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物流の実態と今後

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2006年12月5日

業界の地位向上に不可欠 社会的責任を踏まえた物流拠点の構築を

東京海洋大学
教授 流通情報工学科長 工学博士 苦瀬 博仁

物流拠点が集中する、二つの大きな理由

物流を都市・交通工学の視点で見ると、物資を保管したり流通加工する「物流施設」と、その施設間を行き来する「物資の輸送」から成り立っています。その中で、流通センターや倉庫といった民間の物流施設が重要な役割を担っているのはもちろんです。これまで、こうした施設は全国に分散していましたが、昨今、大型化・集約化の傾向が顕著になっています。その背景には二つの大きな要因が挙げられます。

まず一つは、生産と物流の切り分けが難しくなっていること。かつては、生産から保管、発送と、各業務の区分けが明確でしたが、今日では流通加工の割合が増え、それに合わせ、流通過程における大掛かりな施設や設備が必要になっています。携帯電話を例に説明すると、最初の工場で造られるのは外側のカバーだけ。その後、消費地近くの倉庫でROMを組み込み、マニュアルを入れ箱づめして初めて製品となる。このような例は、他の商品でも数多くあるでしょうし、間違いなく増加しています。そして、物流の中間での加工作業が多くなるほど、投資効率を上げるための拠点統合が進んでいきます。

もう一つは、高速道路などの交通ネットワークの整備が進み、交通事情が改善されたこと。拠点を集約して多少遠距離になっても、自社・顧客の物流ニーズへの対応が可能となってきたため、統合によるスケールメリットを追求するようになったわけです。

では、こうした物流拠点はどこに立地するか。かつて倉庫は、船の物流が中心なら中継地である港の近く、生産地が内陸部ならその工場に近い内陸部、あるいは商品によっては消費地の近くと分かれていましたが、今では港や内陸部を含めて消費地立地が主体となっています。東京都市圏を例に取れば、国道16号線沿いや港に近い臨海部。今後は、高速道路が利用しやすい圏央道IC周辺も、人気の集中するエリアになっていくでしょう。

社会的要請を担う物流アウトソーシング

さて、現在の物流事業のトレンドの一つとして、アウトソーシングの増加が挙げられます。東京都市圏交通計画協議会がまとめた企業アンケートでは、輸送など一部をアウトソーシングしている企業が26%、施設運営や輸送などのすべてをアウトソーシングしている企業が55%に上り、すべてを自社で行っている企業はわずか19%に過ぎません。つまり、在庫管理や発送業務はもちろん、包装・梱包、簡易組立作業などからなる流通加工を一括で請け負う企業がそれだけ増えているわけで、今日では「3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)」といった呼び方をされています。

こうしたアウトソーシングの広がりに伴い、物流施設の所有形態も敷地の賃貸が54%、賃貸施設への入居が19%と全体の70%以上を占め、完全な自社所有は24%となっています。本来、長期的に運営できるなら、施設は所有して設備投資した方が理に適っています。ただ3PL業者からすると、荷主との契約は3年程度が一般的であることから、容易には土地取得に踏み切れないのが実情でしょう。前述のとおり、土地や施設の大規模化・多機能化が一方でありながら、賃貸が大勢を占めなければならないところに、物流ニーズへの対応の難しさがうかがえます。

物流事業者が考慮すべき社会的責任

同協議会が行った、荷主企業に対する流通業務効率化についてのアンケートでは、「コストダウン」をもっとも重視する企業が50%超と、次点の「物流品質による差別化」の25.6%を圧倒的に上回っています。こうした価格面での要求が大きいことはわかりますが、物流事業者が拠点選択の際に、安いからという理由だけで市街化調整区域などに進出してくるのは非常に残念なことです。田や畑の真ん中に物流センターを作り、児童の通学路を高速道路ICへの近道だと大型トラックが疾走するような状況が、全国至る所で見受けられます。

物流業者が荷主に対するサービス向上を考えるのは当然ですが、コストを重視するあまりに都市の居住環境を悪くし、交通事故の危険も気にしないというのは、いささか無責任な話です。例えば、製造業における工場進出時の公害対策、また、小売業でも大型店舗の出店の際には、来客動線や物流動線の交通シミュレーションが当然のように行われています。道路交通法の改正の背景には、目に余る路上駐車の実態があったと思います。物流業界においても、進出地域に関心を持ち共存を考えることが、業界の地位向上に大きく寄与することは言うまでもありません。

では、都市部における物流拠点はどのようにあるべきなのか。先の協議会では二つの方法を提案しています。

一つは物流施設の候補地として人気の高い臨海部や圏央道のIC周辺に、流通団地を造成していく方法。もう一つは都市計画法で定める用途地域の規制を厳しくし、住宅街と工業専用地域の区分けを明確にすることで、倉庫や配送センターを特定エリアに集中させるというものです。

物流事業者の一部からは、民間の事業に公共が口を出すべきではないという声が聞かれます。確かに、本来は市場の原理に任せるべきですが、インフラが整わないことで国際競争力が低下したり、あるいは一般の国民生活に悪影響を及ぼすなら公共の関与も必要でしょう。問題を解決するために、国が集積地を指定してインフラを整える。それで不足する部分を民間が補いながら、健全な企業活動を行うことが理想的な姿だと思います。

物流拠点の今後と、新ビジネスの可能性

物流拠点は、今後、さらに効率化が求められることになるでしょう。そのため、買うにしても借りるにしても、自社のビジネスや顧客ニーズの変化を的確に見極め、最善の解を導き出す知識と経験が重要となります。同時に、土地の取得や最適な建物の設計はもちろん、資金調達や設備選定、配送システムや在庫計画などのプロフェッショナルがいなければ成立しなくなる。こうしたコンサルティングの専門家集団が登場してくることが予想されます。

いずれにしても、物流業はサービス業であり、サービスの差でより多くの対価を得るべきです。ある人が、「一生の伴侶をコストだけで選ぶ人間はいない。配送業者は安い方がいいというのは、パートナーではなくただの下請けだと思っているからだ」とおっしゃっていました。つまり、社会的責任を全うすると同時に、コスト競争だけでなく付加価値を伴った戦略的サービスを創造することが、企業としての競争力を高め永続的な繁栄に繋がっていく。そのことを、業界全体として認識していただきたいと思います。

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上記の記事の内容は オフィスジャパン誌 2006年冬季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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