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スプラッシュトップ株式会社 | 成長ベンチャーに訊く

ケーススタディ

2020年11月16日

スプラッシュトップの日本支社では、コロナショック以前から積極的にリモートワークを行ってきた。「アメリカ本社から見れば、日本支社で働くこと自体がリモート」と語る代表取締役の水野良昭氏に、東京・丸の内と吉祥寺にオフィスを構える2拠点体制の狙いや、これから求められるオフィス像についてを訊く。
代表取締役 水野 良昭 氏

自らが実験台となり
リモートワークを推進し、 少数精鋭で
成長を遂げる外資系ベンチャー。
丸の内と吉祥寺の2拠点体制で、
快適な働く空間を模索し続ける。

スプラッシュトップ株式会社
代表取締役 水野 良昭

スプラッシュトップ株式会社

ゲーム用に開発された技術が強みのリモートデスクトップサービス

スプラッシュトップ株式会社

弊社は2006年にアメリカのシリコンバレーで設立された会社で、外出先のiPhoneやiPad、あるいは自宅のパソコンから会社のパソコンを操作してテレワークを可能にするためのツール、Splashtop(スプラッシュトップ)を世界中で展開しています。このツールは元々、ゲーム用に開発されたもので、パソコンゲームの続きをiPadからリビングやベッドの上でできるようにしたい、というのが最初でした。そのため、画面上のレスポンスが圧倒的に速いというのが第一の特長。個人ユーザーからのフィードバックをもとに技術改良を重ね、ビジネス向けに展開したのが今のサービスです。

2012年に日本支社を立ち上げ法人向けサービスを始めたのですが、それ以前から、日本ではアップルストアを通じたパーソナル版の売上が好調でした。日本はインターネットの光回線などインフラが整っているため、アメリカ本社も注目する市場だったのです。パーソナル版はダウンロードごとに課金する売り切り型のビジネスでしたが、法人向けサービスを継続的に展開するため、サブスクリプション型を採用。当時にしてはかなり先進的なビジネスモデルだったと思います。

アメリカから責任者が一人派遣され、そこに法人設立に必要な日本人メンバーとして私が加わり、二人でスタートしました。当初、アメリカ本社は日本を海外部門の1セクションとして捉えていたようですが、法人向けのビジネスでは信頼獲得のために法人格が必要だと考え、法人を設立した経緯があります。

大手キャリアによる代理店販売を見据え、商談のためのオフィスを丸の内に設置

スプラッシュトップ株式会社

最初のオフィスは、東京駅近くのレンタルオフィスに専用スペースを設けました。アメリカ本社は、「ビットバレー(渋谷)がいいんじゃないか」と主張しましたが、あえて丸の内を選んだのには理由があります。

アメリカでは、企業の情報システム担当者への直販(クレジット決済)がメインですが、日本ではそのような販売方法は馴染みません。それよりも、通信キャリアなどと提携した代理店販売による請求書後払いがいいだろうと考えました。当時は知名度も低く、しかも2人体制では営業活動にも限界があります。様々なパートナー企業と提携して売っていくなら、自分たちの拠点は丸の内にあったほうがいい。全国各地から来てもらいやすいですし、丸の内という土地柄は会社の信頼にもつながるからです。

ただし、私たちは常にオフィスで仕事をしていたわけではありません。サービス自体はクラウド上にありますし、リモートワークのためのサービスを販売していることもあり、私たち自身がその実験台となる働き方を模索してきました。そのため、オフィスでなくてもできる業務や仕事の打ち合わせなどは、カフェを積極的に利用しました。中でもよく通ったのは、WIRED CAFEや星乃珈琲店、コメダ珈琲店などです。

カフェより快適な執務空間を求めて、緑が豊かな吉祥寺にオフィスを作る

水野 良昭

カフェでの仕事は快適でしたが、問題もありました。例えば、隣の人の会話がうるさくて集中できない、打ち合わせ内容を周りの人に聞かれてしまう、2時間以上は居づらいのでカフェを転々としなければならない、など。一番困ったのは、製品の検証がしづらいことです。私たちの製品は英語圏で開発されるため、日本語の環境で問題なく動くのかを様々なデバイスで検証する必要があります。カフェではそれが十分にできませんでした。そこで、より快適な作業空間を求めて、また検証作業のスペースを確保するため、オフィスを構えることにしたのです。

