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アスベスト

専門家の調査に基づく、的確な情報開示が今後の課題

ヤシマ工業株式会社
技術部 部長 原島 浩

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古くて新しいアスベスト問題

この数ヵ月間、かつてないほどにアスベスト(石綿)問題が、新聞・テレビをはじめとする各種メディアで大きく取り上げられています。その皮切りとなったのが、今年の6月、アスベスト製品の大手メーカーが、その製造と関連すると思われる健康被害の実態を公表したことでした。これをきっかけに、同業他社からも同様の情報が次々に公開され、しかも、その被害状況が深刻であったことに端を発しています。

アスベストとは天然鉱物から採れる繊維のことで、日本国内ではこれまでクリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の3種類が利用されてきました。長さは1mmから数cm、太さは0.02ミクロン程度という極めて細いもので、1mmの太さの中に4,000~5,000本が含まれることになります。

アスベストは不燃性や耐熱性、熱や電気の絶縁性、耐久性、耐腐食性に優れていることから、実に様々な製品に利用されてきました。特に建物においては、1955年頃から耐火被覆材として吹き付けられたり、また、以降は建材として広く使われるなど、国内利用の9割が建設物関連で占められています。100年以上の利用の歴史があるアメリカでは、建物でアスベストが含まれていないと断言できるのは、ガラスと木と鉄だけと言われるほど、利用頻度の高いものなのです。

反面、その危険性については早くから指摘されており、WHO(世界保健機関)は、空気1リットル当たり5本のアスベストを1年間吸い続けると10万人に15人が中皮腫やじん肺などで死ぬ恐れがあると発表しています。そのため、アメリカでは1970年代初め頃から法規制が始まりました。もちろん日本においても規制は行われており、1975年に「特定化学物質等障害予防規則(特化則)」の改正による吹き付けアスベストの禁止、1980年には5%を超えてアスベストを含有する製品が特化則の対象となり、1995年には「5%を超えて」が、1%を超えるものに適用されるようになり、さらに2004年には、含有率1%を超える建材などの製品が製造禁止になるなど、官民による規制が実施されてきた経緯があります。

にもかかわらず、今回の騒動がこれだけ深刻化しているのは、実態調査において健康被害が把握されているだけでも462名、そのうち死亡者が374名という数の多さはもちろん、被害者の中に生産に携わっている工場労働者だけでなく、その家族や工場周辺住民が含まれていること。さらに、前述のようにアスベストそのものが非常に広範囲で存在し、その存在が一概に断定できない点が、大きな原因になっていると言えます。

危険性の正しい現状認識が不可欠

アスベスト問題への対処法には二つのポイントがあります。まず一つ目は、アスベストがあるかどうかの判断です。1975年の吹き付け禁止や、含有率の規制及びメーカーの自主規制といった動きがあったことから、年々、総量が減ってきているのは事実です。ですが、裏を返せば、1975年以前の建物には、ほぼ間違いなく吹き付け工法が採用されていたということになります。また建築設計図や建物仕様書からはアスベストの使用が確認できなくても、実際には、工事現場で吹き付けられた可能性もないとは言い切れません。事実、アスベストの代替品とされていたロックウールが単体では接着性が弱いため、その扱い難さから、法規制以降も現場でアスベストと混ぜ使われていたと言われています。

さらに建材については、昨年の9月まで、含有率1%以上の製品が作られていたわけですし、東京都環境局のホームページの「アスベストの手引き」には、その製品がいつまで作られていたか、メーカーと商品名が書いてありますが、在庫が残っていれば製造中止以降も使用されていた可能性は高いのです。ですから、禁止規制以降だから安全と判断するのは間違いです。こうした規制の期限を目安にして、現存の建物については、何らかの形でアスベストが含まれているという認識が必要なのです。

とはいえ、アスベストの存在イコール危険という認識は間違っています。建物に使用されるアスベストは、代表的な「吹き付けアスベスト」の他、建材として保温材や断熱材、耐火被覆材などに含まれる「飛散性アスベスト」と、床材タイルや石綿スレートなどの成形板に含まれる「非飛散性アスベスト」の大きく3種類に分類できますが、いずれも空気中にアスベストが飛散してはじめて危険なのであって、正常な状態で存在している限り安全だと言えます。

そこで二つ目のポイントは、「飛散の危険性の現状把握」です。最も飛散の可能性が高く、危険度が高い吹き付けアスベストは、目視でおおよその状況を判断できます。吹き付けが毛羽立っているとか崩れていれば、危険性が極めて高いと言えるでしょう。建材については、壊れて飛散状態になっていなければ、特に問題はないはずです。昨今、これらの違いが明確でないまま報道されている傾向があり、アスベストを含む建材があるというだけで不安を感じる方々もいますが、はっきりと分けるべきでしょう。

また、仮に飛散しているものがあったとしても、それがアスベストかどうかは、きちんと分析しなければわからないということです。つまり、対処の順序としては、工場であれ、ビルであれ、まずそこにアスベストがあるのかどうか、あるならどのような状態か、飛散しているのか否かを調査することが重要なのです。

