050-5447-7862

平日 9:00〜17:30

物件を探す

事業用不動産のあらゆるニーズを網羅するサービスと豊富な実績で、お客様の課題を解決する最適なソリューションをご提案いたします。

お役立ち情報

CBREが手掛けた、さまざまな業種・規模の移転事例のご紹介を始め、オフィスや物流拠点の移転に役立つ資料・情報をご提供しています。

マーケット情報

独自収集したデータを元に、不動産マーケットの市況を分析予測し、市場変化をいち早く捉え、ポイントをまとめた市場レポートを配信しています。
また、物件レポート、業界トレンド情報など、事業用不動産の最新情報、トレンドを配信しています。

CBREについて

事業用不動産の分野において、世界有数の企業であるCBRE。日本国内におけるその強み、拠点、会社概要をご紹介します。

ヘルプ

物件検索の使い方や、会員サービス、よくあるご質問など、当サイトをより便利にご利用いただくための情報をご紹介します。

オーナー様はこちら
仲介業者様はこちら

賃貸オフィス・事務所の記事

震災時にワーカーの生命を守るオフィスの具体策

株式会社岡村製作所
デザイン本部営業設計部 次長島 行男

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

阪神・淡路大震災以降家具の耐震性は強化

我が国においてオフィスにおける地震対策を考えるきかっけになったのが、今から33年前の宮城県沖地震(1978年)です。それ以前は地震対策の意識は薄く、恥ずかしながら什器メーカーである当社でさえ、かなり無頓着な状態でした。当時の被害状況としては、収納家具の引き出しが飛び出し収納物が散乱したり、それによって家具が転倒するなどの被害が特に目立ちました。これは、当時の収納の把手に、引き出しが勝手に開かないようにするためのラッチがついていなかったことが原因。もちろん、それ以外の被害についても対策研究が進められ、さらに16年前の阪神・淡路大震災をきっかけに、オフィス家具の耐震性は格段に強化されてきました。

今回の東日本大震災でも、オフィス内で多くの被害が発生しました。顕著に見られたのが天井が落下した事例です。最近のオフィスビルの天井は、ほとんどが非構造部材であるシステム天井ですが、このシステム天井に固定しただけの家具やパーティションが地震により転倒。それに伴って天井が落下するケースも散見されました。また、家具の耐震性は阪神・淡路大震災後に強化されたものの、それ以前の古い家具を使用していたため被害が発生したり、壁や床に固定した金具が地震の力でもぎとられて家具が移動したケースもありました。

剛構造のオフィスビルでは上層階ほど被害が大きい

ここで、地震が起きると室内の家具にどのような影響を及ぼすのかを簡単に説明しておきます。地震時の揺れは、建物の高さと構造でかなり異なります。一般的な剛構造のオフィスビルは、耐震構造が採用されており、地表での揺れは上に行くほど激しくなります。つまり、上層階ほど被害が大きくなるということです。例えば、13階建の鉄骨鉄筋コンクリート造のビルでは、最上階では地表に比べて地震波の加速度が4〜5倍に増幅されるというシミュレーション結果が出ています。一方で、制振構造が採用されている柔構造の高層ビルは、ビル全体で地震を受け止めるため、ゆらゆらと蛇行するような揺れ方になります。地震波の加速度は大きく増幅しませんが、振幅時間が長いのが特徴。こういったビルでは、コピー機や金庫などキャスター付の家具・備品は、アジャスター等で固定しておかないと床の上を滑り続けることになるでしょう。そして、最も揺れと被害が少ないのが、地震エネルギーの侵入自体を低減させる免震構造の建物といえます。

地震によって家具がどのような被害を受けるかをまとめると、次のようになります。まずグラグラと細かく振動するロッキング現象が起き、座りの悪い家具や背の高い家具は転倒し、積み重ね式家具のうち連結していない家具は落下します。また、家具が横に移動したり、引き出しが飛び出て転倒したり、収納物が落下するなどの被害が起きます。こうした被害の特徴を理解して、被害を少なくする対策を考えておく必要があります。

人への被害を最小限にするレイアウトの見直しが先決

リスクに強い拠点づくり:オフィスレイアウトの点検・見直し

 オフィスの地震対策のポイントは、次の4つ。①レイアウトの見直しによる危険性の回避、②耐震免震機能付家具の採用、③家具・備品類の正しい固定と点検、④日頃の運用管理です。オフィスの地震対策というと多くの企業は家具を固定しようとしますが、最初にこれにとりかかるのは誤った考え方です。家具の固定は、想定以上の地震力が加われば転倒するものと考え、まずは家具が倒れても、人への危害を最小限に抑えられるレイアウトへの見直しから始めるのが基本だと言えます。

