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第7回 低炭素社会における最新オフィスビル事例に見る環境対策

はじめに

省エネルギーや環境配慮をオフィス構築の一要素として重視するオーナーやテナントが増加傾向にある中、大成建設はオフィスビルをはじめとする大規模建築を計画する設計者として、環境配慮型のオフィスビル計画に取り組んで参りました。また、自らが開発事業者として事業に参画し、計画中のプロジェクトを含め、環境ビルを標榜するプロジェクトを手がけております。今後2011年から2014年にかけて、東京都内で複数の大型複合オフィスビルが完成予定であり、いずれのビルも、環境配慮型のサスティナブル建築としており、最新の環境配慮技術を導入することで、CASBEE「Sランク」の獲得を目指しています。

今回は、大規模オフィスビルの開発事業者と設計者・計画者の両方の立場で様々なプロジェクトに関わっていることから、最新の環境配慮技術、取り組み事例を紹介します。

寄稿 大成建設株式会社
都市開発本部
設計本部

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1. 御茶ノ水駅前の大型再開発 (仮称)神田駿河台4-6計画

(仮称)神田駿河台4-6計画

はじめに、当社が開発事業者として、開発計画を進行中の「(仮称)神田駿河台4-6計画」についての取り組みを紹介します。

本プロジェクトは、JR御茶ノ水駅前の旧日立製作所本社ビル跡地での開発計画であり、大成建設、ヒューリック、安田不動産、昭栄、有楽土地の5社が共同出資する駿河台開発特定目的会社が事業主体となり事業推進しています。本プロジェクトでは、都市の再生、地域の活性化に貢献するため、様々な地域貢献整備や環境対策を実施することを提案し、2010年3月に東京都の都市再生特別地区の指定を受けています。当計画は2010年11月に着工し、2013年3月末の完成を予定しております。

(1) 計画地の概況

オフィスビルの環境対策 第7回:図1 計画地の概況

計画地は、JR御茶ノ水駅聖橋口駅前に位置する約9,550m2の大規模敷地です(図1)。 お茶の水地域は、「大学の街」「病院の街」として有名ですが、近年では交通利便性を活かしたオフィスビルの開発計画が進んでおり、新たなオフィス集積エリ アを形成しつつあります。計画地周辺では、都市再生特別地区の指定を受けた淡路町二丁目西部地区第一種市街地再開発事業、神田駿河台三丁目9地区計画(三 井住友海上駿河台三丁目計画)が同時に進行し、2013年にはそれぞれ完成する予定です。また、JR御茶ノ水駅や地下鉄新御茶ノ水駅の改良整備も計画され ており、エリアとしての都市再生が進行中です。

周辺には神田川、聖橋、ニコライ堂、湯島聖堂などが点在し、計画地内にも明治期の石垣、レンガ擁壁が残るなど、地域の方に親しまれてきた文化的、歴史的な特徴ある都心景観の形成に寄与することが求められました。

(2) 施設計画の概要

オフィスビルの環境対策 第7回:図2 施設計画の概況

本プロジェクトは、都市再生特区制度の適用により容積率が970%に指定され、地上23階、地下2階、延床面積は約10万m2、高さ約110mの複合ビルとなっています(図2)。 施設は貸室面積約16,000坪のオフィスを核とし、教育施設、ホールを備えたカンファレンスセンター、店舗・サービス施設等により構成されています。  計画コンセプトとして、①駅周辺の快適な歩行者空間の整備、②地域文化交流拠点の形成、③緑の創出と環境負荷低減への取り組みの3つを掲げ、計画の柱とし ています。施設計画の特徴は以下の通りです。

  • 聖橋交差点に面して約3,000m2の緑豊かな地上広場と、地下鉄新御茶ノ水駅と接続する地下広場を一体的に整備し、地域の方や、訪れた方々が自由に利用できるスペースとして公開します。
  • 地形の高低差による不便さを解消するため、地下広場と淡路町二丁目再開発を結ぶ歩行者通路及び接続ブリッジを整備し、外堀通りからJR御茶ノ水駅までのバリアフリールートを実現します。
  • 東京地下鉄株式会社と共同して、本計画地内に新御茶ノ水駅ホームから聖橋方面改札に至るエレベーター、通路等を整備し、駅のバリアフリー化を実現します。
  • 直下の地下鉄千代田線シールドへの影響を抑えるとともに、工事に伴う環境負荷を低減するため既存建物の杭を再利用します。また、地震力を低減し、建物の安全性を高めて長寿命化するために中間階免震を導入しています。
  • 環境に配慮した建築計画や環境技術の導入により優れた建物環境性能を実現します。また、既存樹木の保存や新たな緑化により周辺の緑地と連携する緑の拠点を形成します。

