ファンに愛される老舗メーカーが設立した、趣味を楽しむライフスタイル提案拠点。
初心者、一般層へのアピールを企図し、都市生活者が行き交う梅田に開設。
株式会社シマノ BC事業部企画部 文化推進室 シマノスクエア係 池本 英樹氏
自転車・釣り文化を広めるため、大阪中心部にカフェをオープン。
株式会社シマノは、金属加工から始まり、現在は自転車部品や釣具を製造する会社で、来年で創業100周年を迎えます。ものづくりの会社として、品質の高い製品を提供していくことで、自転車や釣りを楽しむ人の健康とよろこびに貢献していきたい、というのが我々の理念です。普段、我々が接するのは、完成車メーカー様や小売店様が多く、消費者の方々との直接的な接点はあまりありません。ですが、自転車文化、釣り文化の創造を目指して、エンドユーザーに向け、製品の提供だけでなく自転車や釣りの楽しさを体験できる機会を提供する社会活動に、以前より力を入れています。自転車で言えば、1980年代から一般の方を対象にした自転車レースを開催。その運営には社員が自主的に直接参画し、企画から運営までほぼ自前で行っています。また、自転車を日常的に使う生活スタイルを提案する場として、東京の南青山で「LIFE CREATION SPACE OVE」というカフェを運営したりしています。こうした活動により自転車文化が広まることで長期的に需要が高まるという考えが、企業文化として社内に根づいています。
そうした文化推進活動の一環として、2017年2月にナレッジキャピタルフューチャーライフショールーム内に開設したのが「SHIMANO SQUARE（シマノスクエア）」です。大阪の中心地に拠点を設けたのは、これまで接点の少なかった新しいお客様との出会いを求めるためです。長い間シマノの製品を愛用してくださっている自転車や釣りを競技スポーツとして楽しむようなコア層だけでなく、興味の芽生えた都市生活者の方々にも気軽に立ち寄っていただき、新たな発見の機会を提供することで、少しずつ暮らしに取り入れて趣味として育てていただければと思っています。そのための仕掛けとして、一見するとカフェに見えるように、カフェスペースを前面に出した作りにしています。カフェスペースには、自転車や釣り文化に関する本が置いてあり、本を読みながらゆったりとした時間を過ごしていただけます。
ミュージアム風の展示室で、パーツの機能美に親しんでもらう。
SHIMANO SQUAREのもう一つの狙いは、シマノの製品や技術を一般の方々にも知っていただくことです。カフェスペースの奥にラボスペースがあり、そこにシマノの歴代製品を展示しています。自転車や釣具の部品そのものは、一般のお客様にとっては馴染みがないかもしれません。ただ部品を見せるのではなく、部品の構造、素材、存在そのものの美しさを感じていただけるようミュージアムのような展示をしています。ガラスに覆われた展示品にはあえて説明ボードを設置せず品質感を演出し、代わりに自転車や釣り専門のコンシェルジュがお客様の質問に答えたり、自転車や釣りを楽しむためのご提案をしたりしています。また、自転車や釣りを生活に取り入れていただくためのきっかけづくりとして、サイクリングイベントやメンテナンス講座など様々なイベントも開催し、情報発信しています。
当初の狙いどおり、これまで接点の少なかった初心者や一般のお客様に多くお立ち寄りいただいています。また、来店やイベント参加を通じて消費者の方々の声を直接聞くことで、製品開発や販売方法の改善に活かせる情報を得る機会になると思います。これから着工するうめきた2期の開発で都市公園が整備され、周辺に緑が増えれば、健康で豊かな暮らしに相応しい街としてこの梅田エリアの価値も高まりそうです。そうなれば、SHIMANO SQUAREが人々に貢献できることも広がっていくのではないかと期待しています。
©Forward Stroke inc.