2017年、社員が4名の時に吉祥寺にオフィスを設立しました。それ以降、丸の内のレンタルオフィスは主に全国各地からの来客との打ち合わせに使い、吉祥寺のオフィスをメインオフィスとして使っています。現在は社員9名、在宅勤務5名の計14名体制です。吉祥寺オフィスは固定席とフリーアドレスを組み合わせ、在宅勤務の人たちが出社した際にも作業ができるレイアウトにしています。吉祥寺オフィスの構築に伴い、丸の内のレンタルオフィスを専有からコワーキングスペースに変更しました。

その後、吉祥寺オフィスは同一エリアで2回移転しています。なぜ吉祥寺なのかと不思議に思われるかもしれません。人材確保や社員のモチベーションを考慮すれば、オシャレでグレード感のある港区にオフィスを構えるのがいいのではないか、という声があったのも事実です。しかし私としては、場所に魅力を感じる人よりも、仕事自体に魅力を感じる人に入社してほしい。とはいえ、吉祥寺だって捨てたものではありません。豊かな自然環境はシリコンバレーに似ていますし、文化レベルが高く、食事のコストパフォーマンスは他の街に比べて断トツです。新宿や東京へのアクセスも申し分ありません。何より私自身、吉祥寺には長年住んでいて、好きな街なのです。

それに、シリコンバレーの本社から見れば、日本で働くこと自体がリモートワークのようなものです。時間に関係なく英語のメールが飛び交い、常に世界中の拠点とつながっています。オフィスが丸の内か吉祥寺か、はたまた港区にあるかは重要ではありません。社員の住まいも神奈川や埼玉などバラバラですが、柔軟にリモートワークを取り入れているので不便さは感じないようです。むしろ、通勤時間を短縮でき、自由度の高いリモートワークは、快適で働きやすいと好評です。

会社が成長しても拠点は吉祥寺がいい。リモートで働く人を全国に増やしていく

スプラッシュトップ株式会社

会社設立から昨年までは年120%くらいの割合で成長してきましたが、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが進み、今年3月はID数が2倍、4月には3倍に増加しました。ユーザーは中小企業を中心に、金融業、保険業、テレビ局、ゲーム開発会社、公共団体など多岐に渡ります。コロナ禍を経験して、今後は必然的、加速度的にリモートワークが当たり前の世の中になっていくと確信しています。

現在、国内で20万人以上の利用がありますが、これを2年後には400万人に増やすのが目標です。私たちが目指すのは、誰もが気軽にご利用いただけるパブリッククラウドサービスです。とはいえ、日本の社会はまだまだリモートがしやすい環境とは言えず、大手通信キャリアと連携を取りながら環境整備に努めていきたいと考えています。

事業規模が拡大しても、オフィスは吉祥寺に構え続けたいですね。常駐の人数はあまり増やさず、リモートで働ける人を全国に増やしていきたい。実際に今もフリーダイヤルの問い合わせは北海道在住のスタッフが受けていますし、マニュアルは長野県在住のスタッフが作成しています。リモートワークを進めるには、対面か非対面か、オンラインで行える業務かオフラインで行うべき業務か、といった観点から業務を細分化していくことが鍵になると思います。

これからもリモートワークとオフィスワークの最適なバランスを見極めながら、働く人の幸せと、会社が従業員に求める成果が両立する、持続可能な心地よい接点を模索し続けていきたいと考えています。スプラッシュトップで働く人の時間を最大限に輝かせることができるよう、リモートワークを進めると共に、快適なオフィス空間を提供していきたいと思います。

スプラッシュトップ株式会社

スプラッシュトップHP:https://www.splashtop.co.jp/

上記の記事の内容は BZ空間誌 2020年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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