2. 様々な環境技術をバランスよく導入 (仮称)神田駿河台4-6計画

本プロジェクトは、建物熱負荷を抑える配置計画、外装計画の採用や高効率機器の採用等により、PAL削減率35% 、ERR43%を達成し、東京都が定める最高水準(段階3)となっています。また、自然エネルギー・未利用資源の活用等、オフィスビルとしては新しい環境対策にも取り組み、CASBEEはSランクを達成しています(実施設計時点での自己評価)。

(1)建物熱負荷の低減

計画建物では、各階個別空調方式を採用しています。これにより運用時の細かい空調ニーズへ効率的に対応でき、空調エネルギー消費量の低減が可能とな ります。また、同方式の採用により必要となる室外機置場、及びコアを建物南面に配置し、南面からの日射熱負荷を大幅に抑制しました。

ガラスカーテンウォールにLow-Eガラスを採用するとともに、東西面には縦型リブを設置し、西日による熱負荷を低減します(図3・図4)

オフィスビルの環境対策 第7回:図4 建物熱負荷を低減するプランニング オフィスビルの環境対策 第7回:図3 計画建物における主な省エネの取り組み

(2)自然エネルギー・未利用エネルギーの活用

1. 太陽光発電ルーバーの採用

オフィスビルの環境対策 第7回:図5 都内事務所ビル最大規模の太陽光発電

建物の各階南面に配置する室外機置場の目隠しルーバーとして、太陽電池を組み込んだ太陽電池一体型ルーバーを採用し、太陽光発電に取り組みます。都心部では、敷地内や屋上に規模の大きい太陽光発電設備を設置するスペースを確保することが困難ですが、本計画では建物壁面約2,430m2を利用することで、都内事務所ビル最大級の発電容量約150kWの発電設備を設置します。太陽電池一体型ルーバーは、水平ルーバーに太陽光発電モジュールを組み込んだ建材であり、1枚のモジュールは9枚または8枚のセルを直列接続した構成となっています。1枚あたりの公称最大出力はそれぞれ22W、19Wであり、本計画では約6,800枚のモジュールを使用する予定です。

太陽電池面を垂直面から上向きに10度傾斜させ、垂直面に比べ発電量を約14%向上させています。また、ルーバー本体に通気孔を設けることで、太陽電池の温度上昇による発電効率の低下を抑制しています。JIS方式による試算では、年間発電電力量は約11.4万kWh(約45t-CO2/年の削減効果)となります。発電した電力は、一般電力と合わせて、ビル内で利用します(図5)

2. 地下鉄湧出水の活用

オフィスビルの環境対策 第7回:図6 未利用資源としての地下テル湧出水の活用

本計画地の直下には、前述の通り、地下鉄千代田線新御茶ノ水駅の立坑、シールド軌道があり、現状ではこれらの施設に湧出する水が立坑最下部の排水槽に貯留され、下水道に放流されています。

本プロジェクトでは、東京地下鉄と共同して実施する駅のバリアフリー施設整備に伴い立坑の一部を改修することから、湧出水を東京地下鉄から譲り受け、未利用エネルギー、未利用資源として活用することとしました。具体的には、湧出水を濾過した後に、熱交換器により空調熱源として利用し、その後、雨水と併せて雑用水槽に貯留し、植栽への灌水、給水式保水性舗装への給水、建物での中水等に利用する予定です。

なお、当社の調査時点では、湧出水の水温18℃、水質は有害物質等を除去・殺菌することで基準を満たすことが可能となります。また、最大の水量は約150m3/日程度であり、計画建物での上水使用量の削減にも寄与します。

地下鉄等の人工トンネルに湧出する水の利用は、これまでは水質改善を目的とした河川放流やヒートアイランド対策としての道路散水に用いられている事例がありますが、本計画のように建物での熱源利用、環境用水・中水利用は初めての試みです(図6)

(3) 道路整備によるヒートアイランド対策

当該プロジェクトでは、敷地周辺の本郷通り、淡路坂、茗渓通りの舗装再整備を行います。本郷通りは延長約500mの範囲を遮熱性舗装、淡路坂と茗渓通りは延長計約480mの範囲を保水性舗装として整備します。計画地周辺では、他の開発による区道の保水性舗装・遮熱性舗装整備も予定されており、面的に集中した整備がなされることにより、ヒートアイランド対策として高い効果が期待されます。

