、三菱商事が手掛けてきた開発事業の流れを汲むため、実際には1990年代頃から物流施設を開発・運営してきた実績がある。「当社内には物流施設の開発に関して後発だという思いはなく、むしろ三菱商事時代に他社に先駆けて物流施設の開発を手掛け、その経験が十分に蓄積されていると考えています。また、現在でも三菱商事やグループ会社からの出向者もおり、情報収集や実務に基づいた物流施設運営ノウハウに関しても、他社にはない特徴を有しています」。
三菱商事グループというメリット活かした開発
三菱商事都市開発は、3つのヴィジョンを掲げている。その3つとは、「目利きの力(Evaluate)」「創造する力(Create)」「持続させる力(Sustain)」である。
目利きの力とは、流通、金融、情報の適切な組み合わせの中で価値と商機を見出し、そこに実績と分析・評価能力をベースにお客様それぞれにメリットの大きい提案を実現可能にするものだ。また、創造する力は、グループ企業が相互に関連することにより、立地や目的に最適化した施設の建設や戦略的な管理など、これまでにない新たな価値創造を提案。さらに、持続させる力では、三菱グループの根底に流れるフェアプレイ精神の上に施設管理や運営におけるノウハウを最大限活用し、テナントや地域社会といった様々なステークホルダーに、win-winの関係づくりを促している。
三菱商事グループであることは、やはり同社の大きな特長の1つ。スケールの大きな案件の取り扱いは、巨大な資本を有する企業の醍醐味だと言えるだろう。「デベロッパーとして、開発ソリューションをベースにした事業もだいぶ軌道に乗るようになり、2013年度は物流施設を含め6つの案件を手掛けることができました。不動産開発を行う上で大切なこととして、きちんとお客様のニーズを把握するということが挙げられますが、加えて、求められることに対してグループ全体としてどのようなソリューションを提供できるのかを意識することが重要だと考えています」。
たとえば、大型のアパレル企業が将来に向け大規模な出店計画を持っていたとして、それを実現しようと思えば、単に店舗開発というだけでなく、物流拠点など、付随する多様な問題が浮かび上がってくる。三菱商事グループの三菱商事都市開発であれば、グループ企業と連携することによって、クライアントの多様な課題ひとつひとつにソリューションを提供していくことができるというわけだ。「私たちとしては、それが一般的なサービスなので、あまり競争優位性だと認識していなかったのですが、クライアントのニーズに対して必要となりそうなソリューションをグループ企業から次々と持ってくることができるのは、大きなメリットなのだろうと感じています」。
堅実な目利きで物件を探すことが第一
同社が施設を開発するにあたり、最も重視しているのが「目利き」の部分であるという。「やはり一番大切なのは、立地環境を含めた土地の判断でしょうね。これさえ外さなければ間違いないだろうと思っています。また、実需に基づいた目利きを行うために、グループ企業と協働で不動産を探すといった営業スタイルも取り入れています」。
堅実な物件を見つけていくためには、グループ企業同士の密な連携も重要だ。どこまで細かい情報共有ができるかについては、まだまだ改善の余地があると考えているそうだ。「情報のピースは本当に細かく、どれとどれをつなげれば事業が実現できるのか、なかなか見えにくいところもあります。それができる人材を社内でさらに増やしていきたいと考えています」。
関東圏を押さえてから、全国にも開発を広げたい
現在、三菱商事都市開発は、横浜市の本牧物流施設開発事業(竣工:2015年12月予定)、川崎市の川崎物流施設開発事業(竣工:未定)、千葉市の千葉北物流施設開発事業(竣工:2015年9月)という3つの物流施設開発に着手している。投資家向け収益不動産の開発・売却事業として2014年度に700億円規模の投資を実施すると発表したが、そのうちの物流施設に対する取り組みとなる。
「本牧の物件はもともとグループ会社が所有していたものです。開発に至るまでに、多くのハードルがあったのですが、それらをクリアにしながら、ようやく開発フェーズまで待ち込むことができました。川崎の物件は、日配の物流拠点での需要を見込んでいます。ここからなら東京23区に1時間もあれば行くことができ、神奈川方面にも営業エリアを広げることができます。立地としての価値はかなり高いと見込んでいます。千葉の物件は入札によって購入したもので、場所は千葉北インター近隣。周辺に物流施設も点在し、インターが近いのは大きなメリットであると感じています。この物件は厚生労働省の競争入札で取得したのですが、実際に入札に出向いてみると、来ていたのは地元不動産会社が数社といった状況でした。そうしたことも踏まえ、価格を抑え目に購入できるのではないかと目論んだわけです。このエリアは、今後、他社の開発も進み、新たな物流適地となるのではという読みのなかで、購入しています」。
同社が手掛ける物件は関東エリアが多いが、今後は、地方も視野に入れ事業を進めていく予定だという。「情報が豊富なのはやはり東京近郊であり、まずは関東からという考えはありました。首都圏以外に関しては、福岡、名古屋、大阪といったエリアに注目していますが、今、手掛けている横浜、川崎、千葉の開発を堅実に行った後で、事業を拡大していきたいと考えています」。