グレードA空室率は2期連続上昇。懸念される二次空室の顕在化。
名駅で大型ビル2棟が竣工
当社調査による2016年12月期の名古屋グレードAビルの空室率は、「名駅」エリアの複数ビルで二次空室が発生し、対前期(同年9月期)比+0.7ポイントの4.0%と、2期連続で上昇した。来期(2017年3月期)は、同エリアで大型ビルが2棟竣工し、うち1棟はほぼ満室で竣工する予定である。この大型供給により、立地改善に伴う移転が活発化する一方で、既存ビルでは二次空室の発生が見込まれる。空室率は、引き続き上昇すると予想される。
グレードAの想定成約賃料は、対前期比-0.2%の23,500円/坪、対前年比では+1.1%となった。新築大型ビルの竣工を控え、既存ビルのオーナーは慎重な姿勢を示し、募集賃料をやや引き下げている。グレードBビルの想定成約賃料は、対前期比+0.4%の12,150円/坪、対前年比では+0.8%となった。
長期的空室率は低下トレンド
今期は、製造業以外にも、金融やサービス業等、幅広い業種でオフィス床を検討する動きが見られた。空室が残っていた新築大型ビルでは、新規開設や立地改善を伴う拡張移転等の複数テナントにより、まとまった面積が消化された。一方、テナント退去後のビルでは、設備水準の古さや最寄駅からの遠さなどを理由に、空室の後継テナントがすぐには決まらないビルも複数見られた。この結果、名古屋オールグレードの空室率は、2期連続で前期から横ばいの4.1%となった。
エリア別に見ると、「伏見・丸の内」エリアは、「名駅」エリアからの需要や館内増床等、築年数の浅い物件を中心に空室を消化し、対前期比-0.8ポイントの3.6%となった。「栄」エリアは、対前期比-0.1ポイントの4.3%と、着実に空室を消化している。「名古屋東」エリアは、前期から横ばいの6.8%であった。
今後懸念されるのは、夏以降に顕在化する前述の二次空室の影響である。一時的には、空室率上昇のタイミングで、賃料目線が緩む可能性もないとは言えないが、長期的に見れば、空室率は低下トレンドにあるため、影響は限定的であると思われる。むしろ、今後のオフィスビル開発の予定が極めて少ないことから、空室率の低下や、老朽化・建て替えに起因した供給不足に伴う賃料上昇に備える必要があるものと考えられる。
名古屋支店 三澤 琢哉
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相場表
種別 | 賃料(共益費込) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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名駅 | 14,000~27,000 円/坪 |
大型ビルの稼働率は、立地改善、集約等の移転により引き続き堅調だが、二次空室の顕在化によって若干空室が増加。
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名駅西 | 9,000~13,000 円/坪 | 人材派遣や専門学校のニーズが多いため、土日入館可能な物件への需要は強いが、対象物件は少ない。 | |
伏見 | 9,500~15,000 円/坪 | 伏見駅近くの利便性の高い経年物件や、コスト圧縮が可能な物件を中心に空室消化傾向が続く。小分割対応が可能な物件は、空室消化が加速している。 | |
栄 | 9,500~14,500 円/坪 | 近年、新築物件の供給はないが、二次空室の発生で選択肢が広がっている。大型面積への需要が高まっているが、駐車場確保がカギとなる傾向にある。 | |
丸の内 | 9,000~14,000 円/坪 | 築浅物件が比較的多いことから、郊外からの移転事例が多いことが特徴。名駅エリアへ移転した企業の二次空室が出たが、逆に名駅からの滲み出し需要も存在する。 | |
周辺都市(岐阜) | 8,000~10,000 円/坪 |
JR岐阜駅周辺より名鉄岐阜駅周辺の物件にニーズが多い状況。駅近築浅物件は依然募集に出ない状況だが、駅から距離のある物件は空室の消化に苦戦している。
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周辺都市(三河) | 8,000~12,000 円/坪 |
刈谷市内では、潜在ニーズが喚起され、新築物件のリーシングが比較的好調。周辺からの大型移転案件も具体化している。
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周辺都市(三重) | 8,000~11,000 円/坪 |
近鉄四日市駅周辺、津駅周辺の築浅物件への需要はあるが、希望に合う面積・グレードの空室が減ってきており、案件の速度が鈍化しはじめている。
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周辺都市(静岡) | 8,500~11,500 円/坪 |
新築オフィスビル「ニッセイ静岡ビル」の竣工後、空室増加が予測される。
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倉庫・配送センター | 2,800~3,800 円/坪 |
尾張、名古屋港、市内、三河の各エリアとも引き続き空き倉庫情報は少なく、需要が高い。尾張エリアに供給される大型新築倉庫も竣工前に満室になる動きあり。
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空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。