空室率は再び上昇し4%台に。
成約賃料は下落傾向で推移。
賃貸条件緩和の動きが増加
シービーアールイー(株)の調査によると、2023年3月期の福岡市主要オフィスエリアの空室率は、対前期(2022年12月期)比2.2ポイント上昇の4.6%だった。今期の空室率上昇の背景には、博多区を中心に、複数の新築オフィスビルの供給があり、それらが募集空室を抱えたまま竣工を迎えたことが挙げられる。しかし、空室率こそ上昇したものの、築年数が経過した老朽化ビルからの移転事例や、採用強化を目的に郊外立地から市内中心部へ移転するポジティブな事例など、成約事例を帰納法的に見ると、依然として、福岡のオフィスマーケットは、底堅く推移していると考えられる。
一方、想定成約賃料(共益費込)は、対前期比―0.1%(20円/坪)下落の16,030円/坪となった。今後も、主要オフィスエリアにおける新規供給が続々と控える中、新築・既存ビルを問わず、募集空室の早期消化へ向けて、賃貸条件の緩和を検討するオーナーが、少しずつ増えてきている。
物件選定に慎重なテナント
福岡市主導の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」により、天神地区には、これまでにない好立地、かつハイグレードなビルが供給される予定である。メディアへの露出機会の多さからも、エリアに対する期待値や注目度は高い。ただし、新規の開発計画は、中央区に限らず、今後数年かけて、博多区でも控えている。
そうした中で、相対的に旧耐震基準を含む、古い物件が多い福岡では、移転を検討する企業にとって、新築ビルへ移転する場合、月額賃料の大幅なアップが避けられない。そのため、物件選定には、慎重なテナントも多い。
新型コロナウイルスの蔓延から3年を経て、オフィスのあり方の再定義を図り、必要面積の圧縮移転によって、販管費の増加分を吸収する企業や、分散する拠点事務所を統合し、合理化メリットを求める企業、コストの増加分を、ある種の広告宣伝費と位置づける企業、また、事務所移転を、労働生産性やエンゲージメント向上への起爆剤と捉える企業など、テナントサイドが、オフィスに求めるものは多様化している。今後、福岡のオフィスマーケット規模は拡大していくが、テナントへの新たな需要の喚起、それによる一層のマ ーケットの活性化に期待したい。
福岡支店 布施 直
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