先日4月29日の日本経済新聞一面トップに、「都心ビル賃料1割値上げ」との見出しが躍った。記事の内容は、大手不動産各社が東京都心部に保有する主要ビルにおいて、需給の引き締まりを背景に、契約更新時に10~15%値上げの方針でテナント企業と交渉に入ったというものだ。大手が軒並み二ケタの賃料引き上げに動くのは、バブル崩壊後初めてであり、今後、大阪や名古屋など他の大都市圏に波及する可能性もあるとしている。
同新聞記事を読むまでもなく、昨今、賃料改定が大きく様変わりしている状況は、オフィス仲介の現場において、そこかしこで耳にするところだ。1割アップなどまだ良心的なケースで、今回この特集を進めるに当たり数社にヒアリングしただけでも、「オーナーから、当然のように50%の増額改定を提示されたが、そんな条件はとても受け入れられない」との声や、逆に「逼迫したオフィス市場に心配しながら賃料改定を迎えたが、オーナーから据置の打診でほっとした」など、これまでの賃料改定からは、とても想像できない状況となっている。
上の図は、小誌が実施した賃料改定に関する読者アンケートについて、2005年冬号と07年春号の結果を比較したもの。この結果にも、急激に変化した賃料改定動向の一端が如実に示されている。まず、一目で明らかなのが、変わらないテナントの意識と、大きく変化したオーナーとの差異。05年冬と07年春で、テナント側は、約2割が減額要求し8割弱が据置、先方に従う弱気なテナントが若干見られるといった状況がまったく変わっていないのに対し、オーナーサイドは、増額要求が倍増、減額譲歩や先方に従うといった弱気なスタンスは激減し、強気マインドに大きくシフトしている。特に、05年冬にはかなりの数見られた「先方の要求に従う」とする回答が、今回1件も見られなかったのは、まさしく市況を象徴しているといえるだろう。また、東京と大阪の結果も別に示しているが、東京のオーナーの強気ぶりと(逆にテナントは、やや弱気に振れている)、大阪における、テナント・オーナー双方の賃料改定に強気に臨む態度をうかがい知ることができる。
数百程度のアンケート結果からも、市況の急変ぶりと、オーナーとテナントとの大きな乖離を読み取ることができる現在の賃料改定。では、実際に今、市場の現場では何が起こっており、今後どのような方向に向かっていくのだろうか。今回の特別企画では、この賃料改定の動向に関し、識者による動向分析、全国マーケットデータ、そして、オーナー・テナントという市場当事者の昨今の賃料改定に対する見解と対応などを紹介したいと思う。
アンケート質問内容
現在入居中、もしくは所有のオフィスビルについて、次回(直近)の賃貸借契約更新時において、どのように賃料改定交渉をしようとお考えですか?(あくまで予定、希望で結構です。)
■ 貴社は
- テナントである
- オーナーである
■ 賃料は
- 据え置く
- 減額(○○%程度)要求する
- 増額(○○%程度)要求する
- 先方の要求に従う
- その他
アンケート有効回答数
2007年春実施 | 2005年冬実施 | |
---|---|---|
テナント | 71 | 146 |
ビルオーナー | 86 | 150 |