050-5447-7862

平日 9:00〜17:30

物件を探す

事業用不動産のあらゆるニーズを網羅するサービスと豊富な実績で、お客様の課題を解決する最適なソリューションをご提案いたします。

お役立ち情報

CBREが手掛けた、さまざまな業種・規模の移転事例のご紹介を始め、オフィスや物流拠点の移転に役立つ資料・情報をご提供しています。

マーケット情報

独自収集したデータを元に、不動産マーケットの市況を分析予測し、市場変化をいち早く捉え、ポイントをまとめた市場レポートを配信しています。
また、物件レポート、業界トレンド情報など、事業用不動産の最新情報、トレンドを配信しています。

CBREについて

事業用不動産の分野において、世界有数の企業であるCBRE。日本国内におけるその強み、拠点、会社概要をご紹介します。

ヘルプ

物件検索の使い方や、会員サービス、よくあるご質問など、当サイトをより便利にご利用いただくための情報をご紹介します。

仲介業者様はこちら

賃貸オフィス・事務所の記事

環境リスク

土地・建物という貴重な資産のやり取りであり、売買価格が極めて高額なものとなる不動産取引。場合によっては「命の次に大切な・・・」「企業の存亡がかかった・・・」取引であるがゆえ、付随する"リスク"に関しても法制度の整備や諸慣習での対応といった対策が採られ、市場に周知されてきた。例えば、いまだ根強く残る境界線紛争や手付金詐欺など不動産訴訟の定番ともいえるリスクについては、深刻さの度合いにもよるが、これまでの経験や認識で対処を講じることができるだろう。しかし昨今、マーケットの大きな変貌とともに、これまで表面化することのなかったリスクが顕在化してきている。その最たる例が、土壌汚染やアスベストといった、環境リスクの不動産市場への影響だ。

今号の特別企画は「いまどきの不動産リスク」と題し、これら環境リスクと不動産市場との関係を明らかにしてみたい。また、環境リスクとは別に、昨今のヒートアップするマーケットに対する緊急寄稿として、不動産経済に詳しい麗澤大学国際経済学部、清水千弘助教授に、市況の健全性について解説していただいた。

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

不動産取引における環境リスク

みずほ情報総研株式会社
ビジネスイノベーション部 チーフコンサルタント 光成 美樹

はじめに

土壌汚染対策法が施行されて2年半が経過し、汚染調査の件数は着実に伸びてきているようだ。環境省の外郭団体で、土壌汚染についての問題等を取り扱う(社)土壌環境センターの統計では、2004年度に土壌汚染調査を実施した件数は6,000件を超え、昨年に比べて50%以上の伸びを示している。また、自主調査を実施した約4,000件のうち、その過半が不動産取引に伴う調査であることから、不動産の売買に際して土壌汚染調査を行うことが一般化しつつあるとも言えるだろう。

また、この夏、株式会社クボタがアスベストによる被害状況を自主開示したことがきっかけとなり、建築物等におけるアスベスト問題が顕在化している。本稿では、不動産取引における土壌汚染リスクをはじめとする環境リスク要因について、問題の状況と、現在の不動産取引における問題解決の手法、残されている課題等について考えてみたい。

不動産取引における環境リスク要因とその影響(土壌汚染に伴う経済的損失)

土壌汚染やアスベストが、不動産取引上の問題 となっているのは、こうした環境リスクが第一義的には人体に及ぼす環境問題であり、これらの有害物質に対する法律が制定されたことが背景にある。しかしな がら、その本質は、法律遵守の観点からだけでなく、経済的な損失につながる問題であるとの認識に基づくものである。

不動産に与える経済的な 減価要因としては、(1)汚染調査の費用、(2)汚染が顕在化した際の汚染浄化、措置費用、(3)第三者(人体や隣地など)への汚染排出による被害賠償、 (4)汚染等への嫌悪感から生じる不動産の市場価値の滅失、(5)施設や事務所などが操業していた場合、操業の中断の機会費用や汚染除去調査等の立ち会い などに伴う人件費などがある。また、企業にとっては、情報の隠蔽や不適切なリスク管理が明らかになった場合には、企業イメージに大きな打撃を与える。その 結果、その企業価値の滅失を通じて、事業運営においても、追加的な様々なコストを負担することになる(図1参照)。

これらの減価要因が、不動産を売却する際に、通常の不動産の市場価値や鑑定上の評価額(いわゆる最有効使用に基づく価額)から減価されることになる可能性があるうえ、調査や浄化などの措置が長期化することに伴い取引機会を逃すリスクにも挙げられる。

不動産に関わる環境リスク例とそのコスト及び不動産価値

不動産に関わる環境リスク(例)
対 象 土地関連 建物関連 地域等
環境リスク(例) ●土壌汚染
●ラドン
●地下貯蔵タンク
●アスベスト
●モールド(カビの一種)
●鉛塗料
●室内汚染(シックハウス起因物質)
●水質(水道、地下水等)
●大気汚染
●湿地などの環境保護地域
不動産に関わる環境リスク例とそのコスト及び不動産価値

不動産取引における売り手と買い手の環境リスク管理

不動産取引におけるこうした環境リスクへの対処は、現在、「調査」、「汚染があった場合の対処(浄化や除去措置等)」、及び「契約条件」による対策や措置をとるのが通例である(図2参照)。

土 壌汚染調査の場合には、一般的にもっとも簡易なものとして、20~30万円程度の費用で実施できる過去の所有履歴や使用状況、表層土壌などの調査(フェー ズI)と、敷地内の特定の場所にボーリングをして地中の土壌についてサンプリング調査をする詳細調査(通常のフェーズII)がある。フェーズIIと呼ばれ るボーリング調査は、環境省によりその実施方法が詳細に規定されているが、工場跡地など広大な敷地の調査には、数百万円から数千万円の調査費が掛かるとい われる。

