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進化する日本のM&A市場

進化する日本のM&A市場 企業の資産リストラも促進

GCA株式会社
代表取締役 渡辺 章博

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欧米型に移行する日本のM&A

昨今の日本のM&Aについていえることは、欧米型に年々近づきつつあるということです。上場企業の合併を例にとれば、以前は基本合意から合併期日まで、1年以上の長きに渡っていたものが、現在では6月の定期株主総会で承認され10月には合併するといったケースも見られ、そのスピードは欧米並みになってきています。M&Aの成否の鍵を握るといわれるインテグレーションについていえば、米国のコンサルティングファームの調査によると、成功のタイムリミットは3ヵ月以内とされており、その間に、必要な統合プロセスをすべて済ませることが鉄則となっています。時が経てば経つほど、従業員のモチベーション低下や、企業双方の文化の違いが浮き彫りになるなどの阻害要因は顕在化しますし、つまり、「鉄は熱いうちに打て」ということです。

このようなディールのスピードアップに加え、M&Aの効果に対する期待値も高まる一方といえます。1+1が2.5や3になるシナジー効果の発揮が重要で、2以下にしかならないのなら、行う意味がありません。そのため、基本合意の前の十分なデューデリジェンスや、合併効果の基本分析等、対象企業の価値を判断することが、今後ますます重要になってくるでしょう。

さらに、これまでの企業合併は、「事業を一緒にやりましょう」的な色彩が強く、条件が決まらぬまま基本合意だけが先行することさえありました。M&Aは、あくまで「買う」「売る」という行為なのですが、日本では売買というイメージが希薄であったといえます。

しかし、株主の側から見ると、M&Aはその購入額(もしくは売却額)を含め企業戦略そのものであり、企業価値判断の重要なファクターです。その点からいえば、公表時に買収価格や合併比率・統合比率が決まっていないケースが従来の国内案件では散見されましたが、米国であれば株主訴訟が起こっても不思議ではありません。この点でも、最近は買収価格もしくは合併・統合比率が決まってから公表するという欧米化が進んでいます。その意味では、統合比率の合意なしに公表されたUFJ銀行と東京三菱銀行の経営統合などは、いわば最後の日本的M&Aといえるのかもしれません。

不動産処分におけるM&Aの活用

企業の合併・買収を意味するM&Aですが、このところ、不動産を処分する手段として活用されるケースも増えてきています。例えば、所有する不動産子会社のリストラに際し、資産の個別売却よりも、事業体として売却した方が手続きも容易であり、税制的にもメリットがあるといったケースです。

また、M&Aに伴う不動産取引の内容にも変化があります。これまでは、不動産子会社を株式売却により処分する場合、例えば観光事業や遊休地といった不必要な事業や資産が付随するため、取引が成立しにくいといった一面がありました。しかし今日では、プライベートエクイティファンドなどの投資ファンドに代表される買い手の裾野が広がっているため、企業を買収した後、不動産事業と運営事業を分割管理し、各々専門性を有する企業と手を組み得意分野を受け持ち、新しいガバナンス構造の下で事業を発展させることができます。

買い手にすれば、市場が過熱し優良不動産の物件が入手しにくくなっている今、良質な物件を安く買うには、いろいろな質の資産や事業体をまとめて買う、いわば「バルク的な」買い方をせざるを得なくなりました。かつては、「バルクセール」といえば、不良債権や不動産の一括購入を指していたわけですが、この対象が"事業体"へと広がったというわけです。

単なる不動産取得とは違い、M&Aとして事業体を買収する場合、その買収価格は、資産から事業体に有する有利子負債や事業債務などを減じたネットの価格ですため、資産そのものの買収よりも、買い手のリスクマネーはより小額になります。また、買収後にきちんと経営改革を行い、マネジメント体制を整えれば、今まで収益を上げられなかった企業体質をプラスに改善することができるため、投資メリットはより大きくなります。このように、単なる不動産投資よりも、事業体への投資という形には、より大きな投資妙味があるといえます。

M&A活性化が資産リストラを後押し

このような不動産売却の手法として活用される以外にも、M&Aは企業の資産リストラを直接後押しするという効果を生み出しています。

企業の経営統合が行われた場合、その効果は、売り上げを増やすか、あるいはコスト削減で示すしかありません。一般に、後者のコストシナジーを出す方が容易とされており、効果的なリストラが図られれば市場からの評価も高くなります。例えばメーカーなら、生産拠点の統廃合を図り一つに集約することで、生産コストを下げるとともに残った跡地を売却するといったことが考えられるでしょう。

一方、今日のM&Aでは、経営統合のなかで、ノンコアビジネスの処理が進むようになりました。「選択と集中」の時代といわれる昨今、得意分野に経営資源を集中した方が企業価値は高まるとされていますが、経営者にとって、ノンコアであっても利益を得ている事業を手放す決断には、かなりの覚悟が必要です。

ところが、M&Aにより企業規模が大きくなれば、ノンコア事業が全体に占める収益割合が低下し、当該事業の売却に向けての社内外からの抵抗感は低くなります。したがって事業や付随する資産売却の意思決定もスムーズに行われることとなります。