(4) 既存杭再利用による環境負荷の低減

本計画建物では、国内最大規模となる既存杭を再利用することにより,建物基礎工事を大幅に合理化し、杭撤去に伴う騒音・振動の低減、工事におけるCO2排出量の削減、産業廃棄物の削減など環境面での効果を達成することが可能になりました。特に、杭工事で排出するCO2の削減は、新築杭を施工する場合に比べ、52%削減できると試算しております。

(5) 緑の保存と拠点形成

緑の保存については、施設計画の工夫により、樹高10m程度の既存のケヤキやクスノキ計6本を現地保存する計画です。また、地下躯体に抵触する樹木については、移植に耐え得る4本について、場外への一時仮移植を行い、工事完了時に再移植する予定です。さらに、地上広場を多彩な植栽計画により、新たな緑の拠点として整備し、周辺の湯島聖堂、神田川両岸、ニコライ堂、三井住友海上火災本社などの緑と連続する「緑のネットワーク」の中継点として重要な役割を果たします。 また、明治時代の石垣やレンガ擁壁など、貴重な歴史的な素材を、現状保存や復元、再利用し、地域の方々に親しまれてきた地域環境の維持にも配慮した計画としています。

このように、(仮称)神田駿河台4-6計画においては、様々な環境技術をバランスよく導入するだけでなく、地域のコンテクストとの調和も図ることで、トータルとして価値の高いオフィスビルの創出を目指しています。まさに、バランス型の環境配慮オフィスビルといえます。詳しくは下記ホームページをご覧ください。

(仮称)神田駿河台4-6計画ホームページ
http://www.taisei.co.jp/kaihatsu/kanda-surugadai

3. 事業性と環境性能が両立 みなとみらいセンタービル

オフィスビルの環境対策 第7回:図7 みなとみらいセンタービル外観

次に紹介する「みなとみらいセンタービル」は、オリックス不動産、大和ハウス工業、ケン・コーポレーションが出資するオーディーケー特定目的会社が事業主体となり、横浜のみなとみらい地区に建設された、事業性と環境性能が両立する複合業務ビルです(図7)。当社開発の独自技術を一般的・普遍的な事業ビルに最適化することで、事業性の高い経済的なビルでありながら最高水準の環境性能を持つことができました。

新しい形式の免震+制震構造の開発など、建築計画・構造システム・設備システムの一体計画により、「基準階レンタブル比82%」「天井が高く全く柱のない奥行23m幅80mのスクエアオフィス」「PML値5%未満の信頼性」などを経済的に実現し、横浜市環境設計(総合設計)制度上限の容積割増による最大限の事業床面積獲得で高い事業性を確保しました。

オフィスビルの環境対策 第7回:図8 みなとみらいセンタービル外観

開放感と日射遮蔽性能が両立する「環境ファサード」、太陽追尾型採光装置「T-Soleil 100」を組み込んだ太陽光採光システムをはじめとする計画により、横浜市よりCASBEE横浜Sランク(最高ランク)の認証を受けました。また、CASBEE基準では運用時CO2排出量32%減となっています。他にも計画地周辺の郷土性や地域性を考慮し、蝶や鳥を誘う誘鳥を採用する等の工夫により、横浜らしさを演出する植栽計画を実現することで、環境省からヒートアイランド対策事業に選定されました(図8)


オフィスビルの環境対策 第7回:図9 太陽光採光システム

環境技術の最大の特徴としては、当社開発の太陽光採光システム「T-Soleil100」を導入した点です。これは、降り注ぐ太陽の光を3種類のミラー(1次ミラー、2次ミラー、3次ミラー)で建物内に取入れる太陽光採光システムです。この太陽光採光システムを、センターコアの吹抜部に導入することで、薄暗いセンターコア型のオフィスフロアの光環境が向上するだけでなく、照明電力の削減にも貢献しています(図9)

このような取り組みにより、「みなとみらいセンタービル」は、最高水準の環境性能をもつ複合業務ビルとして評価されています。

一般的なオフィスビルのエネルギー消費割合は、照明・空調による負荷が60%~70%を占めていると言われています。したがって、オフィス全体のエネルギー消費量を削減するには、この分野から発生するエネルギーを削減することが必要です。次に、照明・空調の負荷を運用段階で削減するために当社が開発した技術を紹介します。

