これまで、新築ビルに入居したテナント群やビル貸床面積の拡大傾向を見てきたが、同項では、東京の業務集積がどのように変化したかを明らかにしてみる。右地図内の赤い五角形は、建設業、製造業、情報通信業、卸・小売業、金融・保険業の5業種で、2001年の社数を100%とし2009年の増減割合を図示したもの。全エリア正五角形で示した業務集積がどのような形に変わったのかで、その傾向を読み解くことができる。
全業種から5業種のみを選択しそれぞれの増減を算出したものであるため、五角形の大きさ自体にさほど意味はないが、概ね企業集積が高まっているエリアは五角形も大きくなる。エリア内の総企業数は、数値を記したので参考にしてもらいたい。まず、業務集積傾向が大きく変化した五角形のいびつなエリアを挙げていくと、品川、六本木、大崎、飯田橋・九段、霞が関・内幸町、江東・墨田、新橋・汐留、臨海といったところであろうか。ここで、前項の貸床面積増加割合を振り返ってみると、そのほとんどが、貸床が1.5~2.5倍に拡大したエリアであることが見て取れる。つまり、オフィス街が拡大する過程で、集積する企業の業種・業態が変化しているわけである。
例外として挙げられるのが霞が関・内幸町で、増加率122%とさほど貸床が増えていないにもかかわらず、業務集積の変化が激しい。同エリアは総企業数が減少する中でこのような結果を示している。全く逆に、貸床面積の増加が1.5倍前後と顕著であるにもかかわらず、五角形が均一を保ち、業務集積傾向にさほど変化が見られないエリアとして挙げられるのが、丸の内・大手町、番町・麹町、赤坂の3エリアだ。ただし、丸の内・大手町では建設業、番町・麹町では製造業、赤坂では卸・小売業の水準がいずれも大きく低下し、そこだけがいびつな形となっている。赤坂以外の2エリアは全企業数が増加する中での減少であり、業務集積傾向のキーポイントと言うことができよう。