多様な人々が集うコラボオフィスに、イノベーションセンターを開設。
社内外の様々な人材との交流で、新たな価値創造を目指す。
株式会社クボタ インキュベーションセンター ビジネスインキュベーション室 室長 辻村 克志氏
新たな事業の創出には、行動力とスピードが不可欠。
クボタは、トラクタやコンバインなどの農業機械、小型建機などの機械事業が売上の約8割、残り2割を水道管などの機材、水処理施設やゴミ処理施設の建設などの環境事業が占めている会社です。現在の主たる事業領域である農業分野では、ここ数十年の経済発展に伴い世界的に就農人口が減る一方で、人口は増加し続けており、農業の生産性向上に対するニーズが大きくなっています。このため農業機械には安定した需要があり、これを背景に当社は成長してきました。
とはいえ、お客様のニーズは年々変化、また多様化しており、これまでのように機械を売るだけでは、こういったニーズに応え続けていくことはできません。また、最近はICTやAIなどの技術革新が進み、機械の製造販売以外の領域で新たな価値を提供し、業績を伸ばすプレイヤーが現れています。そうした現状を背景に、2019年6月、当社は新しい価値提供の方法を模索するために「イノベーションセンター」を立ち上げ、同年11月、ナレッジキャピタルのコラボオフィス内にサテライトオフィスを開設しました。サテライトオフィスを開設した理由の一つは、オープンイノベーションによる新たな事業創出の必要性です。クボタは、機械製造技術は持っていますが、ICTやAIなどの分野は不得手です。もちろん社内でも対応は可能ですが、市場の変化に対応するためには、いかにそのスピードを高めていくかが課題となっており、すでにその分野で活躍する方々と手を組むことで、スピードを確保できるのではないかと考えました。
入居者同士を結び付けるサービスが魅力。社員のサードプレイスとしても機能。
サテライトオフィスを構えたもう一つの理由は、「せっかく新しい部門を立ち上げるなら、働き方も変えてみたら」と社内のマネジメントから意見が出たことです。当初は、なんばにある本社のフロアを今風のオフィスにリノベーションすることを考えましたが、それで何か変わるのか疑問に感じ、様々な業種・業態の人たちとの交流機会を求めてコワーキングスペースの活用を検討し始めました。最終的にナレッジキャピタルに決めた理由の一つは、コミュニケーターの存在です。見学した他の施設では、入居者同士が自発的にコンタクトを取り合いコミュニティを作っていくスタイルでしたが、日本人はそういった行動があまり得意ではありません。入居者やその他のナレッジキャピタル会員同士を結び付けてくれるコミュニケーターの存在は、非常に魅力的だと思いました。あとは、立地ですね。大阪の人にとってはなんばも梅田も大差はないと思いますが、遠方からの訪問者にとっては、梅田は圧倒的にアクセスに優れています。
事実、ナレッジキャピタルにサテライトオフィスを開設以来、訪問客が非常に増えています。スタートアップの方々にとって当社の本社は敷居が高く、何か目的がないと訪問しづらいように感じられるようですが、このオフィスはオープンな雰囲気のため、気軽にお立ち寄りいただけ、今まで生まれなかったような会話が生まれることも多々あります。また、社員にとってもオフィスとも自宅とも違った雰囲気なので、新しい発想を得られる“サードプレイス”になっているようです。社内外を問わず、多様な人たちの交流から新たな事業、製品やサービスが生まれる拠点にしていきたいと考えています。