空室率の低下は緩やかとなるも需要は底堅い
過去に大阪の新規需要面積が飛躍的に伸びたのはバブル経済崩壊後の1993~1997年の5年間(新規需要面積20万坪)、いざなみ景気に沸いた2003~2007年の5年間(新規需要面積17.5万坪)が挙げられる。そして、直近の2010~2014年の5年間はこれらの活況期を上回る過去最高の22万坪となった。この原動力は東日本大震災後に高まったテナントのBCP対応を目的とする移転需要から始まり、その後、景況感の改善の浸透による立地改善やビルグレード向上を目的とする移転需要が広がる中で、需要の受け皿となる新規供給が行われたことによる。過去5年間の累計の新規供給面積18.1万坪のうち約80%がグレードAであった。
2014年は、全国展開する大企業から中堅・中小企業にまで需要の裾野が拡大した。業種としては製造業に強い動きがみられた。その結果、主要6エリアの全ての空室率が対前年で低下した。「中之島」「淀屋橋」「新大阪」エリアの空室率は5%を下回り、需給が逼迫している。2013年末の空室率が10%を上回っていた「梅田」「本町」エリアの空室率も大幅に低下し、テナントの移転エリアが拡大した。
2015年の見通しのポイントは2点である。1点目は2014年第4四半期に空室率の低下ペースが鈍化したグレードAの空室率が再び加速するかどうか。2点目は大手生命保険会社の本店・東館建て替え竣工に伴う「淀屋橋」エリアを中心とするテナント再編の動向である。
前者については、需要は堅調であるものの空室消化が一段と進むには賃料負担力の高いテナントの掘り起こしが必要になり、ある程度時間を要するであろう。後者については、既存ビルで空室が約10,000坪発生する予定である。2015~2016年は新規供給が少なく、また、テナントの移転を喚起するような空室も減少しているため移転需要の潜在化が懸念されていた。このような中で、当該空室は統合や集約の受け皿としてテナントの移転の活性化に結び付くであろう。
好悪材料が混在するものの、2015年のマーケットは2014年の回復トレンドが継続すると予想される。しかしながら、過去5年間、毎年、新規需要面積が拡大してきた勢いは一服し、空室率の低下は緩やかなものとなろう。
近年の大阪マーケットはグレードAビル中心に展開したと言っても過言ではない。2014年についても概ね同様のトレンドであった。オフィススペースの統合・集約を志向する製造業や、企業の認知度やイメージを高めたい中堅のサービス業がグレードAビルの需要を牽引した。グレードAビルに入居するテナントは、グレードAビル間で移転することが多い。そのため2014年も、既存のグレードAビルからテナントが退去する事例は少なくなかった。ただし、移転元のビルでは解約予告を出したテナントが実際に退去するまでの間に後継テナントが内定するケースが散見されるなど、需要の強さが鮮明にみられた。一方、新築・築浅のビルの空室の消化ペースは2014年第4四半期に鈍化しており、テナントの賃料負担力が限界に近づきつつあることを示唆しているとも考えられる。
CBREではこうした状況を受けて、2015年のグレードAマーケットは2014年以前よりも回復ペースがスローダウンするとみている。空室率の低下基調は継続するものの小幅にとどまり、想定成約賃料水準も上昇するものの、小幅にとどまるであろう。ただし、新築・築浅ビルは品質が高くテナントに人気のあることに変わりはなく、また、全般的にテナントの賃料負担力は向上していることから、2015年の期中に空室率が大幅に低下し、賃料上昇ペースが現時点での我々の予想を上回る可能性はある。
各グレードの定義
グレードA
〔立地〕立地東京:主要5区中心、大阪、名古屋:主要区内 〔規模〕貸室総面積:6,500坪以上、延床面積:10,000坪以上、基準階面積:500坪以上(大阪、名古屋は350坪以上)〔築年数〕11年未満
グレードAマイナス
〔立地〕東京23区内 〔規模〕貸室総面積:4,500坪以上、延床面積:7,000坪以上、基準階面積:250坪以上 〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
グレードB
〔立地〕東京23区内、大阪市内、名古屋市内 〔規模〕東京23区内:原則として延床面積2,000〜7,000坪未満、基準階面積200坪以上/大阪市内、名古屋市内:原則として延床面積2,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
オールグレード
〔立地〕CBREが独自に設定した全国13都市のオフィスエリア内 〔規模〕延床面積1,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル