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都市再生と通勤混雑

通勤混雑はどうしたら軽減できるのか

AMB上智大学
経済学部教授 経済学博士 山崎 福寿

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はじめに

土地の高度利用によって、様々な利益が多くの人々に及ぶ。これに対応するように、政府は規制緩和の一環として、容積率規制を一層緩和しようとしている。これは、都市における土地の高度利用を促進するために、低層のオフィスや住宅を、より高層なそれらに建て替えられるようにすることを目的としている。現状の規制値はあまりにも低いために、都市の高度利用が阻害されており、土地の高密度利用が進まない一因になっている。

これに対して、容積率規制には一定の目的があるともいわれている。都市計画の専門家は、容積率規制を正当化するために、自由な市場取引にまかせておくと、無秩序な土地利用が進行し周辺の混雑をひきおこし、環境の悪化が生じると警告する。

すでに、大都市、特に東京は過密であるといわれる。道路は慢性的に渋滞し、鉄道の混雑も極端な水準に達している。住環境も悪く、公園や広場も少ない。集中に伴う外部不経済が様々な場面で発生している。容積率規制を緩和すると、都市環境は一層悪化するというのである。

しかし、都市の混雑を緩和したり、よい環境を維持するためには、価格メカニズムを応用して、課徴金制度や混雑料金制度(朝夕のラッシュ時には高額の料金を課す)によって、外部性を制御し、混雑を緩和させることが有効である。

"割り当て問題"で考えるならば、最も効果的な政策手段をその問題に割り当てるべきである。したがって、環境対策や混雑対策には、容積率規制よりも課徴金制や混雑料金制を導入することが望ましい。これが経済学の教科書にある割り当て問題の応用例である。

本稿では、都市における土地の高度利用を実現するうえで障害となる道路や鉄道の混雑を、どのようにコントロールすべきかについて考えてみよう。

都市構造と混雑

東京都とニューヨークの人口密度

最初に、東京と同じ大都市であるニューヨークの人口密度を比較してみよう。図からわかるように、都心4区は人口密度が低く、周辺の方が高い。ニューヨークと比べればわかるように、マンハッタンには、1ha当たり242人の人間が住んでいる。

これに対して、東京の中心8区では1ha当たり116人とその人口密度は約半分に過ぎない。この点はいかにも不自然である。これは都心の開発が抑制されたために、郊外に人口が押し出される形で流出したことを示している。その結果、東京への通勤時間はニューヨークに比較して長くなると考えられる。

いま述べた点を別の角度から明らかにするため、通勤時間のデータをみてみる。1970年代以降の平均通勤時間を調べると、一貫して通勤時間が長くなっていることがわかる。最近では、通勤に往復3時間以上かかる人たちの割合が20%を超えるまでになっている(1)。

さきほど述べたように、都市の高度利用を促進すべきとする議論に対しては、都市環境の悪化を理由に反対する人々がいる。こうした議論の典型は、大都市に対する成長管理政策である。大都市、特に東京は過密であるといわれる。人口や産業の集中に伴う外部不経済が様々な場面で発生している。

その対策として、東京への新規の事業所立地を規制したり、東京の容積率を引き下げること(いわゆるダウンゾーニング)によって、人口や諸機能の東京への新たな流入を阻止し、東京の住環境を守るべきであるとの主張がある。これが成長管理政策と呼ばれるものだ。

しかし、この種の議論は、経済成長や都市集中によって発生する外部不経済を低減するには、経済成長や都市への集中そのものを抑制することでしか達成することができないことを前提としている。それらは、都市の成長や集中がもたらす様々な利益を、まったく考慮していない。

重要なことは、成長や集中の利益をできるだけ増大させるとともに、成長や集中に伴う外部不経済を内部化する手段を採用することである。そのために、外部不経済の発生者に外部費用を負担させることが、効率性及び公平性の観点から必要である。

そこで、社会的な混雑がもたらす大きな歪みを除去するため、特に道路、鉄道を中心としたインフラの利用に対する混雑料金制を導入する必要がある。現在、首都高速道路、阪神高速道路、高速自動車道などで採用されている、季節、時間帯、混雑の如何を問わず料金を均一にする制度は、道路利用を平準化するインセンティブを運転者に対して与えず、かえって混雑を促進している。

鉄道や高速道路におけるピークロード・プライシング(時間差料金制)を導入するとともに、大都市を中心として一般道においても、電子装置を利用した課徴金システムを確立し、混雑料金制を導入すべきである。

鉄道と自動車の混雑費用はどの程度か?