資産処分の背景は株主重視経営

こうした不動産処理の背景にあるのは、冒頭に記した日本企業の欧米型への移行、つまり「株主重視の経営姿勢」への変化が挙げられます。

株主、つまり投資家は、数々の金融商品の中から投資先を選定する際、投資効率を重視します。「株式」についても、評価の基準が変わりつつあり、従来は対象企業の売上高や利益率を基準に評価していましたが、最近はROE、つまりどのような資産がどれだけの利益を生んだのかという、資産効率が重視されるようになりました。

このような状況下、「自分たちも投資の対象になっている」という意識を明確にイメージする経営者は、ROEの分母である資産をいかに小さくするかに苦心するはずです。例えば、欧米では、トップが替わると当然のようにバランスシート(BS)のクリーンアップが行われ、資産が次々と償却されていきます。1期目は確かに赤字覚悟ですが、2期目以降は投資効率の高いBSになるため株価アップが期待できます。事実、市場ではそのような現象が起こっています。

この点についていえば、これまでの日本の事情はまったく逆です。先人からの遺産はなるべくそのままの状態で継承し、それがマイナスの遺産なら、その処理を先送りする傾向が強く残っています。現在、BSが膨れ上がっている企業の多くは、このような経営マインドが大きく影響していたといえるでしょう。

一方、資産圧縮のため不動産を売却し、BSが改善された企業には、資金が流れ、株価が上がるという図式ができてきています。蓄えたキャッシュを本業に投資する、あるいは株主に還元すれば、さらに株価は上がるはずなのです。日本企業の株価は、その実力に比較して相対的に安いといわれていますが、これは、企業が事業売却により手にしたキャッシュをどう使うかという次のシナリオが、市場(株価の動き)から見えてこないことも一因ではないでしょうか。

余剰資産の保有は危険信号

もう一つ特徴的なことは、現在キャッシュを蓄えた企業の経営者の多くが、その使い途として考えている戦略もまたM&Aだということです。M&Aは企業成長に即効性を発揮するものですから、キャッシュを有する企業の10社に8社は、この戦略を語るといってもいいでしょう。ただし逆の見方をすれば、この状況は常に敵対的買収のターゲットになりうる可能性もあるということです。

我々がM&Aのディールを進めていく時、まず対象企業のBSを分析するのですが、コアビジネスとは無関係な不動産や余剰キャッシュ、投資有価証券等を過剰に抱える企業がいかに多いかによく驚かされます。こうした効率の低い資産を多く抱える企業は、コアビジネスの業績も悪く株価は低水準という傾向があります。極端な話、買収後、資産売却だけで投下資金が回収できるような企業も存在しているのです。このような企業は、買収ターゲットになるのは避けられません。また、それに至らない場合でも、当然、株主から増配要求を受けることになります。その際、効率の低い資産を抱えるだけで現金を保有していない場合は、資産を売却して対応するしかありません。昨年から今年にかけて、敵対的買収をかけられて増配に応じた会社の事例がいくつかありましたが、今後、こうした事例はますます増加するのではないでしょうか。

株主価値の最大化が企業経営の基本

M&Aの進展とそれに連動する不動産売却は、今後さらに加速すると思われます。そのなかで経営者が注意すべきポイントは、常に株主価値の最大化を考えるということです。

本来、経営とは、株価や時価総額ではなく、企業価値を高めるために行うはずのもの。したがって、現在の企業価値を考え、さらに、仮に経営者の任期が5年なら、5年後にその価値がどうなっているかという、ターミナルバリューの増大を志向することが重要です。

その手段として、ROE向上のためBSのスリム化を目指すのであっても、対処療法的に行うだけでは、資産価値の低下を招く一方です。単に資産を切り離せばいいというものではなく、その価値とタイミングを正しく捉え、最も有効な売り方を工夫することが求められます。そのためには、複数の買い手から買収の提案を受け、ビットプロセスも検討すべきでしょう。また、売却して得た資金も有効活用しなければなりません。キャッシュを抱えたままであれば、また買収のターゲットにもなりかねないからです。

手にした資金で企業を買収する場合は、買収する企業の無形資産の価値に留意する必要があります。日本でも欧米にならい、最近ではM&Aの会計処理方式としてパーチェス会計が導入されることになり、ブランド力やソフトの価値、統合的労働力といった人のノウハウなどの無形資産を評価してBSに載せるようになりました。このように無形資産が表象化されるということは、不動産を持たずとも企業の本当の価値が示されるわけです。

米国企業の時価総額が全般的に高いのは、M&Aを繰り返すことで企業価値が常に見直され、無形資産が表象化し、株式市場に評価されているからだといえるでしょう。無形資産が計上されるメリットは資金調達面にもあります。M&Aが盛んになれば、日本企業のBSも、米国企業のように無形資産が有形資産よりも大きな金額を占めるようになります。そして日本の金融機関が無形資産を重視するようになれば、担保資産として日本企業が不動産にしがみつく必要がなくなり、資産リストラも加速すると思われます。このように、日本におけるM&Aの活性化が、今後、融資や企業の行動にドラスティックな変化をもたらすものと考えられます。加えて、M&A取引に係る資金に対して、金融機関が無形資産を担保に融資を行うようになれば、さらにM&Aは活性化するでしょう。そして、それが資産リストラの一環として行われる不動産売却も加速させるという、好循環が生まれる可能性があります。

このように、今後日本におけるM&Aの活性化は、不動産市場の拡大に非常に大きく貢献することが期待できるでしょう。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2005年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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