経済活動の段階的な再開に向けて
CBREグローバルリサーチでは、経済活動の正常化を進めつつある中国での都市封鎖中の働き方や正常化に向けての留意点をまとめたレポート「CHINA’S RESPONSE TO COVID-19」を発表した。これらの対策や提言の中には、市場により適切でないものや実現不可能なものも含まれるが、現在の日本市場にとって貴重な指針になると考える。本稿の最後に、その一部を抜粋、和訳してお届けしたい。
中国における経済活動の再開
中国のほとんどの企業は3月下旬までに業務を再開した。工場の90%以上が生産を再開し、オフィスワーカーの約60%が職場に復帰。業務の再開は、COVID-19の第二波を防ぐための対策をとりながら、段階的に行われている。
医薬品、エネルギー、物流などの主要産業に従事する企業は、2月初旬に生産を再開した。ホワイトカラー労働者は2月9日以降、オフィスに戻ることが許可されていたものの、依然として全国的な学校閉鎖は続いていたため、事業継続計画(BCP)の一環としても、ほとんどの企業が2月いっぱいは在宅勤務を継続した。
企業は、従業員の健康を守り、事業継続性を確保するために、緊急委員会を設置することが求められている。また、スマートフォンに表示される3色の健康コードが広く採用された(右図参照)。従業員が工場やオフィスに戻るには、当コードが緑色になっていなければならない。
メーカーにとってのガイドライン
- すべての施設が完全に消毒されるためのチェックリストの作成・利用。
- 詳細な作業再開計画の政府への提出。
- マスク、消毒剤、手袋、体温計などの従業員への提供。
- 他の都市から戻ってきた従業員は、フライト/列車の番号と健康状態を報告し、職場に戻る前に7~14日間の検疫を受ける。
- スタッフを職場に復帰させるために必要な交通費は、助成される場合もある。
- 従業員の通勤用にシャトルバスを手配することも可能。あるいは公共交通機関の代わりに、車、自転車、徒歩での通勤を奨励することも可能。
- 施設に入るすべての人に対して体温チェックを行わなければならない。
- 執務エリアでは常にマスクの着用は必須。
- 執務エリアや食堂などでは、スタッフの密度を一定水準以下に維持しなければならない。
プロパティマネジメント施策の強化
従業員と訪問者を守り、COVID-19の感染を最小限に抑えるための事前対策
- 経営陣が率いる緊急委員会を設置する。
- 業務再開のための承認を地区政府に申請する。
- 日々の通勤者のリストを作成し、オフィス内の密度を抑える。
- リモートワークとオフィスワークを併用してフレキシブルなワークスタイルを導入するとともに、 社員をいくつかのグループに分け、オフィス勤務はグループ毎のローテーションで行う。
- 体温チェックは毎日行う。
- 受付エリアにはマスク、使い捨て手袋、手指消毒剤を常備する。
- 職場でのマスク着用を従業員に義務付ける。
- 従業員自身が自らの衛生状態を意識するよう、各種標識をオフィス内に設置する。
- ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)は一時保留とし、スペース利用の効率性とスタッフの健康/安全とのバランスを図る。
- 不要不急の出張やイベントを禁止・延期する。
- 状況を注視し、その変化に応じて社内ポリシーを調整する。
- 従業員が症状を発症した場合の対処方法を明確にし、全従業員に共有する。
プロパティマネージャーは、建物内の感染リスクを軽減し、感染拡大のペースを緩和する上で重要な役割を担っています。長期的には、衛生面とウェルネスへの配慮が建物の設計においてより重要な要素となるでしょう。
EVAN CHOO Executive Director, Head of Property management CBRE,China