中堅企業の旺盛な需要はグレードBビルへ。賃料の上昇傾向は全グレードで継続。
グレードAの空室率は上昇
当社の調査によると、2016年3月期の大阪オールグレードの空室率は、対前期(2015年12月期)比-0.3ポイントの5.3%と12期連続の低下となり、連続低下期間は調査開始以来過去最長を更新した。業績好調な中堅企業の需要が旺盛で、立地改善やビルグレード向上を目的とする移転がグレードBビルに流入。その結果、グレードBの空室率は、対前期比0.4ポイント低下し4.4%となった。一方、景気見通しの不透明感から大企業の動きには慎重さが見られた。グレードAビルでは、賃料水準の高い既存ビルの空室や、新たに発生した空室の消化が進まず、空室率は対前期比0.3ポイント上昇の4.8%となっている。
グレードAの想定成約賃料は、対前期比+0.2%の20,150円/坪、グレードBでは、同+0.9%の11,250円/坪となった。いずれのグレードにおいても、高額賃料帯が伸び悩み、低額賃料帯の伸びが顕著となっている。
2017年4月竣工予定の「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」(総貸室面積約21,000坪)は、すでにテナント募集フロアの約半分以上が内定している。その要因は、今年竣工予定のビルがなく、ワンフロア約820坪を確保できるハイグレードな新築ビルは希少なためである。大型面積での内定企業の移転要因は、自社ビル売却、拠点統合、BCP等様々だが、コストよりビルスペックの向上、面積確保を第一と考えているようである。
大型空室の消化が進む
梅田エリアで「グランフロント大阪」「清和梅田ビル」の空室消化が進み、淀屋橋、本町エリアの大型ビルの二次空室の消化も進んでいる。特に、本町エリア(御堂筋、本町通り沿い)の築年数を経た大型ビルは、リニューアルに積極的に取り組み、他エリアより割安感を持たせることで、空室を大きく消化している。
賃料は、過去に割安な賃料で入居しているテナントに対し、再契約や契約更新のタイミングでの値上げ交渉が増えてきている。
テナントの動向は、引き続き拡張、新規開設、ビルグレードアップ等、前向きな移転理由が継続している。空室率は、エリアを問わず低下傾向だが、来年以降に中之島、堂島エリアで大型面積の空き予定があり、一時的に空室率の上昇が考えられる。
関西支社 児玉友一郎
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相場表
種別 | 賃料(共益費込) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
---|---|---|---|
梅田 大規模ビル |
19,000~25,000 円/坪 | 引き続き需要は多く、空室消化が進んでいる。新規供給もなく、逼迫している状況で賃料水準も上昇している。 | |
梅田 中小規模ビル |
15,000~18,000 円/坪 | 大規模ビル同様、空室消化が進んでいる。選択肢が限られる中で商談が重なっており、賃料水準も上昇している。 | |
淀屋橋・本町 大規模ビル |
15,000~18,000 円/坪 | 安定的に空室は消化され、需要は多い状況。引き続き、空室消化が進み、賃料水準の上昇の傾向が出てくると思われる。 | |
淀屋橋・本町 中小規模ビル |
10,000~12,000 円/坪 | 築浅物件を中心に、大規模ビル同様に空室は消化されている。引き続き、需要が強い状況は続く模様。 | |
難波・心斎橋 大規模ビル |
9,000~14,000 円/坪 | 商業の需要は強いが、オフィス需要は変わらず限定的である。ただし、BCPの観点で選択する企業もあり、今後需要は高まると思われる。 | |
難波・心斎橋 中小規模ビル |
7,000~9,000 円/坪 | 来店型のオフィスニーズは安定的にあり、条件を満たすビルは空室消化が進んでいる。ただし、エリア全体としては横ばいの状況。 | |
周辺都市 大規模ビル |
9,000~11,000 円/坪 | 各エリアで安定的に需要があり、徐々に空室消化が進んでいる。ただし、ニーズを集める物件は限定的で全体としては横ばいの状況。 | |
周辺都市 中小規模ビル |
6,000~8,000 円/坪 | 新規供給がほぼなく築年数の経過しているビルが多く、テナントニーズを満たすことができず空室消化が進まない状況。 | |
事務所兼倉庫 市内・北摂・東大 |
4,000~6,000 円/坪 | 各エリアで、汎用性の高い物件の空室消化が進んでおり、品薄感がますます顕著となってきている。 | |
倉庫・配送センター 郊外 |
3,500~4,000 円/坪 | 湾岸エリアの大型施設に空き予定区画が出始めているが、底堅いニーズにより早期にテナントを獲得している。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。