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日本、アメリカ、中国の 物流施設マーケットの特徴

都市別特集

2010年3月4日

CBREジャパンデスク 上海 シニアディレクター 田口 元

シービーアールイージャパンデスク 上海
シニアディレクター
田口 元

私は現在、CBRE上海のジャパンデスクに所属していますが、過去CBRE米国ジャパンデスク及び、日本では国内外の物流不動産担当として、日本企業の国内需要、海外進出や撤退等に伴う不動産サービス業務に携わってきました。今回は、今までの経験に基づき、主にアメリカ、中国、日本の物流市場を例に、施設や契約商慣習の違い等、各市場の概況をお話したいと思います。

近年までの生産から流通、消費といった物流の世界的な流れについて、グローバル企業展開の傾向を踏まえ簡単にご説明いたします。過去数十年において、まずはアメリカ等の先進諸国にて工業製品の製造・販売が行われてきましたが、より安い製造コストを求め、東南アジア等の諸国にそれらがシフトしていきました。日本も加工貿易国から、海外生産へと進出していきます。そして15年ほど前から、社会基盤が整ってきたことと、当時、抜群のコスト競争力があり優良な労働力が豊富であった中国が、世界の工場として台頭してきました。ここ数年は、経済のグローバル化がさらに進み、製造の主戦場はインドやベトナムへと移行しつつあります。

数年前まで、世界最大の消費エリア・景気のけん引役はアメリカでした。中国やアジア諸国で生産された製品が、各アジア沿岸部の港から出港、コンテナ船で太平洋を横断し米国西海岸最大の港を有するLA/ロングビーチに入り、そこから鉄道やトラック輸送を利用して、より人口が多く購買力の集積する東海岸へと流通する、というのが物流の大きな流れだったといえるでしょう。

日本、アメリカ、中国の 物流施設マーケットの特徴

アメリカに進出している物流企業の施設を見ると、LAの施設規模が大きい傾向があり、同地の物流不動産の床面積総計も米国一を誇っています。次いでシカゴ、アトランタ等が物流のハブに、さらに東海岸に向かうに従い、それぞれリージョナルな配送拠点となっていくというイメージです。全般的に米国の物流施設は、原料等の保管倉庫を除き、輸入製品をすぐに国内各地に流通させるための「通過型」の施設が大半を占めています。その主因として、海外での製造から国内消費者まで一連の商品の流れを俯瞰したサプライ・チェーン・マネジメントの考え方により、多国間に跨るモノの流れが、より早く、効率的なものへと進化したことが挙げられるでしょう。また製造の現場において、ジャスト・イン・タイムに総称される製造者が部品在庫を持たず、サプライヤーからの効率的な供給を目指すモノつくりの流れも、「通過型」の物流施設の必要性を高めたといえます。

一方、経済危機以降減速するアメリカの消費動向に対して、世界の工場から世界の一大消費地へと成長しつつある中国では、これまで沿海部に立地し輸出に特化していたともいえる物流施設に加え、大都市近郊、または内陸部の発展目覚しい都市群に向け、新たに内需対応の物流施設の必要性が顕在化してきています。政府主導の景気刺激策により、インフラの整備が急速に進んでいることも、内陸に向けての物流網の発展に拍車をかけています。例えば中国国内で昨年1年間に建設された高速道路の距離は、日本全国の高速道路の総距離数とほぼ同じといったような状態です。

日本、アメリカ、中国の 物流施設マーケットの特徴

変わって日本の物流マーケットを見ると、特に人口が集中し、物流施設が集積する首都圏では、大消費地をカバーする内需向けの物流施設がその多くを占めます。首都圏の物流施設は、歴史的に倉庫・不動産オーナーが大家であり、土地価格も高い中、より土地を高度利用できる、保管型の倉庫が主流であったといえます。ただし、サプライ・チェーン・マネジメントの浸透、物流アウトソーシングの一般化と、昨今の欧米系デベロッパーの進出による物流不動産保有形態、貸し方の変革もあり、「通過型」の物流施設の供給が近年増大してきています。

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ゼロベースから欧米化する中国に対し日本は既存施設の存在が足かせに

物流施設の仕様は、その国の地域性、物流システムの発展の歴史によって大きく異なってくるといえそうです。例えばアメリカでは、広大な土地を有するため、物流施設はもともと巨大な平屋が一般的。しかも地価が安いために、わざわざ建設コストをかけて多層階とする必要はありませんでした。そのような市場に15年ほど前から物流デベロッパーが現れ、より汎用性を高めた仕様の賃貸物流施設が開発されるようになりました。トレーラー輸送が主流で、荷揚げされた海上コンテナがその荷姿のまま大陸を横断することも多いアメリカでは、トラックヤードは135フィート、トレーラー使用にあわせた高床式対応、多くの搬入口が設けられました。日本では一般的な用途地域で、建ぺい率60%、容積率200%をすべて使い切るのに比べ、米国物流施設の建ぺい率・容積率の消化は40~45%に過ぎません。天井高30フィート(9m)、内部は柱だけのがらんどうで、必要に応じて間仕切り壁で分割できるという、非常に汎用性の高い施設が主流となっています。この仕様は通過・保管倉庫としても優れ、物流の効率化を実現できる形態であるといえます。