レイアウトで注意すべきことは、家具の転倒や移動によって避難路をふさがないこと、また働く人の安全性を確保することです。具体的には、a)出入口付近に転倒、移動する恐れのある家具は置かない、b)袋小路のような通路は作らない、c)執務エリアに背の高い家具は置かない、d)ローパーティションは倒れにくい形に配置する、e)メイン通路は1.2m以上確保する、f)部屋の中間に1列に背の高い収納家具を設置しない、などが挙げられます。どうしても背の高い家具を設置する必要がある場合は、打ち合わせスペースの脇に設置します。打ち合わせスペースは常時使用されるわけではないため、仮に家具が倒れても人への被害を最小限に抑えることができるでしょう。また、パーティションは、3連ごとに直角に補助パネルを設置することがPL法上でも決められていますが、これも守られていないケースが目立ちます

地震対策の2つ目が、家具の買い替えです。特にオープン書庫を使用している場合、たとえ床や壁への固定によって転倒を免れたとしても、収納物が飛散して死傷事故につながる恐れがあります。また、ラッチ機構のない家具は引き出しや扉が勝手に開き収納物が外に飛び出し、家具は転倒します。ラッチ機構やセーフティロック機能(引き出しが2段同時に出ない機構)が付いているもの、底板が開いて床固定できるものなど、耐震免震機能付の家具を採用することを強くお勧めします。

3つ目に家具の固定です。どれくらいの強度で固定すればいいのかについては、今回の震災後にもたくさんの問い合わせがありました。実は、家具そのものには耐震基準がないため、固定強度の算出には、日本建築学会が定める非構造部材の耐震設計指針「水平震度1.0G(=980gal)、垂直震度0.5G(=490gal)に耐える程度」を目安にしています。阪神・淡路大震災の際に神戸海洋気象台で観測された最大加速度が818galですから、1Gはそれよりも若干大きいということになります。つまり家具には、1Gの加速度にも転倒しないくらいの固定強度が必要だということです。

すぐにできる固定対策としては、家具同士を背中合わせに設置し、2つの家具の上部を「頭つなぎ」で固定する方法が挙げられます。家具は奥行きがあるほど転倒しにくくなるので、背中合わせにするだけで、何も対策を施さない場合に比べて2倍の安全性が得られます。実際にどの程度の加速度まで耐えられるかを計算すると、高さ2,100H、奥行き450D、質量380kgの家具を背中合わせにして設置した場合、家具は420gal(震度5強に相当)で転倒します。つまり、震度5強までは耐えられる計算ですが、非構造部材の耐震設計指針である水平震度1G(=980gal)をクリアしていないため十分とは言えません。仮にオフィスが11階なら、地表面が震度5強なら、11階では震度6弱程度の加速度になるかもしれません。

家具の転倒を防ぐには、壁や床、天井に家具を固定します。壁固定は、一般的に床固定よりもはるかに少ない力で固定できますが、壁固定が効果を発揮するのはコンクリート壁だけです。オフィスビルに使用されている壁は、軽量鉄骨下地のプラスターボードやスチール製間仕切壁がほとんどなので、これらにアンカーやボルト類で固定しても効果がありません。同様に天井への突っ張りも、乗っているだけのシステム天井に行っても何の意味もなく、効果があるのは梁下だけです。

残る方法が床固定です。これも、OAフロアに固定しても効果がないのは明らかで、下のスラブまで貫通させて固定する必要があります。必要な固定強度を計算すると、前出と同じ高さ2,100H、奥行き450D、質量380kgの家具で約1t。前後2ヵ所ずつ固定するなら、1ヵ所につき500kg以上の固定力が必要になります。床に使う直径10mmのアンカーボルトの強度が732kgなので、これを家具の後ろに2本、前に2本で固定すれば十分な固定力が得られます。

そして、地震対策の4つ目が、日頃の運用管理です。家具の転倒を防ぐために、a)収納物を下から順に重いものを入れる、b)ラッチ付家具かどうかを確認する、c)レイアウト変更の際は、背の高い収納家具は床、壁、天井に固定する、d)中規模地震に見舞われたら、耐震固定した場所を再確認する、など日頃から危険要素を取り除く仕組みが必要です。特にd)の再確認については、かなりのケースで実施されていないのが実情です。地震対策は1度済んだら終わりではなく、再確認しながら改善を繰り返していくことが大切です

「備えあれば憂いなし」のことわざどおり、対策をしておくことが人命の安全と震災後のいち早い復旧の決め手になります。これからのオフィスは、効率性や快適性の追求だけにとどまらず、安全性との両立が非常に重要だと言えるでしょう。

ご移転計画のあれこれ、お気軽にご相談ください

CBREでは事業用不動産のプロフェッショナルチームが、お客様の経営課題や不動産にかかわるさまざまな課題解決をサポートします。

上記内容は オフィスジャパン誌 2011年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

記事を探す

物件をお探しのお客様専用窓口

CBREの記事をお読み頂き誠にありがとうございます。
ご移転のプランニングや優良未公開物件の仲介をご用命の際は右記のフォームからお問い合わせください。

物件相談フォーム