4. オリジナルLED照明を導入した邸宅のようなオフィス ガーデンシティ品川御殿山

オフィスビルの環境対策 第7回:図10 ガーデンシティ品川御殿山

照明負荷については、今年竣工予定の「ガーデンシティ品川御殿山」(図10)において、大幅なエネルギー削減を実現しています。本プロジェクトは、環境省の「エコ・ファースト制度」において「エコ・ファースト企業」として認定を受けた積水ハウスが事業主体となり、品川区、徳川将軍家の品川御殿が存在した閑静な住宅街の御殿山に計画した長さ180m、基準階貸室面積約2,045坪の国内最大級のメガフロアを誇るオフィスビルです。本建物は、地上9階、地下1階のオフィスを核とした延床面積約64,000m2の複合ビルで、高級住宅街における邸宅のようなオフィスの佇まいを低層のボリュームで実現しています。

オフィスビルの環境対策 第7回:図11 断面図と環境配慮

当該プロジェクトは、「環境配慮型オフィス」をコンセプトに、発光効率が高い最新の省エネ型LEDグリッド照明を貸室全室に採用する他、太陽光発電、雨水再利用、屋上及び壁面緑化など様々な省エネ対策を施し、東京都の定めた基準を満たす「優良特定地球温暖化対策事業所(以下、トップレベル事業所)」の認定を目指しています。また、地中の恒温性を利用する「クールピット」や、在室人員に応じて室内のCO2濃度を検知し、必要外気量のみをオフィス内に導入する「CO2制御センサー」、外気温が室温より低い時に外気を建物に導入して冷房を行う「外気冷房」など先進の省エネ技術を導入し、エネルギー消費量を低減するとともに地球温暖化防止にも貢献しています(図11)

オフィスビルの環境対策 第7回:図12 大成建設オリジナルLED

本プロジェクトで導入された大成オリジナルLEDは、従来の蛍光灯グリッド照明器具に比べ、3.3倍の40,000時間の長寿命、更にグレアカットルーバー内蔵型のため、埃が溜まらずメンテナンスフリーであることが挙げられます。また、自動調光機能も装備されており、平均照度700LXの効率的な照明計画を実現しています(図12)

本プロジェクトでは、貸室内の基準照明全てにこのオリジナルLEDを採用することで、従来の蛍光灯照明に比べ、消費電力が約40%削減(当社設計本部の試算による)され、年間約319tのCO2削減を見込んでおり、ビルオーナーはもちろん、入居テナントのエネルギーコスト低減、CO2排出量削減にも貢献します。

5. 超省エネ自動環境制御システム「T-Zone Saver」 地球温暖化防止活動環境大臣表彰受賞

オフィスビルの環境対策 第7回:図13 T-Zone Saverによる自動環境制御システム

照明・空調機器の高効率化も限界に達しつつあるなか、今後の更なる省エネルギー・省CO2に対しては、建物の特性に合わせた適正な運用が効果的であり、省エネルギーチューニング及び最適環境制御技術の高度化が重要視されています。

チューニングへの取り組みとしては、当社の技術センターや大成札幌ビルにおいて、休日・残業時の空調運転調整やフリークーリング(圧縮機を使わない空調)の最適運用等が図られました。それにより、大成札幌ビルにおいては、省エネ法による札幌地区の性能基準と比べ、竣工後1年で41%、3年目で49%のCO2排出削減を達成しました。

当社はこれらの実績を踏まえ、ゾーンごとに照明・空調の両方を最適に制御する超省エネ自動環境制御システム「T-Zone Saver」を東光電気株式会社と共同で開発し、平成22年度の地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞しました。

本技術は、次世代人検知センサー「T-Smart Focus」 により、オフィス空間での人の在席状況をリアルタイムで正確に判別することによって、常に最適かつ省エネルギーな状態で運転管理します。人が在席しているゾーンでは快適な照明・空調環境を、不在ゾーンでは減光制御・消灯や空調停止等の綿密な自動制御を実現します(図13)。「T-Zone Saver」を導入することにより、従来の一般的なオフィスと比べ、執務エリアにおけるおよそ30%の照明・空調消費エネルギー(=CO2)削減効果が見込まれます。

当社は今年1月から本社内に、「T-Zone Saver」やLED照明の他、パーソナル単位の空調照明制御システムを体感できる「スマート・コミュニケーション・スクエア」を開設しました(図14)。人の動きや存在を伝えるセンサーの検知状況を、液晶画面でリアルタイム表示することで(図15)、来訪者に分かりやすく体感いただけます。