中国では、これまで不動産市場の歴史の浅さと、物流の整備が遅れていたこともあり、以前は道路もないところに倉庫を建設するといった乱暴な事例もありました。しかし、国内物流量の増大による、先進的かつ合理的な物流システムの必要性と、広大な国土を有することから、欧米式のグローバル・スタンダードを受け入れやすい不動産市場となっています。言ってみれば、中国は未整備であったがゆえに欧米の仕様を導入し易く、先進的な施設開発が進められてきています。従来は地場の開発施設と欧米型の新規開発案件のスペックの差が明確であったため良し悪しが一目で判断できましたが、今では地元業者も時代変化を取り入れ、外資と遜色のない施設を開発するようにもなってきています。

日本、アメリカ、中国の 物流施設マーケットの特徴

一方、日本の都市部の物流適地には既存施設が存在し、住居や他の用途施設とも、その土地を分け合っているのが現状です。新たな物流施設開発は、その隙間を縫って行わざるを得ませんでした。地価が高く、しかも敷地が狭い中で、現代の物流ニーズに対応した「通過型」の施設を実現するため、建ぺい率・容積率を満たし、天井高5.5m程でランプウェイ付の多層階(マルチ型)倉庫が主流になっています。歴史的にみると、30年ほど前にTRCや寶組がそのコンセプトを生み出し、近年の海外物流投資家の進出により、その進化を促したといえるでしょう。日本独自の「通過型」施設が市場に浸透してきたわけです。

「土地がない」という同じような悩みを抱える香港では、現在、24階建という世界でも類を見ない多層階建物流施設の開発が進んでいます。これはかなり極端な事例ですが、日本、特に東京周辺の物流施設の状況は、この香港の事例に並び、世界的に見て特殊な地域であることは間違いないのです。

日本でも一般化する定期借家、中国での契約には数々の注意点が

さて、こうした施設の使用者は、3PLを含む物流業者が主力ということになります。かつては自社生産、自社物流が一般的でしたが、今日では物流も専業化が強まっており、アウトソーシングへの移行が世界的な流れになっています。日本の企業が海外で物流施設を確保しようとする時も、主流はアウトソーシングを通じての賃貸が一般的ではないかと思われます。とはいえ、物流システムの構築、コスト要因に大きく関与する、賃貸借契約条件について、海外での注意点を日本の一般的な契約形態も踏まえつつお話しておきましょう。

賃貸借契約について

オフィス等の契約同様、物流施設においても普通借家か定期借家かが基本的な差異と思われます。契約期間3年、中途解約可、自動更新という普通借家契約は、日本の伝統的な契約形態として依然主流を占めていると思いますが、世界的に見た場合は、稀なスタイルであるといえます。近年、日本でも投資家やファンド所有の施設では、ほとんどがグローバル・スタンダードの定期借家契約を標準としつつあります。定期借家が当然の各国では、中途解約が不可であることに対応するため、サブリース等の二次マーケットが成熟しています。契約更新権利、拡張権、テナント工事費用負担、賃貸借契約継承権等、日本の一般的な賃貸契約書ではあまりなじみのない項目も多くありますので、注意をして理解することが必要でしょう。

ブローカーについて

日本では貸主、借主の間に立つ"仲介"が基本となりますが、欧米や欧米式を取り入れた中国等では、借主、貸主双方がそれぞれのブローカーを、双方の利益代表として指定、代理人として交渉を担います。代理人として専任業者を指定するのが一般的です。

中国での契約の注意点

 また、中国での賃貸借契約では特に気をつけることがあります。ポイントは大きく分けて2つ。1つは、更新契約賃料の極端な値上げに悲鳴を上げているテナントをよく目にすることです。2年程度の比較的短期の賃貸契約が慣習であり、3年目の契約更新の際に大幅な賃料上昇を要求されるといったことも珍しくありません。中国の不動産事業は基本的に50年の土地使用権をベースとしたものであることも影響し、短期間にできるだけ利益を上げようとする傾向があります。また、国内の経済成長も後押しし、貸し手側は「値上げは当然」のスタンスです。

中国においては、最初の契約の際、当初の契約賃料のみならず、継続して契約する場合のインセンティブや賃料変動の取り決めをしておくなど、日本における契約の常識とは異なった知識やノウハウが必要となります。最近では、中国のオーナーも徐々に欧米型の長期契約での安定収入といった考えに移行しているようですが、従来型の物件オーナーと交渉する際には、相手企業・個人の見極めも重要ということになります。

もう1つは法令関連です。中国への外国企業の進出については、業種によっても規制があります。物流企業に対しての規制は序々に解放されてきていますが、地域によっても規定が異なるので注意が必要でしょう。

日本企業にとって海外展開は不可避のものとなっていますが、各国に根ざしたトラブルの元や注意が必要なことは数多く存在します。その国の市場や商慣習を良く知り、さらに日本企業・物流企業の立場に立った、専門家の視点でのお客様へのサービスを、私どもは心がけています。海外物流拠点構築をご検討の際には、シービー・リチャードエリスのワールドワイドなネットワーク、及び各地ジャパンデスクの豊富な知識と経験をぜひご活用ください。

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