はじめに
2010年4月から「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(以下、改正省エネ法)が施行され、複数の事業所を保有・賃借し事業を行っている事業者は、改正省エネ法とそれぞれの地方自治体の環境保全条例への対応に追われていることかと思います。
当社(シービー・リチャードエリス・アセットサービス株式会社コンサルティング部、以下CBRE/ASコンサル部)は、オフィスビル・物流倉庫を中心とした事業用不動産の開発プロジェクトサポート、保有・賃借案件の不動産価値最大化のコンサルティングを主な業務としていますが、ビルオーナー・テナント・投資家・一般事業会社等、オフィス・物流マーケットに関わるさまざまなプレイヤーの方々から、「改正省エネ法+地方自治体の環境保全条例対応」についてのお問い合わせを受けることが非常に多くなりました。
本特集記事の第1回では「東京都環境確保条例」(以下、東京都条例)、改正省エネ法の施行により、オフィスビルにおける「CO2マネジメント」についての義務・責任が生じてくるということが整理されていました。第2回「地球温暖化」と「賃貸オフィスマーケット」では、これらの法規制が実際のビルオーナー・テナントにとどまらず、主に賃貸オフィスマーケットにおける各プレイヤーに対してどのような影響を与えるのか、また各プレイヤーがどのようなことを想定して動かなければならないのかポイントの整理を行っています。また第3回目では、国外へも目を向け、アジア主要都市における環境対策を紹介しました。
第4回目となる本稿では、規制枠の拡大・規制の強化が行われ4月より施行されている改正省エネ法・環境保全条例等に対し、具体的にどのような手順で対応をすすめていけばよいのかを、賃貸オフィスビルを中心に考えていきたいと思います。
地方自治体の動き
2010年3月末現在、改正省エネ法以外に、各地方自治体で設定されている環境保全条例・報告書制度関連の一覧を【図表1】に示します。それぞれの条例で、規制の対象となる範囲(規制枠)、エネルギー・排出温暖化ガス削減に関する報告内容・削減努力義務等(規制内容)は少しずつ異なりますが、述べていることは基本的には同じです。
【図表1】各自治体の環境保全条例・報告書制度関連一覧
すべてのエネルギーを使用する事業者等に対し、有効に機能するエネルギーマネジメント体制を構築したうえで、エネルギー使用合理化のPDCAサイクルを継続的に回し、具体的な行動でエネルギー使用量を削減していくことを求めているのです【図表2】。省エネ法の改正に伴い、規制枠拡大、規制内容の強化が行われたのは東京都、埼玉県および栃木県等のいくつかの地方自治体のみですが、今後は改正省エネ法に準拠する形で他の地方自治体にも独自の規制枠拡大・規制強化の波が広がっていくと考えられます。
賃貸オフィスビル等における省エネ法改正のポイント
ここで、省エネ法の主な改正ポイントを今一度整理しておきます。
- 規制枠の拡大
工場・オフィスビル等の事業所単位から事業者単位へ―今まで、事業所単位で報告義務があったものが、フランチャイズチェーン等、事業を行っている事業者単位となりました【図表3・4】。 - 経営者をトップとしたエネルギーマネジメント体制の構築
各事業所の責任者まかせではなく、企業の経営戦略としてエネルギー合理化の推進に取り組むことが必要となりました。 - テナントビルにおけるエネルギーの報告範囲
ビルオーナー・テナントの協力が不可欠。オーナー資産部分(ビルの標準設備等)の使い勝手でエネルギー使用量が変化します【図表5】。 - 判断基準の改正
事務所等の設備機器等に関する管理基準の制定と合理化の推進が追加されました。