考えてみれば、実店舗を持つ小売業はここ数年、通販専業企業に非常に攻め込まれていた時代でした。つまり、売上の多くを、通販会社に取られるという危機感があったと言えるのです。ですが、いつまでも手をこまねいている訳にはいきません。そこで打ち出した新たな手が、販売網の拡大を狙ったオムニチャネルによる、独自の通販サイトの立ち上げでした。
例えばヨドバシカメラは、都心のターミナル駅に大きな店舗を数多く構えていますが、一方、通販の売上も1000億円に迫ろうとしています。これは、旗艦店舗の売上を上回る額となっています。ドラッグストア業界を見ても、通販サイトを立ち上げたことで、マツモトキヨシホールディングス、サンドラッグ、ツルハホールディングス、コスモス薬品、スギホールディングスといった上位5社は、軒並み増収、拡大を続けています(図B)。
言うなれば、これは「小売業の逆襲」であり、こうした企業がいくつも登場したことが、2014年の特徴的な動向と言えるでしょう。
この動きに伴って注目されるのがPB(プライベート・ブランド)商品の興隆です。
ナショナル・ブランドの商品は、どこで買っても同じですから、価格の比較が容易であり、通販専業企業と真っ向勝負になってしまいます。その点、PB商品は自社で企画・開発したものであり、他店では販売されていませんから、大きな武器となります。
アパレル業であるユニクロやGAPなどは、SPA(製造小売業)と呼ばれ、以前からこうした戦略を取ってきました。その流れが、食品や日用品などにも拡大してきたと言えます。
イオングループの「TOPVALU」やセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」などが代表的な例ですが、PB商品は今や、小売業の差別化戦略の核となっているのです。PB商品は、小売業が国内外のメーカーに委託して開発しますが、製造した商品は全量買取することが基本になっています。ここがポイントで、PB商品の品質が上がり、人気が出れば出るほど、従来ならばメーカーや卸売業が抱えていた在庫が、小売サイドに集まる仕組みになっているのです。そのため、消費地に近い首都圏のLMTでは、小売業が荷主やテナントになっているケースが非常に目立ってきました。また、ワーキングウェアを扱うワークマンなどは、今年4月、群馬県に8,000坪の新しい物流センターを作る計画を発表しました。同社でもPB商品の強化に力を入れており、現在は16%の比率を、今後は30%に持っていこうとしています。そのためには、どうしてもセンターが必要になってくるのであり、今後もこうした傾向がさらに強まることが予想されています。つまり、いわゆる独自サイトの運営による「小売業の逆襲」が始まり、その差別化戦略の核であるPB商品の拡充が、結果的に物流施設の需要を大きく押し上げることになったのです。
余談ですが、2014年の日本経済は、必ずしも好況とは言えませんでした。しかし、その一方で、初めて1300万人を超えた訪日外国人による、2兆円以上に達する活発な消費マインドが、小売業の売上の下支えとなったのも事実でしょう。