050-5447-7862

平日 9:00〜17:30

物件を探す

事業用不動産のあらゆるニーズを網羅するサービスと豊富な実績で、お客様の課題を解決する最適なソリューションをご提案いたします。

お役立ち情報

CBREが手掛けた、さまざまな業種・規模の移転事例のご紹介を始め、オフィスや物流拠点の移転に役立つ資料・情報をご提供しています。

マーケット情報

独自収集したデータを元に、不動産マーケットの市況を分析予測し、市場変化をいち早く捉え、ポイントをまとめた市場レポートを配信しています。
また、物件レポート、業界トレンド情報など、事業用不動産の最新情報、トレンドを配信しています。

CBREについて

事業用不動産の分野において、世界有数の企業であるCBRE。日本国内におけるその強み、拠点、会社概要をご紹介します。

ヘルプ

物件検索の使い方や、会員サービス、よくあるご質問など、当サイトをより便利にご利用いただくための情報をご紹介します。

仲介業者様はこちら

賃貸オフィス・事務所の記事

不動産市場は回復したのか?

不動産市場は回復したのか?

麗澤大学国際経済学部 助教授
ミレア・リアルエステイトリスク・マネジメント株式会社 シニア・アドバイザー
清水 千弘

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

1. 不動産市場の回復とは?

最近の不動産市場は、都心部における不動産価格の反転を受けて本格的な回復基調にあり、部分的にはミニバブルではないかという指摘がなされている。それでは、不動産市場の回復とはどのようなことを意味するものであるのか。また、この地価の反転上昇から、市場の回復と考えていいのであろうか。

理論的には、不動産価格は将来収益の割引現在価値として決定される。そのため、不動産価格の上昇は、将来収益の純収益の見通しに対する「期待」が強くなってきているのか、あるいは不動産のリスクプレミアムが低下し、割引率が低下してきているのか、またはその両者の作用によって実現されているのか、といった類型に整理される。

例えば、現在のオフィス市場に限定して市場を観察してみると、必ずしもオフィス市場の純収益が改善されているという状況ではなく、依然として横ばいまたは下落基調にある(例えば、IPD Japan2004による)。先の整理に従えば、現在の不動産価格の上昇は、割引率の低下に基づくものであることが分かる。現在の不動産市場が過熱しているかどうかといった議論は、その割引率が適正かどうかといったことと同義になるが、そもそも適切な割引率がいくつであるかといったことについては、明確な目線は存在していないのではないか。つまり、資産価格とは、その市場に参加するものの、それぞれのリスクに対する姿勢や資金の性格によって投資利回りが変化するものであり、その結果、それぞれの市場参加者ごとに価格が異なるものである。そうすると、現在の不動産市場は、総じて高いリスク量がとれる資金と投資家が増加してきていると言えるが、それをもって不動産市場が回復したと判断することは早計であろう。

経済理論的には、また政策論的には、最適な市場とは、資源配分が適切な状態にあり、そこで形成される「合理的な」期待に基づき価格形成が実現している市場と定義してもよいであろう。優先されるべきことは、価格という尺度よりも、土地利用が効率的であるかどうかという尺度になる。

特に、わが国の都市部における土地利用は、1980年代半ばから発生した、いわゆるバブル期とその崩壊過程を通じて、大きく混乱してしまった。開発途中において頓挫した虫食い地等の低未利用地が大量に発生し、また、多くの住宅地がオフィスへと転用されたものの、その多くの部分が非稼働資産として市場に放置されてしまった。近年では、その解消のために、都市再生事業に代表される様々な施策が講じられてきた。もし、不動産市場が本格的に回復したというのであれば、そのような資源配分の歪みが解消されているかどうかという尺度で判断すべきである。

