郊外から中心部への移転が需要を牽引
2000年代前半の広島市のオフィスマーケットは、空室率が高どまりし、賃料はビルの競争力に関わらず低廉な水準に収斂する停滞感の強いマーケットであった。しかし、空室率は2010年の14.2%をピークに加速度的に低下し、2014年末には5.6%と、一般に需給逼迫とされるライン目前となった。これは大阪・名古屋を含む地方中枢都市を下回る水準である。この原動力は、2009年以後グレードの高いビルの新規供給が行われたことで、耐震性や機能性を重視する物件への移転需要が喚起されたことが挙げられる。このトレンドは市内中心部での域内移転にとどまらず、郊外から市内中心部への移転をも促すこととなった。こうした動きは、2012年までの供給が一巡した後の2013年から2014年にかけても続き、新規需要面積はプラス基調を維持した。
広島市は他都市に比して郊外から市内中心部への移転のトレンドが強い。中四国地方最大の工業県である広島では、生産ラインに関わる関連企業や取引企業が県の東から西に分散しているケースが多い。このため、拠店の統合や集約の移転需要が他都市と比べて相対的に多いと考えられる。
2015年は2013年からのトレンドが継続し、空室率は緩やかに低下するであろう。新規供給は2018年まで予定がない。魅力的な移転の受け皿不足が続き、テナントが移転候補先を広げる動きもある。今後も、小規模な新設や拡張移転のほか、郊外から市内中心部への移転や館内増床が続くことで、更なる空室の消化が進むと考えられる。
賃料は2011年を底に3年連続して上昇した。2015年についても緩やかな上昇が続くであろう。需給バランスの安定に伴い、ビル間で賃料に格差が出始めている。マーケットの健全化が進んでおり、今後、地方中枢都市に相応しいマーケットとして期待できそうだ。
各グレードの定義
グレードA
〔立地〕立地東京:主要5区中心、大阪、名古屋:主要区内 〔規模〕貸室総面積:6,500坪以上、延床面積:10,000坪以上、基準階面積:500坪以上(大阪、名古屋は350坪以上)〔築年数〕11年未満
グレードAマイナス
〔立地〕東京23区内 〔規模〕貸室総面積:4,500坪以上、延床面積:7,000坪以上、基準階面積:250坪以上 〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
グレードB
〔立地〕東京23区内、大阪市内、名古屋市内 〔規模〕東京23区内:原則として延床面積2,000〜7,000坪未満、基準階面積200坪以上/大阪市内、名古屋市内:原則として延床面積2,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
オールグレード
〔立地〕CBREが独自に設定した全国13都市のオフィスエリア内 〔規模〕延床面積1,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル