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賃貸等不動産の時価開示

新会計基準の適用に向けた対応策とCRE戦略への発展

来年、2010年3月31日以降終了する事業年度の年度末から、「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」※が、適用されます。原則として、投資不動産、遊休不動産、その他賃貸不動産の時価等を財務諸表の注記事項として開示しなければならなくなります。

来年3月決算に向け、具体的方針決定に苦慮している企業も多いと聞きます。ステークホルダーへのアカウンタビリティを確保しながらも、新たなコストはできるだけ抑えたい。固定資産の減損会計対応として正味売却価額や使用価値の把握に関連して求めている不動産価格を利用したい。

この際、不動産をとりまく会計基準の変化に包括的に対応し、経営戦略の一環として見直したい。このような声も聞かれます。そこで、改めてその内容・対応策をここで確認しておきたいと思います。

※企業会計基準第20号。以下「基準」といい、該当企業会計基準適用指針第23号を、以下「適用指針」という。

1. 賃貸等不動産の定義と範囲

「賃貸等不動産」とは、「棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産をいう」 と定義され、以下が含まれます。

  • 貸借対照表において投資不動産として区分される不動産
  • 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
  • 上記以外で賃貸されている不動産

また、以下のようなケースも、賃貸等不動産に含まれます。

  • 賃貸等不動産として使用される予定で開発中・再開発中の不動産
  • 賃貸を目的として保有されているものの一時的に借手が存在していない不動産
  • ファイナンス・リース取引に該当する不動産の借手において賃貸等不動産の定義を満たす場合
  • 不動産を信託財産としている信託(不動産信託)の受益者について賃貸等不動産の定義を満たす場合

一方、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合(鑑定評価上のいわゆる自用の不動産)は賃貸等不動産には含まれません。社宅などの従業員のための福利厚生施設や研修施設もこれにあたり、賃貸等不動産には含まれません。

自用の部分と賃貸等不動産に該当する部分とから構成される不動産の場合には、該当部分を賃貸等不動産に含めることになります。なお、その割合が低い場合には賃貸等不動産に含めないことができます。

2. 注記を省略できる場合 ― 重要性の判断

賃貸等不動産に該当する場合には、時価等を注記する必要が出てくるわけですが、社宅などの従業員のための福利厚生施設や賃貸等不動産の総額に重要性が乏しいときは注記を省略できます。この判断は以下の比較をして行います。

時価を基礎とした金額と総資産の金額の比較

「時価を基礎とした金額」の把握にあたっては、後述の開示対象となる賃貸等不動産のうち重要性が乏しいものの扱いと同様に、「一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標に基づく価額等」の簡便的な方法を用いることができます。

しかし、上表のAがBの何%以上であれば重要であるか、というようなガイドラインはありません。各社で重要性の判定ルールを決め、会計監査人と相談するということになるでしょう。

このように賃貸等不動産があるかどうかを判断するには、簡便的な方法(詳細後述)であっても時価を算定しなければなりません。総資産の金額の把握にあたって賃貸等不動産以外の資産については、特に時価を求めることを要求されているわけではありませんが、例えば賃貸等不動産にはあたらない不動産の簿価が大変低い等の場合、これについても時価を求めようというような場合も想定されます。これら不動産の価格は自社で算定することもできますし、不動産鑑定士等に依頼することもできます。

「財務諸表のための価格調査に関するガイドライン(案)」によれば、この簡便的な方法は「みなし時価算定」といい、鑑定評価の手法を選択的に適用し、または一定の評価額や市場価格を適正に反映していると考えられる指標等に基づいて算定することができます。また、重要性の判断に限っては成果報告書に通常明記しなければならない調査価格に至る過程の記載を省略できるとされているため、比較的簡易な依頼が可能だと推定されます。

なお、「適用指針」では、賃貸等不動産の総額に重要性が明らかに乏しいと判断される場合には、重要性の判断をせずに注記を省略できるとありますが、これについても「明らかに乏しい」とはどの程度のことをいうのかのガイドラインはありませんので、各社でのルール作りが必要です。

3. 注記事項

では、賃貸等不動産に該当する不動産を保有している場合には、どのような注記をすることになるのでしょうか。「基準」に以下のとおり定められています。

  • 賃貸等不動産の概要
  • 賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動
  • 賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法
  • 賃貸等不動産に関する損益

