株式会社アズーム
営業本部長
高橋 祐二氏
ビジネス利用の利便性に優れたビル附置自走式駐車場
営業車両を保有する企業や営業所が都市部のオフィスビルへ入居・移転する際、入居ビルやその近隣で駐車場を確保できるかどうかは重要な問題です。一般的に駐車場の賃料や利便性等の条件は、オフィスの立地や賃料等の条件に比べてそれほど重要視されない傾向にありますが、駐車場の賃料も毎月発生するランニングコストであり、また毎日使う駐車場の利便性は日々の業務効率にも大きく影響します。
企業にとって最も利便性が高いのは、入居ビルの附置駐車場を借りることでしょう。建物の地下に設置された機械式駐車場や自走式駐車場が一般的ですが、何といっても駐車場にすぐアクセスできるのが利点です。地下なら雨風にさらされることなくスムーズに駐車場にアクセスできますし、野ざらしの屋外駐車場と違って雨風による車の汚れも少ないため、車両洗浄の手間も省けるメリットがあります。特に、営業車両での搬入や搬出を伴う場合や車両の緊急発車を要する場合は、入居ビルの附置駐車場を借りるのが企業活動の機動力を高める上で望ましいといえるでしょう。なかでも緊急性の高い警備会社等は、災害時や停電時にもすぐに出庫できるよう、ビルインタイプに限らず自走式駐車場を条件に駐車場を探すケースがほとんどです。
BCP対応や待ち時間回避のため駐車場を分散させる傾向に
近年は、入居ビルの附置駐車場を借りながら、近隣の外部貸し駐車場も借りるなど、あえて複数の駐車場を分散して借りる企業が増えています。
理由の1つは、リスク分散です。特に機械式駐車場の場合、機械の不具合や急なメンテナンス、停電、地震等の天変地異があった際に使用できなくなるリスクがあるため、駐車場を何ヶ所かに分けて借りておくことが有効だと考えられています。東日本大震災以降、都内ではその傾向が特に強く見られ、その後、各地でも見られるようになりました。
もう1つの理由として、分散して借りることで利便性の面でもメリットを得られるケースがあります。例えば、保有する車両台数が多く、使用する時間帯が重なる上に出入庫の頻度が高い場合、駐車場が1ヶ所に集約されていることで入出庫の待ち時間が増え、逆に利便性が悪くなることがあります。駐車場を借りる際に、出入庫の待ち時間まで考える企業は少ないようですが、特に機械式駐車場で出入口が1ヶ所しかない場合は、出入庫の待ち時間が企業活動に影響を与えるデメリットも考慮すべきでしょう。1ヶ所集中によるロスを避けるために、営業対象エリアに対してアクセスしやすい幹線道路沿いに出入庫口のある駐車場を複数確保することで、営業効率を上げることができます。
移転前の早期からの情報収集が最適な駐車場探しのコツ
そうはいっても、「入居ビルの近隣で外部貸し駐車場を探すのは難しい」という声もよく聞きます。オフィスへの入居や移転と同時に近隣で駐車場を確保できるのが理想的ですが、それが難しいのは、駐車場の空きは周辺ビルのテナント企業の業種や転出のタイミングにも大きく左右されるからです。逆にいえば、周辺のテナント企業の入れ換わりのタイミングで、外部貸し駐車場に大量の空きが生まれたり、あるいはテナント企業向けの駐車場が外部に貸し出されたりします。そのタイミングが狙い目といえます。
例えば、古くから地場企業の営業拠点である東京・中央区などは駐車場の回転率は低いのですが、反対にベンチャー企業の入れ換わりが激しい渋谷区などは、駐車場の回転率も高い傾向にあります。そこで、入れ換わりのタイミングをうまく捉えるには、移転の直前だけでなく、移転前の早い段階からアンテナを張り、周辺の駐車場情報の収集に努めることがポイントです。月極駐車場は翌月から契約が発生するため、半年先のスペースを予約することはできませんが、仮に移転の数ヶ月前から駐車場を契約したとしても、長期的に見ればその方が確実に駐車場を確保でき、コスト面や利便性の面で有利になるケースもあるでしょう。
外部貸し駐車場を探すのが難しいもう1つの理由は、近隣ビルの附置駐車場に募集の看板が出ているケースがほとんどないため、月極駐車場がどこにあるのか分からないということです。ただし、募集の看板が出ていないからといって、外部貸しがないわけではありません。ビル附置駐車場の空き車室は、サブリース(賃料を保証した一括借り上げ)に出されていることが多く、我々のような駐車場検索・仲介サービス会社に情報が集まってきます。外部貸し駐車場を効率的に探すには、我々のような専門家をうまく活用していただくのが有効な方法といえるでしょう。
定期的な条件の見直しで戦略的な駐車場活用を
移転時のみならず、駐車場を借りた後も、定期的に駐車場の賃貸条件を見直すことをお勧めします。入居ビルの附置駐車場だけでなく、外部貸し駐車場も選択肢の1つとして考え、近隣での空き状況を日頃からチェックしておくとよいでしょう。隣のオフィスビルの附置駐車場に借り換えるだけで、駐車場コストを大幅に抑えられる可能性もあります。現状よりもコスト削減や利便性の向上が期待できる駐車場を見つけたら、まずは1台からでも契約を開始し、その駐車場の空き情報をとらえつつ台数を増やしていくという方法が堅実なやり方です。
駐車場の借り換えを検討するタイミングとしては、車両増車が1つのチャンスです。例えば車両を5台増やす場合、すでに保有の5台と合わせて10台分の駐車場をまとめて借りれば、スケールメリットによるコスト削減が可能な場合があります。
車両の選定も、駐車場コストを考える上で重要なポイントとなってきます。単価や維持コストが安いことから軽自動車を導入されるケースが見受けられますが、車格が小さいからと車高が高い車種を選んでしまうと機械式駐車場に入庫できず、必然的に高額な自走式駐車場を確保する必要が出てきます。また、車種は同じでもモデルチェンジで車高や車幅が長くなったり、ハイブリッドカーに換えたことで重量が増え、機械式駐車場が使えなくなったというケースもよく聞かれます。自走式駐車場は、通常、機械式駐車場に比べて月額賃料が1.5倍以上高く設定されています。駐車場コストを重視するなら、新規車両の購入やリースの借り換えの際には、十分な注意が必要です。
駐車場の賃料は毎月発生するランニングコストであるにもかかわらず、あまり重要視していない企業が多いように見受けられます。その理由は、月々の賃料がオフィス賃料に比べて安価であることや、営業車両を利用する人(営業担当者)と、コスト管理を徹底する人(総務担当者など)のコミュニケーションが取れていないことが考えられます。月々の賃料がそれほど高価でないため後回しになりがちですが、台数や立地によっては大きなコストとなる場合もあり、軽んじることのできない要素です。
簡単に借り換えできる点が駐車場の最大の特徴であり、原状回復や大がかりな引っ越し作業も必要ありません。そのため、一度確保して終わりではなく、近隣駐車場の相場や空き状況を見ながら、積極的な借り換えや分散を行うことで、戦略的な活用が可能です。ビル附置駐車場を借りる場合、まれに駐車場の賃料がフロア賃料に含まれている物件が見られますが、入居時の交渉で分けておいた方が、その後の柔軟な駐車場活用がしやすいと思います。
最近では、コインパーキングの平日定期契約や、法人用のカーシェアリングも非常に盛んになってきており、営業車や駐車場の使い方にも多様性が生まれています。企業によって営業車両に求める優先順位は異なるため、駐車場はその運用面の柔軟性を活かし、その時々において最も適した形を選択されることをお勧めします。