それでは、実際に支払われなければならない混雑料金はいったいいくらになるのだろうか。著者たちは、鉄道混雑が利用者一人一人にどのような不効用を及ぼしているかについて推定した。この推定作業を簡単に紹介する。

人々が自由に住所を選択する時、通勤時間によって失われる自分たちの余暇時間は、家賃や地価に反映される。より郊外から都心に通う人が支払っている家賃や地価は、都心に近いところから通勤する人が支払っている家賃や地価よりも低い。このように、郊外のほうが地価や家賃が低いのは、通勤時間や都心までの輸送費用がかかり、不便であるからである。

同じように、毎日の通勤から受ける疲労感や不快感は、混雑率や通勤時間に比例するはずである。したがって、このような心理的費用や不効用も家賃や地価に反映する。この関係に注目して、回帰分析を用いて、郊外に行くにしたがって生じる地価の低下分の中から、通勤者が負担している肉体的精神的苦痛にともなう費用を抽出することによって、鉄道サービスの混雑現象による社会的費用を実証的に推定することができる。

ある駅から徒歩圏にある住宅地の地価とより郊外の駅にある住宅地の地価の差のどの部分が、混雑という要因によって生じているかを計測する。つまり、もう一人通勤者が増えることによって混雑率が上昇する結果、どの程度地価が低下するかを推定する。こうして得られた金額を用いて、もう一人同じ車両に通勤者が増えた時に、どの程度不効用が発生するかを利用者全員について合計する。

実際に首都圏の鉄道を対象として社会的費用を計測し、その混雑解消のための最適運賃を計測した。 同試算によれば、JR中央線のピーク時の最適混雑料金は現状の料金の平均3倍程度であることが判明した(2)。この金額は一見すると法外な額に思われる。しかし、この混雑時間帯以外の料金は、現状よりもはるかに低くすることができる。

同じく、首都高速道路を対象に道路交通の混雑費用を試算した。自動車の混雑費用の算出は、需要関数と速度関数を直接推計して、混雑費用を計算する。高速道路の通過自動車台数は、高速道路の混雑率に依存すると考えて、速度がどのように決定するかについて推定する。次に首都高の需要関数を推定する。

自動車が1台増えることによって、速度がどの程度低下し、その結果、高速道路の利用者がどの程度変化するかについて推定する。速度が遅くなれば、サービスの質が低下することにより、高速道路の利用者も減るはずである。その時、全利用者が被る速度の低下分を金額で評価していくらになるかを求めれば、社会的費用が求められる。

その試算によれば、首都高における混雑料金は約300円程度(平均走行距離17キロメートル当たり)となっている。この推定結果を用いて、高速道路の通行車両に混雑料金を課金することによって、通行量がどの程度変化し、その結果、環境負荷がどのように変化するかを検討することができる。

混雑料金や課徴金制度は実施可能か?

鉄道では、JR東日本で採用されている「Suica」を用いれば、混雑料金制は簡単に導入することができる。高速道路についても、料金の徴収は技術的には簡単なものとなっている。渋滞を解消するために、自動料金収受システム(ETC)を用いると、地域別や時間別の料金徴収はきわめて簡単である。

もちろん、これらの課徴金システムや混雑料金の導入には抵抗があるだろう。多くの利用者たちは、課徴金・混雑料金によって不利益を受ける。今まで安い料金で、鉄道や道路を利用してきた消費者にとって、混雑が緩和しても料金の上昇が著しいために、大きな負担を強いられる。この意味で、課徴金・混雑料金制度は、利用者が強く反対する評判のよくない制度である。

しかし、この制度によって大きな財源が鉄道会社や道路公団に入る。さきの推定によれば、小田急小田原線では年間1324億円の収入が見込める。この額は、特定都市鉄道整備事業計画として認められている東北沢―和泉多摩川間複々線化の事業費2563億円の、ほぼ半額にあたる。

これを財源に鉄道や道路の容量を増加させることで、混雑をさらに緩和させる結果、混雑料金の低下を図ることが長期的には可能となる。鉄道を複々線化させたり、道路を拡幅することによって、以前よりも多くの利用者や自動車が通行できるようになる。

おわりに

一極集中の弊害を排除するためには、首都機能移転や地方分散政策が必要であるという議論は、集中による外部不経済の低減は、集中そのものを抑制することでしか達成できないという認識を前提とし、集中がもたらす様々な利益を考慮していない。集中は経済活動だけでなく、レジャー、文化等の面でも、多大な利益を人々にもたらす。

土地を集約的に利用し、集中を促すことによって、安全で、環境のよい都市を実現するための公共スペース(道路や緑地帯)を生み出すことができる。その際に重要なことは、集中の利益をできるだけ増大させるとともに、集中を抑制する手段ではなく、混雑料金制等を用いて集中に伴う外部不経済を内部化する手段を採用することである。

こうすれば、都市の高度利用が実現し、コンパクトな都市を形成することができる。これは都市の魅力を高めるだけでなく、通勤時間を短縮化し、混雑による苦痛を軽減することに貢献する。

(1)国土省「土地白書平成7年版」参照
(2)詳細は、山崎・浅田〔2003〕を参照

〈参考文献〉
山崎福寿〔1999〕
「土地と住宅市場の経済分析」東京大学出版会
山崎福寿〔2001〕
「経済学で読み解く土地・住宅問題」東洋経済新報社
山崎福寿・浅田義久〔2003〕
「混雑料金の経済分析」「都市再生の経済分析」
第3章p85-111東洋経済新報社

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上記内容は オフィスジャパン誌 2006年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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