常識を覆す施策で投資のハードルを下げる!「投資を、あなたの日常に。」をコンセプトに、テクノロジーとリアルな体験を融合させた店舗づくり。
moomoo証券ストア 表参道
moomoo証券株式会社
「貯蓄から投資へ」の流れが加速する今、2022年の日本法人設立以来、急速に存在感を高めているのがmoomoo証券(ムームー証券)だ。シリコンバレー発の投資アプリ「moomoo」は、香港やシンガポールで圧倒的なシェアを誇っているが、ネット証券ながら、あえて実店舗をという逆転の発想で、日本では東京・表参道に初の旗艦店をオープンさせた。デジタルが強みの同社が、なぜリアルな場を求めたのか。その戦略を、同社CMOチョウ キョ氏に訊いた。
シリコンバレー発の技術で「金融の民主化」を目指す
2025年10月、東京・表参道に株式投資を体験できる常設店舗「moomoo証券ストア 表参道」がオープンした。口座開設やアプリ操作の無料サポートを受けられるほか、著名アナリストや個人投資家を招いたセミナーが定期的に開催されるmoomoo Academy」の拠点でもある。立地は青山通りに面したビルの1階で、元はダイソンの旗艦店が入居していた場所である。「『まさかこんな場所に証券会社の店舗ができるなんて』と皆さんおっしゃいます。その驚きや意外性も狙い通りです」と話すのは、moomoo証券マーケティング部 CMO・チョウ キョ氏である。
moomoo証券は、シンガポール、カナダ、オーストラリア、マレーシア、米国などを含む8つの市場で事業展開する香港Futuグループのネット証券会社だ。2018年に米国シリコンバレーで誕生した投資アプリ「moomoo」は、世界で2800万人が利用し、特に香港では成人の半数が利用するほどの圧倒的なシェアを誇る。日本では2022年にサービスを開始し、これまでに200万ダウンロードを突破した。「金融の民主化」を経営理念に掲げており、「個人投資家でもプロと同じ水準の情報やツールに無料でアクセスできる金融世界を目指しています」とチョウ氏は話す。
同社の強みは、プロダクトを自社開発できるフィンテック企業としての技術力である。ユーザーの声を即座にプロダクト開発に反映するのみならず、決算情報のリアルタイムAI字幕翻訳や、機関投資家の動向分析など、アプリ一つですべての投資体験が完結する仕組みを構築している。さらに、日本では珍しい「投資家コミュニティ」機能をアプリ内に実装し、ユーザー同士が交流し、ともに学べる場を提供することで、金融リテラシーの向上にも寄与している。
ネット証券が表参道に出店した理由
アプリの利便性を強みとする同社が、なぜコストのかかるリアル店舗を出したのか。その最大の狙いは「信頼性の獲得」にある。「海外ブランドであることや、ネット専業であることから、『本当に実体があるのか『』オフィスはあるのか』という不安を持つお客様もいらっしゃいます。オフラインのタッチポイントをつくることで、顔が見えない怖さを払拭し、安心感と信頼につなげたいと考えました」(チョウ氏)。実際、過去に開催した大規模なオフラインイベントでは、社員と直接会ったユーザーの反応が好転する実感があったという。
もう一つの目的が、「サービス拠点」としての役割だ。「年配の投資家の方々には、アプリの使い方や口座開設の方法がわからないという方もいらっしゃいます。ネットでは解決しにくい不安を対面でサポートすることで、moomoo証券での投資につなげるという狙いもあります」。実店舗展開はグループのグローバル戦略でもあり、香港をはじめ各地での成功事例も背景にあるという。
日本での店舗出店プロジェクトが動き出したのは2025年初頭。まず着手したのが立地選定だった。重視したのは、1号店としての話題性とブランディング効果である。第一候補だった銀座では条件に合う物件が見つからず、新宿の物件と比較検討した結果、プレミアム感など総合的に判断して表参道に決まった。金融機関の店舗としては珍しい立地と言えるが、チョウ氏は「渋谷にオフィスのあるフィンテック企業として、伝統的な金融機関の多いエリアは考えませんでした。逆に、意外な場所にあることでのインパクトを狙いました」と話す。
物件は交差点に面し、人通りが多く視認性が高い路面店で、広さは約90坪。「交通アクセスがよく、渋谷にお勤めの方も仕事帰りに立ち寄りやすい。20~30人規模のセミナーを行うのにも適度な広さです」とチョウ氏。ちなみに立地条件は国によって異なるようだ。暑い気候のシンガポールやマレーシアでは、人々が日中過ごすことの多いショッピングモール内に出店し、それ以外のエリアでは人通りの多い路面店が主流だという。
