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必要な電力と供給状況の把握が第一歩

災害時・停電時になにを守るのか、それにはどの程度の電力が必要なのか。
その把握こそ事業継続に向けた第一歩。

株式会社NTTファシリティーズ
高機能ビルマネジメント本部 担当部長 水口 和馬
担当課長 鈴木 辰典

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複数回線で受電する高信頼の電力供給方式

オフィスビルへの安定した電力供給を考えるうえで重要なポイントの一つが、ビルの受電方式です。ビルの受電方式には、電力会社から単一回線で受電する「1回線受電」や、複数回線で受電する「本線予備線受電」「ループ受電」「スポットネットワーク受電」などの種類があります。信頼性の高さで言えば、単一回線よりも複数回線で受電する方が、万が一の回線故障でも電力会社側の点検・切替作業においてもバックアップ系統から電力が供給されるため、停電が起きにくい受電方式だと言えます。ただ、50〜1,000kW程度のオフィスビルであれば1回線受電方式が一般的で、一方、特別高圧(契約電力が2,000kW以上)で受電する大規模・重要施設では、複数回線での受電方式が採用されるケースが多く、より"電力供給が止まりにくい環境"になっています。

ここで各受電方式について簡単に説明すると、「1回線受電」は、前述したように電力会社から1回線で受電する方式で、最も安価に構築できる方式です。しかし、電力会社の配電線が故障した場合には、復旧までの間、停電が生じます。これに対し、「本線予備線受電」は、電力会社から2回線で受電する方式で、本線が故障しても、予備線へ切り替えることで停電時間を短縮することができます。設備コストは、2回線で引き込む方が、1回線受電方式よりも高くなります。

他の特別高圧受電の需要家とループ状に配電線を構成して、常時2回線での受電を可能にしたものが「ループ受電」です。本線予備線受電と異なるのは、常に2方向から受電されているため片側の回線が故障しても、もう一方の回線から電力が供給される限り無停電状態を維持できます。この他、信頼性を高める方法として、複数回線(一般的には3回線)で受電する「スポットネットワーク受電」があります。1回線がダウンしても、残りの2回線から電力供給が維持されます。設備コストも非常に高く、重要度の高い施設向けだと言えます。スポットネットワーク受電の利用は、電力会社のインフラ整備状況によるところが大きく、全国どこでも利用できるわけではありませんが、首都圏や大都市では比較的整備されています。ただし、受電の安定性が高い受電方式においても、他の需要家と回線を共有することになるため、他の需要家のビルで起きたトラブル等の影響を受けるというリスクがあります。

重要な施設においては、万が一に備え、発電設備や無停電電源装置(UPS)など高信頼電源の構築はもとより、「一層高品質な保守・監視」及び「非常事態を想定した復旧訓練」など、高機能なビルに対するマネジメントが重要となってきます。

受電方式の比較イメージ

停電の有無や受電設備の設置位置も重要

前述のとおり電力供給系統の回線故障が起きた場合の停電の有無については、ループ受電とスポットネットワーク受電は、電力供給が一瞬でも途絶えることはありませんが、一方の本線予備線受電では、本線にトラブルが発生した場合に予備線への切り替えを行う必要があり、その間に停電が生じます。

また、落雷による瞬時の電圧変動リスクや受配電設備の故障によるビル内停電リスクなどもあります。こうした停電などのリスクに対しては、発電設備とUPSなどを組み合わせた電源バックアップを備えて停電対策を講じることで、ビル全体としての電力供給の信頼性を確保する必要があります。

これまでに紹介した受電方式は、単一回線であれ複数回線であれ、一つの変電所から回線を引き込んでいます。従って、変電所そのものにトラブルが生じた場合には電力供給はストップしてしまいます。そのリスクをカバーする方法としては、本線を収容する変電所と別の変電所からも回線を引き込んでおく「本線予備電源方式」があります。この方式では、電力会社に対する工事費負担金や電気料金の増加が見込まれますが、通常利用する本線側の変電所にトラブルが生じた際には代替の変電所からの給電に切り替わるため、一旦停電は発生するものの、かなり信頼性の高い受電方式だと言えます。受電方式の選定にあたっては、対象ビルが立地する地域における電力会社のインフラ事情により、対応ができなかったり、工事費負担金は変動しますので、電力会社と十分に協議の上で決定していくこととなります。