「適用指針」には、次のような開示例が参考として記載されています。

〔開示例1〕 賃貸等不動産を一括して注記する場合

当社及び一部の子会社では、東京都その他の地域において、賃貸用のオフィスビル(土地を含む。)を有しております。平成XX年3月期における当該賃貸等不動産に関する賃貸損益はXXX百万円(賃貸収益は営業外収益に、主な賃貸費用は営業外費用に計上)、減損損失はXXX百万円(特別損失に計上)であります。

また、当該賃貸等不動産の連結貸借対照表計上額、当期増減額及び時価は、次のとおりであります。

連結貸借対照表計上額 当期末の時価
前期末残高 当期増減額 当期末残高
XXX XXX XXX XXX

(単位:百万円)

(注1) 連結貸借対照表計上額は、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額であります。

(注2) 当期増減額のうち、主な増加額は不動産取得(XXX百万円)であり、主な減少額は減損損失(XXX百万円)であります。

(注3) 当期末の時価は、主として「不動産鑑定評価基準」に基づいて自社で算定した金額(指標等を用いて調整を行ったものを含む。)であります。

4. 時価とその算定方法

注記事項のうち、具体的な対応に特に苦慮するのは、前頁の3.賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法でしょう。

時価の定義

  • 観察可能な市場価格に基づく価額
  • 市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額

不動産は一般的には取引所などで取引される流動性の高い資産ではないために、1の観察可能な市場価格に基づく価額による表示は考えにくいでしょう。

2の合理的に算定された価額は、「適用指針」には「不動産鑑定評価基準による方法又は類似の方法に基づいて算定する。」とされており、算定方法は以下のいずれかになります。

  • 自社における合理的な見積もり
  • 不動産鑑定士等による鑑定評価等

いずれの方法によるべきかは開示する企業の開示方針であり、この決定にあたっては会計監査人の意見が影響することは間違いありません。つまり、算定根拠の客観性や合理性を説明するために外部の不動産鑑定士等による鑑定評価等を取得すべきとするのか、合理的に算定されていれば自社内での算定でもよいとするのかです。

ここで、不動産鑑定士に依頼する場合には、後述のガイドライン案が発効した際にはこれによる制約がでてきます。つまり、この時価算定について、不動産鑑定士等は原則として「原則的時価算定」を行わなければならないと定められています。「原則的時価算定」とは、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価、いわゆるフル鑑定となります。

(1)自社で時価算定する場合

まずは時価を自社で算定する場合を見てみます。「基準」及び「適用指針」によれば、以下のとおりとなります。

原則的な時価算定

  • 「不動産鑑定評価基準」(国土交通省)による方法
  • 類似の方法

「不動産鑑定評価基準による方法」で求める場合には、求める価格は通常正常価格で、不動産鑑定評価基準には「コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチの3手法の適用により求められた価格を併用または斟酌することとしている」という記述が「適用指針」にありますが、このような算定は、結局のところ不動産鑑定評価基準を不動産鑑定士等と同等のレベルで理解しているのでなければ難しく、不動産鑑定士等が社内にいる場合でもなければ、会計監査人の観点からも現実的にはとりにくい方法であると考えられます。

「収益物件の場合には、(中略)DCF法を重視した算定方法も用いることができると考えられる」と「適用指針」にあるのは、「類似の方法」の一例だと考えられます。3手法全てを適用しなくてもよい分、若干手間はなくなりますが、この算定方法の自社での理解や算定根拠の客観性・合理性の説明の難しさは、上記とさほど変わらないことになります。ただし、実際の賃貸収入や経費を採用することが可能であれば、割引率さえ客観的に把握できれば自社算定も現実的になります。

原則的な時価算定以外の算定方法が認められる場合

  • 契約により取り決められた一定の売却予定価額がある場合
    → 売却予定価額を時価とみなす
  • 第三者からの取得時の取得価額が適切で、その時点から長期間経過しておらず、「時点修正」等のための一定の評価額や指標等に重要な変動が生じていない場合
    → 当該評価額や指標を用いて合理的に調整した金額をもって時価とみなす
  • 原則的な時価算定を行い、その時点から長期間経過しておらず、「時点修正」等のための一定の評価額や指標等に重要な変動が生じていない場合
    → 2. に同じ
  • 2や3で、一定の評価額や指標等の変動が軽微な場合
    → 調整せずに時価とみなす
  • 個別不動産として重要性が乏しいもの
    → 一定の評価額や指標等に基づく価額等を時価とみなす