また、措置の費用は汚染状況によって大きく異なっており、場合よっては不動産価値以上の措置費用が必要な場合もある。不動産取引の 場合、土壌汚染がその土地に残ることを買い手が嫌って、汚染土壌全体を除去してしまう掘削除去の措置を採る場合も多く、広大な敷地の場合には高額な負担と なっている。

さらに、調査や措置の内容を踏まえて、不動産取引上の様々な契約条件が付与されることもある。調査結果をもとにした契約停止条 件、汚染が存在した場合の買い戻し特約や、汚染発覚後の損害賠償条件、また、瑕疵担保責任上の瑕疵の範囲にあたる汚染の範囲や状況等に対する認識の合意な どの契約条件によりリスクに対処する方法である。

不動産取引における環境リスクの管理

  • 不動産の地歴・過去の使用状況、隣接地の土地利用状況などから、環境リスクの評価を行い、リスク分析を行うと共に、分析結果に応じた措置(リスク管理)を行うことが一般的。
  • リスクを排除するため、汚染の可能性がある不動産を購入しない買主も多い。
不動産取引における環境リスクの管理

不動産取引において残されたリスク要因

しかし、これらの対処方法においても、いくつかの課題が残されている。

ま ず、不動産取引において、宅地建物取引業法上、重要事項説明において情報開示が義務づけられているのは、その不動産が土壌汚染対策法上の指定区域内か否か という情報のみであり、それ以外の土壌汚染の状況については、情報開示が義務づけられているわけではない。過去の地歴から汚染の可能性が低いと判断され、 当事者間で調査の必要性がないと考えた場合には、必ずしも調査が行われるわけではない。

また、土壌汚染調査を実施した場合にも、土地の地中 全体を網羅的に調査できるわけではなく、不動産取引上の万が一のリスク要因が残されている。具体的には、調査結果では土壌汚染がないと言われたが、実際に 汚染が残されているリスク、自然由来の汚染の存在、敷地外への汚染流出リスク、それによる地下水汚染などから生まれる健康被害などのリスク、汚染浄化や汚 染除去の活動が予想以上に長期化またはコスト超過した場合の費用負担、及び不動産取引の機会損失、工事の中断等がある。また、これらのリスクが顕在化した 場合の金銭価値の評価方法もまだ確立していない。

さらに、土壌汚染やアスベスト以外にも、建物や土地などの不動産にかかわる環境リスクは残 されている。地震や水害などの突発的に発生する自然災害ではなく、建物の資材等に使われている鉛塗料や通気性の悪化から生じるモールド、地質上の特性から 生じるラドンなどである。米国では、金融機関やデベロッパーが土壌汚染調査の際に、これらの調査を追加的に実施する場合も多いといわれる。

こ うした環境汚染に対する浄化責任、コスト負担の責任は、原則として、汚染者責任であるものの、不動産を所有している場合には、所有者が第一次的な調査主体 となる。そして、汚染原因者が分からない場合を含めて、契約条件に基づく当事者間の解決事項になっているのである。従って、契約条件の前提となる土壌汚染 や環境汚染の状況調査は、きわめて重要な役割があるといえる。

売主と買主のリスク管理

こうした状況の中で、不動産取引においては、どのようなリスク管理をしなければならないのだろうか。

不 動産の売り手と買い手は、それぞれの立場でリスク管理を行う必要がある。不動産の売り手は、その不動産を売却した時点においては、土壌汚染がないことを証 明し、その後汚染が発覚した際の汚染浄化義務等が発生しないことを確保する。また、買い手側は、不動産購入時に売り手が示した環境リスクの状況を確認し、 その調査結果をもとに契約が行われていることを確認するとともに、汚染等が存在する場合には、条件特約や瑕疵担保責任に対する賠償責任の範囲等について検 討し、調査の範囲外のリスクが顕在化する可能性を検討しておくことも重要になる。

こうした環境リスクを一定期間にわたって移転するための手法として環境保険があり、米国などでは活用が進んできているが、高額である。また、国内の不動産取引においては、保険商品も限られているのが現状である(図3参照)。

また、不動産取引における土壌汚染を含む環境調査の標準は確立されていないことなどもあり、調査機関や実施する専門家によって、その手法や品質にはばらつきがあるともいわれる。

したがって、不動産取引においては信頼のおける調査機関に調査を依頼することが、現時点のリスク管理において重要であろう。

主な分類 保険内容(例) 保険の対象者(例)
場所特定の
環境汚染賠償責任保険

例)
不動産取引に関する損害賠償保険
債権者向け損害賠償保険
特定の対象地の環境リスクに関連する賠償責任費用等を対象とする
  • 不動産取引の売主・買主
  • 融資業務を行う金融機関
請負業者向け
環境汚染賠償責任保険
汚染土壌の浄化作業などに起因する損失等を対象とする 汚染浄化などを行う建設・エンジニアリング会社など
環境専門家向け
賠償責任保険
環境専門家の過失などにより生じた損失等を対象とする 環境デューデリジェンスなどを行う環境専門家・エンジニア、コンサルタントなど
アスベスト・
鉛除去請負業者向け保険
アスベスト及び鉛除去作業に起因する損失等を対象とする 建物工事などを行う建設業者など
超過浄化費用保険
(コストキャップ、ストップロス保険)
定の場所における予想外の浄化費用の超過分を対象とする 土壌汚染サイトの所有者など

資料:Environmental Risk Resource Association 資料を基にみずほ情報総研作成

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

上記内容は オフィスジャパン誌 2005年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

記事を探す

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。
ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は右記のフォームからお問い合わせください。

物件相談フォーム