避けて通れない解体時のリスク

調査の結果、飛散が確認された時には対処の必要があります。これまで、アスベストに関する規制は厚生労働省による労働者の健康保護に対するものに限られていました。

しかし、2005年7月に「石綿障害予防規則(石綿則)」が施行され、飛散の可能性がある場合には、事業者に対して、完全に取り除く「除去」や、薬剤を浸透させて固着する「封じ込め」、露出した部分をコンクリートなどで密閉する「囲い込み」などの措置を講じることを義務づけています。つまり、責任の所在を明確にしたわけです。

さらに石綿則では、建物の解体時はアスベストの飛散の危険性が飛躍的に高くなるため、あらかじめ有無を調査し、作業計画を策定して、工事を行う14日前までには労働基準監督署や役所に届け出ることとして、違反には罰則を設けています。このため、工事着手までに現実には約1ヵ月の期間が必要となり、しかも作業に際しては、飛散防止のための養生などを含め、費用面で従来の2倍以上のコストが掛かります。

不動産取引に与える影響は甚大

こうしたリスクを踏まえて、不動産売買に及ぼす影響を考えてみましょう。今日行われている膨大な不動産取引の中で、アスベストの徹底した調査がどれだけ行われているでしょうか。多くの場合、購入に際して、あまり気にしていないのが現状でしょう。また、売る側も、吹き付けアスベストに関してだけを目視で調査し、「問題なし」と言っている例が多いようです。

しかし、すでに取得時のみならず、賃貸ビルに入居する際でも、アスベストがあるなら買わない、入居しないという事例が見受けられるようになっています。また、購入直後にアスベストの存在が確認され、仲介した販売業者に除去費用の負担を求めた事例もあります。

アメリカでは不動産売買の際、特に融資する銀行が調査を求めています。この調査は、建材の一つひとつまで徹底的に調べるものです。とはいえ、アメリカでも告知が法的な義務というわけではなく、あくまで経済的なリスクヘッジの意味から、アスベスト調査が行われているわけです。今後、日本においても、実際に経済的負担が発生するケースが出てくるでしょうから、売買時における詳細な調査の必要性は、大きくなってくるものと思われます。

現状では飛散していないといっても、除去や解体時に、さらにリニューアル等を行う場合でさえも、従来にはなかったコストが掛かることになります。そのため、事前にその分を加味して算定されることになり、その意味で売買価格に影響を及ぼすことは間違いありません。

拡大するテナントビル所有者の責任

J-REITや私募ファンドによる証券化を目的とした売買では、デューデリジェンスが徹底して行われるはずなので、危険性は露見しやすいでしょう。また、自社ビルや工場、倉庫など、自らが使用する場合、石綿則で従業員の健康被害に対する経営者の責任が記されているため、飛散対策への早目の対応が進んでいくと思われます。

その点で厄介なのが、テナントビルです。要因の一つに挙げられるのが、原状回復やリニューアル工事です。テナントの退去に伴い行われるこれらの改修工事は、解体同様にアスベストの飛散が発生する原因になります。入れ替わりが激しいビルでは、その都度コストが掛かるので、取得時には相応の価格を算定する必要があるでしょう。

しかも、飛散が確認された場合の被害も甚大です。石綿則では、事業者の責任において対策を採るよう義務づけています。ですが、例えばワンフロアにいくつものテナントが入居している場合、一つのテナントの壁が壊れて吹き付けアスベストがむき出しになっても、できるのはせいぜい囲い込んでおくだけ。他のテナントに影響を与えず除去作業を行うことは、物理的に不可能です。除去作業は、最低でもワンフロア全体が空いた状態にならなければ実施できません。

だからといって、一度、入居テナントすべてに出てもらい、除去をしてから戻ってもらうというのは、費用や収益性の面から見ても、そう簡単にできることではありません。

こうした点を考えると、テナントに対して、きちんとした情報開示をする所有者は少ないかもしれません。ですが、除去しなければならない時は、いつか必ずやって来るのです。

正しい情報開示が問われる時代

現状において、ビルや工場の所有者にしてみれば、建築基準法で耐火被覆が求められたからアスベストを使ったのであって、自分も被害者であるという認識が、正直なところではないでしょうか。その意味で、一部では国やメーカーに対して、損害賠償なり補助金を求めようという動きも出てきています。

また、石綿則を含めた規制は、現在のところ厚生労働省によるものですが、今後、経済産業省や国土交通省から新たな規制がかかることも十分考えられます。現在、建材で認められている1%の含有率が0.1%に規制されれば、いま安全とされているものもすべて危険となるのです。

今後の不動産流動化を促進する意味で言えることは、繰り返しになりますが、所有する不動産について、建材を含めてどれだけアスベストが存在しているかをきちんと把握して、情報開示を求められたら正確に答えられるような資料を用意しておくことが絶対に必要だということです。

仮にアスベストがあっても、定期的に空気中の浮遊粉塵濃度測定を行い、現状の安全性を説明できることは重要です。また、以前はあったがすでに除去したことを伝えれば、積極的な情報開示として、市場で評価されることも考えられます。

いずれにしても、アスベストに関する調査と情報の開示は、今後の不動産取引に大きな影響を与えることは間違いありません。

これを推進するためにも、除去や調査の費用について、税制優遇や助成金などの政策が採られることが望まれるところです。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2005年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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