まず、5における算定方法を確認します。適用指針には以下のように記載されています。

簡便的な方法による時価算定及び時点修正

一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標に基づく価額:以下が含まれる

  • 容易に入手できる評価額の例
    売買仲介業者意見による実勢価格、査定価格
  • 容易に入手できる土地指標の例
    公示価格、都道府県基準地価格、路線価による相続税評価額、固定資 産税評価額
  • 建物等
    適正な帳簿価額をもって時価とみなすことができる

これらは合理的に調整することを要します。つまり、土地部分につき公示地価を使うのであれば、公示地と対象地の格差調整などが必要となります。

重要性が乏しいと判断できれば、簡便的な方法による時価把握が許容され(5)、また、重要性が乏しいとはいいがたい不動産に関しても、一定の場合(2・3・4)「時点修正」という方法が検討できれば、各企業にとっては現実的でもっとも簡単な算定方法を採用できる可能性があります。

保有不動産については、固定資産の減損会計対応のために過去に時価把握をしている企業もあるでしょう。すなわち、減損会計のために回収可能額として正味売却価額や使用価値が算定されている場合、正味売却価額は時価から処分費用見込み額を控除して算定され、使用価値は使用後の処分によって生じる将来キャッシュ・フローとして将来時点の正味売却価額を算定する必要から、いずれにしても時価評価が行われているわけです。自社で合理的に時価算定をしたにしても、不動産鑑定評価を取得したにしても、時点修正のための一定の評価額や指標に重要な変動が生じていなければ、最初から算定するという作業をしなくてもよいことになります。

ただし、「時点修正」の方法としては、賃貸等不動産が多くの場合収益不動産であり、収益価格としての変動率で修正することが望ましいケースが多いと予想されます。次々頁にご紹介する「賃貸等不動産時価インデックス」を利用した時点修正もひとつの方法として考えられます。

ただこの場合にも、「重要性が乏しい不動産」は何をもって判定するのか、「重要な変動が生じていない」や「変動が軽微」とは何%程度のことなのか、具体的判断に迷う部分は少なくありません。「長期間経過しておらず」の長期間とは3年程度が目安となるともいわれていますが、いずれにしても最終的にはこれらは自ら決めなければなりません。

注記を免れる場合

時価を把握することが極めて困難な場合

  • 現在も将来も使用が見込まれておらず売却も容易にできない山林
  • 着工して間もない大規模開発中の不動産など

(2)不動産鑑定士等による鑑定評価等により時価算定する場合

時価算定を不動産鑑定士等に依頼する場合、不動産鑑定士が遵守す べき「財務諸表のための価格調査に関するガイドライン(案)」が国土交通省より提示され、パブリックコメントの募集が2009年8月7日に締め切られており、間もなく発効する予定です。

その際には、不動産鑑定士等は多くの場合「原則的時価算定」として鑑定評価を行わなければならないことになります。「みなし時価算定」として、鑑定評価手法の選択的な適用や、一定の指標に基づく評価等、いわゆる簡易評価が許容される場合は限られています。また、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価が行われたことがある場合には、再評価を行うことも可能とされています。

ここで現実的な問題は、不動産鑑定士等の意見そのものを注記の算定根拠として明示しようとする場合、正式な不動産鑑定評価を依頼しなければならないケースが多くなると推定されることです。むろん、アカウンタビリティを高めることに重きを置くのであれば大変よい方法ですが、比較的コストのかかる方法となります。また、不動産鑑定士に課せられる規制がより厳格になっている中、発注するために提示しなければならない資料の要求も多くなる傾向にあり、その準備にかかる時間や手間も無視できない、という声も聞かれます。

5. CRE戦略への発展

時価の把握しにくい不動産に関しての会計基準の改正は、開示企業にとっても会計監査人にとっても手間のかかる問題となりますが、これを機会に保有不動産の把握を行い、その活用方法等を経営戦略として考え直す好機ととらえることもできます。賃貸不動産の効率運営を追求する、遊休不動産の有効活用や売却を考えるなど、時価の把握が不動産に関する経営課題に建設的に取り組むよい機会となるでしょう。

当社ではこれに関連してさまざまなサポートが可能です。文中、具体的・数値的な指針が示されておらず、判断に迷うようなポイントも、具体的なアドバイスがあれば判断もしやすくなることでしょう。四半期財務諸表における注記事項も含め、継続的な時価把握のための計画的な準備をお勧めします。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2009年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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