2. 都心部オフィス市場の非効率性

そこで、東京23区のオフィス市場の非効率性を測定した事例を紹介したい。もし、市場が効率的で、不動産の所有者が合理的な期待に基づき行動するものと想定した場合、より収益が高い用途へと転換していくことが予想される。ここでは、事務所の用途を基本として、住宅へと転用した場合の収益の格差に着目する。ここで、住宅の用途に転用したほうがより高い収益を獲得できるのであれば、いわゆるレントギャップが存在している状況となり、事務所としての利用を継続することは社会的には非効率な状態を継続していると定義する。測定の方法としては、事務所・住宅それぞれについての付け値曲線をヘドニック関数により推定することで求めた(ヘドニック関数の詳細は、清水千弘著『不動産市場分析』(2004)参照)。

推計された付け値曲線を、次のような指標によって、東京都区部内に存在する6万棟弱のビルに関して推計した。

(数式1)

Rent Gapit>1の時には、事務所市場では事務所賃料よりも住宅賃料のほうが上回り、非効率性が存在していることになる。また、東京都区部の非効率性のコストを(数式2)次のように測定する。

(数式2)

推定結果を、「レントギャップの空間分布」の図に整理した。

東京都区部の事務所ビル市場の非効率性を、事務所ビルとして獲得できる収益と、住宅系用途に転換した場合に獲得できる収益格差として比較した場合、平成13年時点のストックである事務所ビル58,017棟のうち18.4%に相応する10,931棟の事務所ビルで、現在の用途に対応した事務所賃料よりも住宅系用途に転換したほうが高い収益を獲得できることが分かった(Rent Gapit>1)。また、地域的な特性を見てみると、 いわゆるバブル期に、積極的に住宅系用途から事務所系用途に用途転換をした土地が多い地域である目黒区・世田谷区・杉並区・板橋区・江戸川区において、超過ビルが30%を超えている。このことから、バブル期において発生した土地利用の非効率性が、依然として解消されていないことが分かる。

このような非効率性を解消していくため、都市再生事業やコンバージョン等の政策が実施・推進されているが、依然として非効率性を残しており、より強力な施策を投入していくことが重要であると言えよう。

3. 不動産市場は回復したのか〈結びにかえて〉

以上の一連の整理に基づき、現在の不動産市況を観察すると、次のような現状が浮き彫りになる。

不動産市場は効率的か?

前節での分析が示すように、都心部におけるオフィス市場は、非稼働資産が多く残存しており、依然として大きな非効率性を残している。

さらに、今後、オフィスワーカー数(需要)が持続的に減少するとともに、大量の大型のオフィスビルの供給が計画されていることから、この状況が市場メカニズムだけで解消していくことは、ますます厳しくなっていくものと考えられる。今後、新しい都市としてのグランドデザインを描きながら、長期的な視野のもとで都市の更新・管理を進めていくことがより重要になる。

価格の反転は何を意味するのか?

また、近年における市場の反転という現象は、特定のエリアとプロパティタイプに限定されたものである。さらには、市場が反転したと報道される根拠となっている公示地価等の鑑定評価額は、最有効使用を想定したものであり、利用が効率的であることを前提としている。それだけではなく、もっとも有効利用した場合を想定した架空の市場の中で決定される価格である。その意味では、そのような指標をもって本当に価格が反転したかどうかという判断は難しい。

現在の不動産市場は効率的な土地利用を実現できるのか?

不動産投資は、本来、長期的な視野のもとで実施されるべきものである。しかしながら、近年における投資資金の性格を見ると、短期の絶対収益だけを追求する資金が大量に流入してきている。その意味では過熱気味であり、その結果、さらに資源配分にひずみを与えてしまう可能性が高い。

加えて、短期転売が増加してきているために、土地利用の混乱を増幅させる可能性が危惧される。

不動産市場の本格的な回復には、まだまだ多くの時間と資源の投入が必要になるものと考えている。

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

上記内容は オフィスジャパン誌 2005年冬季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

記事を探す

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。
ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は右記のフォームからお問い合わせください。

物件相談フォーム