受電設備の設置場所も確認すべきポイントです。事業継続性の観点から考えれば、受電設備は災害や浸水の被害を受けにくい場所に設置されていることが前提条件となります。例えば、オフィスビルの立地が大雨や洪水、津波発生時の水防レベルよりも高台にあれば、地下階や下層階に設置されていても浸水被害のリスクは低いと考えられます。逆に水防レベルよりも低い立地にある場合は、要求する水防レベルに応じて防潮板など水防対策を施し、さらに高い信頼性が求められる場合は、受電設備などの上層階設置を検討するケースも出てきます。今回の東日本大震災の被害状況を受けて、現在、国及び各地において地震・津波等の被害想定の見直しが行われていますが、この結果如何によっては、ビルの浸水被害に対する受電設備の保安対策を、見直す必要がでてくるかもしれません。

一般的なビルの非常用発電設備は防災用・保安用設備への電力供給がメイン

ビルの停電対策は、これまで述べてきた受電方式に加えて、非常用発電機やUPSなどバックアップ電源を備えることで、全体的に信頼性を確保する必要があります。ここからは非常用発電機について説明していきます。

オフィスビルに非常用発電機が設置されている場合、それだけで非常時にテナント用に電気が供給されるかというと、必ずしもそうとは限りません。ビルの非常用電源は、通常はビル全体の防災用と保安用の設備に供給されるようになっており、業務用電源としてテナント専有部に供給されることは稀なことです。

ビルが非常時にバックアップ給電をしなければならない防災用設備は、消防法と建築基準法により定められています。消防法では、商用電力が途切れた場合でも、消火栓やスプリンクラー設備、誘導灯、連結送水管などの消防設備が作動するよう電力を確保することを義務付けています。いわゆる「非常電源」と呼ばれるもので、主電源の喪失から40秒以内の電圧確立と、供給する防災設備により最大120分以上連続運転できる容量を持つことなどが求められています。また、建築基準法では、非常用照明や排煙設備、非常用エレベータ、などへの電源供給を義務付けています。いわゆる「予備電源」と呼ばれるもので、こちらも40秒以内の電圧確立と、供給する防災設備により最大60分以上連続運転できることなどが定められています。

一方の保安用設備は、停電の際に保安上必要な照明やコンセントなど、ビル毎に決めます。保安用電源はテナント専有部にも一部供給されますが、あくまで保安用であるため、通常業務を継続できるほどの容量ではありません。

非常時、テナント専有部に10VA〜15VA/㎡の電力を供給するビルもあるようですが、これは100㎡に換算しても1.5kVAですから、通常業務を継続するのに十分な容量とは言えません。例えば、100㎡で15名程度のオフィスですと、複写複合機だけでも厳しい状況ですが、電話主装置、ネットワーク機器、PCでもオーバーしてしまうくらいの小さな容量です。ただし、本来なら全く供給されない電力ですから、ビル利用者の安全確保や業務継続に関して有益であることは間違いありません。非常時のオフィスでは、電話やネットワークなどの通信機器の電源を確保したり、一定面積当たりパソコン数台を稼働させるなど用途を絞った必要最小限の運用を検討しておくことが重要といえるでしょう。

テナントごとに電源ニーズや必要とされる容量が異なるため、もし、停電時にすべてのテナントが満足する電力供給を行えるようにすると、ビル側は過剰な設備投資を余儀なくされます。それが、非常時にテナント用に電気を供給するビルが少ない大きな理由でしょう。過剰な設備投資やランニングコストは、当然、賃料に反映されるでしょうし、ビル側としては標準ニーズに焦点を当てて設備投資を行い、特殊な事業に対する設備については、各テナントと個別に対応するのが一般的です。

「設置スペース有」のビルならテナント専用発電機の設置が可能

賃貸オフィスビルでは、非常時にバックアップ給電が必要な重要設備などを保有するテナントニーズへの対応として、ビル側がテナント用に非常用発電機設置のためのスペースを用意しているケースもあり、テナントが各自でバックアップ電源を確保することが可能です。逆に言えば、非常用発電機専用のスペースが用意されていないビルでは、構造上、非常用発電機の設置は難しいと思われます。発電機の設置が可能なのか、またどのような発電機を設置するかは、必要となる電気容量や運転時間、設置スペース、燃料タンク容量などを総合的に判断して決めることになります。

