2015年の大型供給で需要の活性化に期待
名古屋では2014年は観測以来はじめて新規供給が全くない年となり、企業の旺盛なオフィス需要によって既存ビルの空室在庫が順調に消化された。業種を問わず拡張ニーズは強かったものの、特に大きな動きがみられたのは外資系生保会社、精密機器・電子部品メーカー等である。
エリア間の賃料格差が縮小したことにより、郊外や周辺エリアから市内中心部へ移転する動きもみられた。特に、交通利便性の高い「名駅」エリアを選好する企業は多く、同エリアの空室率は2014年末までに2%台に低下した。この結果、市内全体の新規需要面積は18,368坪となり、2014年末時点の空室率は2013年末に比べて3.3ポイントと大幅に低下して5.7%となった。
2015年、2016年にはグレードAとグレードBを合わせ、それぞれ47,752坪、3,397坪の新規供給が予定されている。計画されているビルのほとんどが「名駅」エリアで竣工するため、同エリアへの業務集積が一気に加速すると考えられる。これに伴って既存ビルでは二次空室が発生することが懸念されるが、郊外からの流入により影響は限定的とみられる。「名駅」エリアのビルは退去面積分の吸収は十分に可能であろう。一方、「栄」「伏見・丸の内」エリアでも空室が発生し、競争力のない一部のビルでは空室消化に時間がかかる可能性が高い。
今後は、2027年のリニア新幹線開通も見据えた「名駅」エリアでの新たな開発計画や都市インフラの推進が注目される。
名古屋のグレードAビルは、市内で7棟のみと希少性が高いのみならず、グレード感も高いためテナントからの人気は極めて高い。2014年にも移転や減床によって空室が発生した局面はあったが、館内増床のほか、立地や設備改善を動機とした移転需要によっていずれも短期間で消化されている。業種的にはIT関連企業やコンサルティング会社の動きが目立った。この結果、グレードAの新規需要面積は1,151坪となり、2014年末の空室率は2013年末に比べて1.4ポイント低下して2.6%となった。
2015年には、2009年以来6年ぶりとなる大型ビルが2棟竣工する予定であり、新規供給面積は45,040坪となる見通しである(2016年は予定なし)。「大名古屋ビルヂング」、「JPタワー名古屋」のいずれも「名駅」エリアに立地し、立地や設備水準の改善を志向するテナントのほか、広いワンフロアプレートを求める大口テナントが需要の中心となろう。
一方「名駅」エリア内では、既存のグレードAビルから新築ビルへの移転による二次空室の発生が懸念されている。しかし、既存ビルの中で退去可能性の高いフロアに関する館内テナントや外部顧客からの問い合わせは多く、後継テナントの決定にはそれほど時間はかからないと思われる。
2014年末のグレードAの想定成約賃料水準は、2013年末に比べて1.1%下落して21,500円/坪となった。空室率は3%未満と需給は逼迫しているものの、2015年の大型新規供給を控えて、オーナーは賃料の引き上げに慎重になっている。今後、新築ビルへの移転動向が明らかとなり、移転元の空室も順調に消化されれば、賃料は緩やかな上昇傾向に転じるだろう。CBREでは、名古屋のグレードA賃料につき、向こう2年間で5%程度の上昇を予想している。
各グレードの定義
グレードA
〔立地〕立地東京:主要5区中心、大阪、名古屋:主要区内 〔規模〕貸室総面積:6,500坪以上、延床面積:10,000坪以上、基準階面積:500坪以上(大阪、名古屋は350坪以上)〔築年数〕11年未満
グレードAマイナス
〔立地〕東京23区内 〔規模〕貸室総面積:4,500坪以上、延床面積:7,000坪以上、基準階面積:250坪以上 〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
グレードB
〔立地〕東京23区内、大阪市内、名古屋市内 〔規模〕東京23区内:原則として延床面積2,000〜7,000坪未満、基準階面積200坪以上/大阪市内、名古屋市内:原則として延床面積2,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
オールグレード
〔立地〕CBREが独自に設定した全国13都市のオフィスエリア内 〔規模〕延床面積1,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル