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土壌汚染リスクの定量化が、不動産流動化促進の鍵

ランドソリューション株式会社
顧問 知野 進一

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経済問題へと発展した土壌汚染

土壌汚染とは、製造工場などで使用された化学物質が、地表面から土壌に浸透するもので、地下水を通じて他の地域にまで拡散し、広範囲な環境汚染につながる可能性のある問題です。それを放置することで、地表面における直接暴露や、汚染地下水の飲用により健康被害を及ぼす危険性が指摘されています。

ご承知のとおり、こうした環境汚染問題は今に始まったことではありません。1950年代以降の日本経済の発展とともに、イタイイタイ病や砒素汚染問題、1960年代の阿賀野川の水銀中毒、1970年代の六価クロム汚染など、これまでも公害問題として取り上げられてきました。

廃棄物処理法ができるまでは、重化学工場に限らず、一般の工場などで裏の空き地に穴を掘って産業廃棄物を埋めるのは、日常的によく行われていたことでした。また、洗浄剤として利用された化合物に対する関心は薄く、現在、土壌汚染の問題が出てきているのは、いわば、しかたがないことなのでしょう。

自然環境を形成する空気、水、土壌のうち、公共性の高い空気と水については、1968年に「大気汚染防止法」、1971年代に「水質汚濁防止法」が施行され、環境基準を定める法律ができました。しかし、土地に関しては、たとえ汚染が分かっていても、私有財産であることから規制が難しく、有効な解決策が施されてきませんでした。これが、今になって問題を大きくしている要因の一つに挙げられます。大気や水の対策に大きく遅れること数十年、2003年に、ようやく国民の健康保護を目的とした「土壌汚染対策法」が法制化されました。ただし、これは土壌を汚さないための法律ではなく、汚れているものをきれいにするための対策法であり、環境保護はうたわれていません。

さらに言うなら、昨今の土壌汚染問題の盛り上がりは、環境問題と言うよりは、この汚染が及ぼす今日の経済活動への影響に、強く起因したものであると言えるでしょう。

私自身、栗田工業に在籍していた1980年代後半から土壌汚染問題に携わり、ごく最初の段階から現在までこの仕事に関係してきましたが、2000年頃までは、操業されている工場の土壌を、環境管理の側面から調査し、浄化することが主なビジネスでした。

しかし、2001年以降、経済情勢の悪化により工場などの廃業が相次ぎ、さらに時を同じくして自治体による土壌の環境規制が厳しくなり、汚染地に絡む不動産取引の現場で、土地の価値が大幅に下落するケースが増えてきたのです。もちろん、その影響は所有者だけでなく、ステークホルダーである購入者や金融機関、行政、仲介を行った不動産会社、工場で働いていた従業員、周辺住民までも含めた利害関係者全体にまで及ぶようになってきました。つまり、土壌汚染が、環境面のみならず、不動産市場の阻害要因として大きくクローズアップされる時代になったのです。実を言えば、このような変化が、土壌汚染のリスクマネジメントを行う当社を設立するきっかけにもなったのです。

不動産流動化を阻害する土壌汚染

食品を除くすべての製造工場や化学肥料を多用する農用地、病院や研究施設、埋立地、焼却設備などに関連した土地に、汚染の可能性が指摘されています。こうした汚染が不動産取引に及ぼす影響を、事例を挙げてご紹介しましょう。

まず、大阪で問題となった、工場跡地の大型再開発の事例は記憶に新しいところでしょう。土壌汚染を隠蔽してマンションを販売したことが判明し、刑事事件にまで発展しました。このケースでは、補償だけで少なくとも75億円。さらに、浄化には50~60億円が掛かると言われています。

また、経営立て直しに着手したある会社では、自社の土地にショッピングセンターを建設するという再建計画が立てられました。しかし、その後に土壌汚染が判明、50億円の土地代に対して10億円の浄化費用がかかると試算され、さらにモールの開店が1年間遅れることとなりました。時間と資金の両面から、企業再建プランに甚大な影響を与えることになったと言えます。

この他にも、産業廃棄物跡地でのマンション建設計画が中止に追い込まれたり、化学薬品工場跡地で汚染を客に説明しないまま販売し、周辺住民の苦情で解約に追い込まれたデベロッパーのケース。敷地の半分を売却して経営再建を計画したものの、契約を解除された企業のケースなど、土壌汚染が不動産取引を阻害した事例は枚挙にいとまがないほどです。

重汚染の場合は、土地代の20~30%の比率で浄化コストが掛かるのが普通で、敷地が大きくなれば億単位の費用も決して珍しくはありません。街中にある中小のメッキ工場やクリーニング店のように、敷地面積が小さい場合には、土地価格を超えるケースも出てきているのです。

いたずらに大騒ぎをする必要はありませんが、このような現状を認識し、冷静にリスクマネジメントを行うことが大変重要です。

実情に合わせたリスクヘッジ

今日、年間数十万件もの不動産取引が行われています。ある調査では全体の取引の10%、工場跡地では約50%が汚染されていると指摘されています。ちなみに、今回施行された土壌汚染対策法で調査の対象となるのは、有害物質を使っていた工場が廃止になった場合のみであり、その数は全国で年に1,000件足らず。つまり、法律は不動産取引の実務を想定しているわけではないのです。さらに言えば、法律では健康被害に配慮して、汚染地には50cm以上の盛土をすることを義務づけていますが、現実にそれだけの対処しかなされていない土地を、宅地として買う人はまだあまりいないと思います。法整備と実際の取引とには、かなりのギャップがあるのです。しかしながら、特に東京などの大都市圏では、工場跡地くらいしかマンション建設用地を確保することができないのが現実です。これが阻害されるとなれば、経済的に大きな問題であることは言うまでもありません。

そのための解決策となるのが、見えないリスクの定量化とコストの保証です。顕在化しているリスクはもちろん、不安からの買い控えを払拭すること。汚染の有無を調査して金額面でのリスクを算定し、浄化の責任を明確にすることで、取引におけるモヤモヤを解消すれば、市場の活性化は促進されると言えます。

そのため当社では、1万5000件に及ぶ過去からの調査データに基づく土壌汚染リスクの定量化システムを開発しています。そして、そのシステムをベースに、①調査の結果、「汚染なし」と判定した場合、後に発見された場合には無償で浄化を行う、②算定した見積りより浄化コストがかかっても、超過部分を負担する、③浄化後に新たな汚染が発見された場合、無償で追加浄化を行う、④将来実施する浄化対策についてもコストを保証する、といった保証機能を設定しています。

また、こうした保証のもとで、取引関係者のリスクをヘッジして売買を成立させる、あるいは当社がその土地を買い取って流動化するというスキームを用意しています。こうした一連のシステムがあればこそ、不動産を安心して取引することができるのであり、そのリスクをヘッジすることが当社の事業コンセプトでもあります。

リスクの早期明確化が今後の課題

当社への調査依頼件数は、年々、急激に増加しており、現在、直接的な当事者となるデベロッパーはもちろん、銀行やファンドからの調査依頼が殺到しています。

土地を担保としている銀行からは、これまでメガバンクから1万件以上の依頼があり、データベースを基にしたチェックシートや不動産関連情報に基づく調査を行っています。もちろん、その結果に基づく評価ダウンも実際に行われてきました。また、M&AやREITに関連するニーズでは、現地調査情報をデータベースと照合し、技術者がチェックするフェーズ1.5といったワンランク上の調査手法が主に採用されています。ファンドは投資家への責任上もあり、物件購入や数年毎のリファイナンスに対応するため、通常の調査内容よりも精度の高いものになっているのです。

また、現在は土地売却の予定がなくとも、経営リスクを把握する目的で調査を依頼する優良企業も増えています。それだけ、土壌汚染に対する関心は高まっており、不動産流動化に関連した大きな流れとなっているという認識を持つことが大切でしょう。

今後は、経営難や後継者問題を抱える町工場などが、大きな問題となる可能性を秘めています。これらの工場は、たとえ経営が成り立っていても、周辺住民の圧力から操業が難しくなり、廃業するにも土地浄化に費用がかかるという問題に、将来必ず直面するのです。さらに極論すれば、こうした廃業者からの相続税の物納により、国や自治体が汚染された塩漬けの土地の集積場になる可能性さえ考えられます。

また、借地の場合には、原状回復の必要性といった複雑な問題も出てくることとなり、いずれにしても困難な課題が山積していると言えるでしょう。

こうした問題があることをきちんと認識し、自主的に調査を行い、早めに浄化を行うことが、今、重要になっているのです。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2005年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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