「T-Zone Saver」は部分的なオフィスでの運用が始まったばかりですが、大型建物への導入も既に決まっており、今後新築のみならず改築・設備更新等においても、その需要は高まると考えています。

オフィスビルの環境対策 第7回:図15 リアルタイム照明ゾーン制御情報(画面例) オフィスビルの環境対策 第7回:図14 スマート・コミュニケーション・スクエア

6. 大手町に3,600平米の森をつくる (仮称)大手町1-6計画

オフィスビルの環境対策 第7回:図16 大手町1-6計画完成イメージ

これらの様々な最新環境技術を取り入れたオフィスビルがある一方で、低炭素社会に対し、生物多様性保全への取り組みにおいて1つの強いコンセプトのもとに計画された事例もご紹介します。

国際的ビジネス拠点である大手町駅前11,000m2の敷地に3,600m2の「大手町の森」をつくるプロジェクト「(仮称)大手町1-6計画」です(図16)。当該プロジェクトは、東京建物と当社との共同事業で、都市再生特別地区を適用した地上38階、地下6階の約20万m2の大規模複合ビルです。オフィスを中心にホテル、飲食物販店舗等により構成されています。東京の主要地下鉄5路線に囲まれた交通結節点である大手町駅の一角に位置するため、地下鉄コンコース拡幅や地下鉄乗換え通路の拡幅、更に丸の内からつながる歩行者空間を積極的に大手町地区に延伸し、「地上・地下歩行者ネットワークの改善」を図りました。また、「国際交流拠点の構築」「環境に配慮したまちづくり」に取り組み、大手町・丸の内・有楽町地区のまちづくりにおける先導的な地域貢献を積極的に展開しています。

オフィスビルの環境対策 第7回:図17( 仮称)大手町の森 完成予想CG

「大手町の森」は、高層ビルが立ち並ぶ大手町地区に、かつてその場所にあったであろう自然の森の再現を目指して計画しています。人々に緑の潤いを与えるだけでなく、ヒートアイランド現象の緩和や緑や生物のネットワーク創出を最大限行うために、まとまった広さの緑地を創出しました。事前のシミュレーションでは計画地の平均体感温度が約1.8度下がることが予測されています。また、コナラやアカガシなど潜在自然植生に基づいた樹種を自然の森の樹木配置にならって植栽するなど、自然の状態の再現を徹底して行い、生物多様性に配慮した質の高い緑の拠点づくりを目指しています(図17・図18)

森への散水は、自動潅水設備により全体にくまなく効率的に行い、供給水には排水を高度処理した中水を使用し、省資源化を図っています。建物への外気取り入れの一部は、森の内部と直上の高層部軒下に取入口を設置し、森の新鮮な空気を供給しています。

森から空間が連続する地下には、地下鉄駅をつなぐ公共空間としての機能を確保するとともに、大手町のまちづくりが目指す「地上と地下の中間領域」を自然光が降り注ぐ快適な地下空間で実現します。

(仮称)大手町1-6計画では、都市における本物の森づくりによって、様々な課題を解決し、街の魅力を高める取り組みを行っています。

オフィスビルの環境対策 第7回:図18 クールスポットの創出概念図

7. おわりに

以上より、2011年-2014年竣工予定の当社の最新プロジェクト及び昨年竣工したばかりのプロジェクトと、そこで導入された環境技術を紹介しました。すべてのプロジェクトにおける共通点としては、計画・設計段階における環境コンセプト「周辺環境への配慮」「負荷を減らす」「エネルギーを賢く使う」の徹底した具現化と費用対効果の高い省エネ技術の導入です。今後はオフィスビルに留まらず、様々な建物で「環境重視」の姿勢が顕著になっていくと思われます。

これからの低炭素社会においては、オフィス空間を提供する事業者に加え、入居するテナント側の企業にとっても、省エネによるコスト削減のみならず、省CO2による地球温暖化防止への貢献、環境マネジメントなど地球規模の環境への配慮がその企業の企業価値を高めていく時代になっていくと思われます。当社は環境トップランナーとして様々な環境技術の開発と普及に向けた取り組みを今後も続けていきたいと考えています。

本稿に関するお問い合わせ先

大成建設株式会社
都市開発本部 開発企画部
TEL. 03-5381-5586

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上記内容は オフィスジャパン誌 2011年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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