ビルの非常用発電機としてよく使われる方式に、ディーゼル発電機とガスタービン発電機があります。ここではこの2つの発電機について簡単に説明します。ディーゼル発電機は、主にA重油、軽油、灯油を燃料にして、20〜数千kVA程度まで対応しています。一方のガスタービン発電機は、主にA重油、軽油、灯油、天然ガスを燃料とし、ディーゼル発電機よりも大容量の200〜1万kVA程度まで対応しています。設置スペースを比べてみると、ディーゼル発電機は、本体が大型で冷却水用ポンプなど付属設備が多く、連続運転時間に応じて冷却水を確保する必要があるため、大きなスペースが必要です。一方のガスタービン発電機は、空冷式で冷却水が不要で構造上小型なため、比較的狭いスペースでも設置可能ですが、ビル内に設置する場合は、ガスを燃焼させるための空気の吸入ダクトと排気ダクトの設置に非常に大きなスペースを必要とするため、屋上などの屋外に設置されることも多くあります。

燃料タンクについては、小型発電機であれば、ビルの非常用発電機の燃料タンクを共有できる場合もありますが、大規模な発電機になると専用の燃料タンクが必要です。その際、燃料備蓄のためのスペースも考慮しなければなりません。ディーゼル発電機とガスタービン発電機では、後者の方が発電効率が劣ります。災害時に燃料供給が止まった場合に、同じ発電量で同じ運転時間を確保するには、発電効率で劣るガスタービン発電機の方がより多くの燃料備蓄が必要になるため、燃料に関するマネジメントも一層重要となってきます。

また、非常用発電機の燃料に使用されるA重油、軽油、灯油の取り扱いは、消防法によって規定されています。燃料の種類によって指定数量が定められており、指定数量以上であれば危険物として、指定数量以下であれば少量危険物として管理することが義務付けられています。従って、貯蔵する燃料の種類と量について、所轄消防署との十分な協議が必要になります。

非常用発電機の導入後は、いざという時に確実に始動し防災用設備などへ電力供給ができるようにするため、定期的な保守点検・整備が欠かせません。発電設備の点検では、動作確認や設備の劣化への注意が必要です。月に1回程度の試運転や保守点検は、通常は管理会社に委託して行います。

ここまで非常用発電機に関して説明してきましたが、設置場所、燃料保管、法規制、そして運用・保守の問題について検討が必要であることがお分かりいただけたかと思います。そのため、実際のところ賃貸ビルでテナント側が非常用発電機を設置するケースは、大手企業の本社や金融機関、通信・放送の一部など、限定された施設にとどまっているのが現状となっています。

事業継続性を担保するにはどれくらいの規模の電源が必要か

昨年の東日本大震災以降、世の中では、大規模災害に備えて、バックアップ用のオフィスを確保したり、発電設備やUPSなどバックアップ電源の増設、太陽光発電の導入検討など、多岐にわたる要望がでています。テナントにおいても非常時の電源確保に対する関心が高まっています。従来よりも対応すべき電力の想定範囲が広がっており、より長時間の停電に対する備えを検討する企業が増えていることの表れだと思います。そのため、今後の市場動向によっては、新築されるオフィスビルには、非常時のテナントに向けた給電を想定したビルが増えていくものと思われます。

災害時の安定した電力供給を計画するには、まずは自分たちの事業を継続するために必要な電気容量を把握しなくてはなりません。最低でもこれだけの容量でこれだけの時間必要だから、この規模の発電設備を導入したい、という明確なビジョンが必要です。しかし、発電機導入を計画するにあたって必要量を確定している企業はまだ少ないようで、そのためか、一般の賃貸オフィスビルで実際にテナント側で非常用発電機を設置したというケースは、多くはないと思われます。

折しも、昨年からの大規模な計画停電の実施や電気事業法第27条による電気の使用制限発動を受けて、「使用電力の見える化」へのニーズが急増し、自分たちの電気使用量を意識して可能な限りの省エネを実践するようになってきました。ビルにおいては、LED照明など省エネ機器の導入、照明やエレベータなどの部分的運用、空調温度設定の見直し、など、様々な取り組みにチャレンジし、ビルオーナーとテナントが協力し合って大きな節電効果を実現することにより、電力危機の第一段階を乗り切ったといえます。今後、さらに電力供給事情が深刻化する中、各テナントにおいても自社が生き残るために必要な電気の量を明確にし、その後、それを可能にするオフィスビルを選択する、適切な規模のバックアップ電源を確保するといった対応が、これからは増えていくのではないでしょうか。

以上、オフィスビルにおける非常時の電源確保について述べてきましたが、これらの現状をふまえ重要施設の安心・安全の確保のため、高機能ビルマネジメント の重要性を改めてオーナーのみなさまへお伝えしていきたいと思います。全国、21,000棟のファシリティマネジメント、20万装置の設備保守・監視、並 びに、100年を超える設計・運用ノウハウの蓄積を活用して、みなさまのお役に立てれば幸いです。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2012年夏季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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