こうした状況を踏まえたうえで気になるのが、物流施設の空室率と賃料水準の動向です。まず、空室率について4つのエリアごとに今後の動向を見ると(図H)、まず「東京ベイエリア」と「外環道エリア」は、どちらも新規供給が少なく、しかも東京ベイエリアは、経済環境の影響を受けにくいという特性があります。また、外環道エリアは竣工1年以上の空室率が最高でも10%であり、 2010年Q4以降はほぼ0%という、高い稼働率を誇っています。
そのため、2年後の空室率は東京ベイエリアで1.1%、外環道エリアでも1.4%という低い空室率で推移すると予測しています。
「国道16号エリア」は過去の変動幅は大きいものの、2013年以降は常に2%以下と、極めて安定しています。さらに今後の物件についても、現状の内定状況が良いことから、2年後も3.2%程度の空室率と見ています。
一方、新興エリアである「圏央道エリア」だけが、今後、大きな供給を控えていることで、空室率に顕著に反映されやすいことから、一時的には15%程度になりそうな気配を感じています。
また、図Iはエリア別賃料指数と予測をまとめたものですが、空室率が低く推移する東京ベイエリアと外環道エリアでは、約4%弱の上昇が見込まれています。また、ボリュームゾーンである国道16号エリアは2.3%程度の上昇でしょう。全体の需給関係が非常にいい圏央道エリアについても、一時的に調整が進む可能性はありますが、あまり賃料には影響しないと思われ、 2.2%程度の上昇と予測しています。
最後に2015年以降の展望をまとめると、「小売業の逆襲」により、新たなプレーヤーを得たことで、物流施設に対する需要は三つ巴の様相を呈してきたこと、これにより2015年以降の大量供給に対しても、底堅い需要が維持される、結果的に空室率も低い水準で推移し、需要の大きさに応じて賃料も上昇傾向にあるということです。いずれにしても、「小売業の逆襲」がどこまで拡大するかが、今後の物流施設の動向を探るうえで、重要なカギを握ることは間違いないと言えます。