全面ガラス張りで投資の世界を「見える化」
店舗デザインに深く関係する「全面ガラス張りのファサード」も、物件選定の決め手となった。「投資を、あなたの日常に。」というコンセプトを具現化するには、ガラス張りで外からよく見えることが不可欠だったからだ。「インフレの時代、投資の重要性を認識しながらも、証券会社に入りにくいと感じている人は多いはずです。従来の証券会社のように中が見えない空間ではなく、外から中の様子がわかることで、入りづらさを解消したいと考えました。表参道はショッピングや仕事帰りに立ち寄る場所だからこそ、それらのついでに気軽に投資に触れて、投資を身近に感じていただきたいと思っています」。
店舗づくりでは、外から中が見えるだけでなく、あえて見せるような工夫も施している。セミナーで使用する100インチの大型モニターや、リアルタイムの株価チャートを映し出す6面スクリーンは、外からも視認できるよう配置。「モニターからセミナーの内容が外からでもわかるので、立ち止まって見ている人が結構いらっしゃいます。何回か見ているうちに、実際に店内に入ってきてくださいます」。店外には4メートルの大型LEDスクリーンを設置し、セミナー情報や注目セクターなどに合わせ、moomooブランドを表現するブランドコンセプトムービーなどを常時発信、そして投影している。
物件の契約が2025年6月。同年10月オープンという短期間での出店には難しさもあったという。「日本国内での店舗出店は初めての経験なので、B工事やC工事といった専門用語もわからないところからのスタートでした。細かいスケジュール調整や予算調整など大変なことは色々ありましたが、特注品の空調設備の納期が最大の懸念で、間に合うかどうか最後まで気が抜けませんでした」とチョウ氏は振り返る。プロジェクトマネジメントは外部に委託し、社内外で密に連携しながら進行した結果、タイトなスケジュールの中でも予定通りオープンにこぎ着けた。
金融リテラシーの向上をブランドの社会的役割に
店舗運営においても、従来の対面証券とは一線を画している。ここでの目的は金融商品の販売ではなく、あくまでメインは投資を身近に感じ、最初の一歩を踏み出してもらうための「体験」と「学習」の場としての位置づけだ。オープン以来、週2~3回の初心者向けセミナーや、ライブ配信、相場クイズ、アンケートに答えると500円分の株が当たるキャンペーンなど、ユニークな取り組みを行っている。人気インフルエンサーによるセミナーは特に盛況で、90人もの集客があったという。
そして、その店舗運営を支えるのは、金融の専門性とイベント運営力を併せ持つ少数精鋭のチームだ。「金融業界出身者もいれば、アップルストアで働いていたメンバーもいて、非常に良いチームで運営できています」とチョウ氏。最近では、「このスタッフに対応してほしい」という指名が増えていて、店舗での体験やスタッフとの対話を通して、ブランドへの信頼やロイヤリティが醸成されている手応えも感じているようだ。
今後の出店については、現時点で明確な数値目標は設けていないという。客数だけでなく、ブランド効果や信頼性、サービス拠点としての機能など、複数の指標を総合的 に判断していく考えだ。「moomoo Academyに象徴されるように、日本人の金融リテラシーの向上を、 moomooブランドとして、社会的な役割として担っていきたい。店舗はその思想をリアルに体現する場であり、またそれによって、日本の他の証券会社との差別化を図っていけると考えています」と語る。日本におけるこの第1号店は、単なるショールームにとどまらず、デジタルとリアルを融合させ、顧客とともに成長していくための戦略的な拠点となるだろう。フィンテック企業による店舗出店の新たなケースとして、今後も注目を集めそうだ。
プロジェクト概要
| 企業名 | moomoo証券株式会社 |
|---|---|
| 施設名 | moomoo証券ストア 表参道 |
| 所在地 | 東京都港区北青山3丁目11−7 Aoビル1階 |
| 営業時間 | 平日 10:00~21:00 土日祝 10:00~19:00 年中無休(ビル休館日の年末年始は休業) |
| アクセス | 東京メトロ表参道駅B2出口徒歩1分 |
| オープン | 2025年10月28日 |
| CBRE業務 | 施設賃貸借仲介業務 |








