空室率はやや上昇するも、1%以下の低水準で推移。
竣工予定ビルのリーシングは順調
シービーアールイー(株)の調査による、2019年6月期の福岡主要オフィスゾーンの空室率は、対前期(同年3月期)比0.2ポイント上昇の0.4%となったが、依然、低水準で推移している。需要の傾向は、従前の通り、IT企業やコールセンターを中心とした拡張・新設、周辺エリアの自社ビルからの移転、館内テナントの増床に伴う空室消化等、二次空室が発生しない案件が中心である。
博多エリアで、来年春に竣工を迎える「(仮称)九勧博多駅前一丁目ビル」は、リーシングが堅調に進み、満室稼働を目前に控えている。2021年には、博多エリアで「(仮称)博多駅前四丁目計画」、薬院エリアで「(仮称)KMG本社ビル建替計画」が竣工する。また、天神エリアでは、福岡市が推進する再開発事業「天神ビッグバン」の第1号案件「(仮称)天神ビジネスセンター」が竣工を迎える。いずれも順調にリーシングが進んでおり、空室率の上昇は一時的なものと推測されるため、移転・拡張・新設等、新規賃借を検討している企業は、今後も迅速な意思決定が求められる。
想定成約賃料は、前期から2.9% 上昇し、15,630円/ 坪( 共益費込)となった。特に、博多・天神エリアにおける新築、築浅、大型物件等、テナント需要が多いオフィスビルの成約賃料が、福岡の新規募集賃料の上昇をけん引している。貸主からの賃料増額改定交渉も継続して行われており、今後も、想定成約賃料の上昇が予想される。
注目される博多コネクティッド
「博多コネクティッド」に関して、新たに福岡市が概要を発表した。博多駅から半径500mのエリアにある、1975年以降に建てられた6階建以上、延床面積3,000㎡以上のビルが対象で、にぎわい創出に寄与する取り組みに応じた容積率緩和など、「天神ビッグバン」と同様の規制緩和を盛り込み、老朽化した20棟分の建て替えを促すという。2028年末までの竣工が条件となり、安全性や環境性能に配慮した高機能ビルに建て替え、グローバル企業を呼び込む方針である。JR九州、西日本シティ銀行、福岡地所等、17社が参画した「博多駅エリア発展協議会」 が発足し、より具体化に向けて進む。天神だけでなく、博多も開発されることで、期待される相乗効果を含め、今後の福岡の発展に期待したい。
福岡支店 田中 菜津美
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相場表
種別 | 賃料(共益費込み) | 需給の動向 | 空室率 推移 |
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博多駅前 | 15,000円~18,000円/坪 | 中規模の成約と解約があり空室率は横ばい。中大型のニーズが滞留しており、引き続き賃料は上昇傾向。 | |
博多駅東 | 14,000円~16,000円/坪 | オーナーチェンジした物件の募集賃料が大幅に上昇したが、募集通りの賃料で成約。博多駅前ほどの水準には達していないが、需要は堅調。 | |
呉服町 | 13,000円~15,000円/坪 | 立ち退きテナントの移転ニーズが顕在化しつつあり、今後需要が増える見込みだが、空室の品薄感から他エリアへ流出する可能性あり。 | |
天神 | 18,000円~21,000円/坪 | 新たな立ち退きテナントのニーズが顕在化。需要過多のマーケットをさらに加速させ、賃料上昇に拍車をかけている。 | |
赤坂大名 | 12,000円~15,000円/坪 | 新築予定物件でリーシングに苦戦。天神エリアとの需要の乖離が見られる。 | |
北九州小倉 | 8,000円~10,000円/坪 | オフィス需要は依然低調。新築予定物件においても苦戦中。 | |
中・大型倉庫 市内 |
2,800円~3,200円/坪 | 中型倉庫の供給は依然品薄感あり。大型ニーズを吸収し満床となるなど、同じく品薄感のある大型マルチ倉庫は新規計画も出てきた。 |
空室率推移凡例: | 上昇 | やや上昇 | 横ばい | やや低下 | 低下 |
※物件検討時の予算の目安です。詳しくはシービーアールイー(株)社員におたずねください。
文中の空室率については、2014年3月期より、データ算出の対象となるオフィスビルを、原則として延床面積1,000坪以上、かつ新耐震基準に準拠した物件に変更しました。