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人手不足時代の物流戦略

お役立ち

2019年8月26日

物流施設利用に関するテナント意識調査 2019

大型の物流不動産マーケットが拡大し、ユーザーの裾野も広がっている。その一方で、eコマースの成長に伴う宅配便の増加や人手不足など、物流業界は変革期にある。そこでCBREは、初めて物流施設のテナントに対するアンケートを実施。ユーザー目線に立った物流施設のあり方と課題の分析を行った。

回答者の業種別分類
調査概要

回答者属性
日本で物流施設を利用する企業

調査方法
調査期間:2018年9月~10月
有効回答数:
全国271件 / 物流業191件 / 荷主企業80件

倉庫の新設・移転などの計画は?

倉庫の新設・移転などの計画は?

物流機能の拡充に積極的:拠点数も面積も「増やす」回答は55%

  • 倉庫の新設・移転などの計画を聞いたところ、69%の企業が、「移転・再編」または「増設」計画があると回答。
  • 何らかの計画があると回答した企業のうち、「拠点数を増やす」が63%、「面積を増やす」が78%。拠点・面積ともに「増やす」と回答した企業は55%を占めた。「面積を減らす」と答えた企業は、わずか2%にとどまった。
  • 個別の回答を精査すると、「拠点数を減らす」と答えた企業13社のうち12社は、縮小ではなく統合・集約などの前向きな移転を検討していた。

倉庫の新設や検討時に重視する項目は?〔立地・建物〕

庫の新設や検討時に重視する項目は?〔立地・建物〕

倉庫選択で重視する要件は、まず賃料、次に雇用を確保しやすい立地

  • 倉庫を選択する場合に、立地や建物の条件として重視する項目を聞いた。(3つまで選択可)
  • 最も回答が多かったのは、「賃料・管理費コスト」。「配送・輸送コスト」を選ぶ企業も相当数あった。
  • 注目されるのは、「通勤利便性や労働力確保に有利な立地」が2番目に回答数が多かったことだ。道路や配送などのアクセスよりも上位となったことは、多くの企業が雇用確保を重要視していることの表れといえる。
  • 「フロア面積」を挙げる企業は多いが、意外にもランプウェイを挙げる企業は少ない。もっとも、フロア面積の大きさを重視する場合、結果的にランプウェイの付いた大規模物件が選択される可能性は高い。

倉庫の新設や検討時に重視する項目は?〔設備・装備〕

倉庫の新設や検討時に重視する項目は?〔設備・装備〕

LMTの標準スペックはもはや必須、荷主企業では空調設備の重要度高い

  • 倉庫を選択する場合に、設備や装備の条件として重視する項目を聞いた。(3つまで選択可)
  • LMTの標準スペックといえる下記4項目が、全体の55%を占める最重要項目として選択された。
    ●天井高:5.5m以上 ●床荷重:1.5t/㎡以上 ●バース ●高床式プラットフォーム
  • 物流業と荷主企業で意見が分かれた項目は「空調設備」。物流業では第10位だが、荷主企業では第4位。荷主企業では、小売業を中心に倉庫内作業の比率が高いと推定される。そのため、従業員の作業環境をより重視する傾向があると考えられる。
  • カフェテリアや休憩スペースなどの福利厚生設備を選択した企業は、予想外に少なかった。ただし、小売業のように多くの従業員を抱える企業は、自前で専用のカフェスペースを設置するケースもある。

※LMT=大型マルチテナント型物流施設

倉庫の新設・移転で希望する立地は?

倉庫の新設・移転で希望する立地は?

物流業の希望立地は物流集積地、荷主企業の意向は分散

  • 何らかの移転計画がある企業に、どのような立地を希望するか聞いた。
  • 物流業では「物流集積地(賃料:中位)」の回答が58%と過半が集中した。もともと営業基盤があることなどにより、効率的に運営を進められると考えられる。
  • 一方で、荷主企業の希望立地は回答が分かれた。最も多い回答は「物流集積地(賃料:中位)」であるが、「都市部(賃料:高位)」が17%、「郊外(賃料:低位)」が26%、といずれも一定の割合がある。
  • 荷主企業は、商品構成や店舗展開の強みを、物流戦略にも反映しようとしている。そのため、立地選択においても、独自色が強く表れると考えられる。
  • LMTでは、過去は物流会社がテナント契約する割合は8割程度あったが、この比率は徐々に減り、荷主企業が直接契約するケースが増加傾向にある。それを踏 まえると、バラエティに富んだ立地に物流施設ができることが、テナントのニーズを捉えることになるといえる。

倉庫の新設・移転で希望する面積は?

倉庫の新設・移転で希望する立地は?

荷主企業は、規模でも小から特大まで希望が分散

  • 何らかの移転計画がある企業に、どの程度の規模の施設を検討しているかを聞いた。
  • 物流業では1,000~5,000坪が全体の60%を占めた。平均的な面積帯に希望が集まったといえる。
  • 物流業は、通常、複数の荷主の荷物を扱うことから、最大公約数である中間立地に、大きな拠点を希望する傾向。
  • 荷主企業では、立地選好と同様、面積帯でも希望が分かれた。最小の1,000坪未満の希望が23%と高い割合を示す一方で、最大の10,000坪以上の希望も 8%あった。
  • 荷主企業は、立地も拠点の大きさも希望はまちまち。企業の特色が物流戦略にも強く反映していると考えられる。
  • 荷主企業のニーズを取り込むには、1,000坪以下の小区画の設計も有効であるといえる。

倉庫の新設・移転で希望する面積は?〔三大都市圏比較〕

倉庫の新設・移転で希望する面積は?〔三大都市圏比較〕

近畿圏と中部圏で、拠点の大型化を急ぐ企業の割合が高い

  • 三大都市圏ごとに、移転計画がある企業の希望面積を集計した。
  • 首都圏に比べて、近畿圏、中部圏では3,000坪以上の大きな面積を希望する割合が比較的高い。特に中部圏は57%と多数を占めた。
  • 首都圏での拡張や再編が済んだ企業が、物流センターの運営手法を近畿圏や中部圏に持ち込んで、本格的な再編に着手していると考えられる。
  • 近畿圏や中部圏で大型の賃貸倉庫の供給が活発になったのは2016年後半から。そのため、物流センター機能の充足度は首都圏に比べてまだ低い。このことが、回答結果にも表れたといえよう。

倉庫を新設・移転する理由は?

倉庫を新設・移転する理由は?

「老朽化」が移転理由の第3位。拠点再編や荷物量の変化に次ぐ

  • 何らかの移転計画がある企業に、その理由を聞いた。(3つまで選択可)
  • 「拠点の集約・統合、再編」、「荷物の種類・量の変化」が上位に入ったことは、予想どおりの結果である。
  • 「老朽化、使いにくさ」が3番目に多い回答となった。現存倉庫が、昨今の物流合理化に適していないことを示している。
  • 日本国内では、1970年代に最も多くの倉庫が建設された。そのため、築50年に近づく倉庫も少なくない。新しいタイプの倉庫に対する需要は、潜在的にまだ多いといえる。
  • 「コスト削減」の回答数は4位。物件を選ぶ際に重視する項目では「賃料コスト」が最上位ではあったが(前出:倉庫の新設や検討時に重視する項目は?〔立地・建物〕)、移転の目的は必ずしもコスト削減ではないといえる。

物流戦略において現在の課題は?

物流戦略において現在の課題は?

雇用確保は最重要課題

  • 物流戦略において、課題と考えているものを聞いた。(3つまで選択可)
  • 予想されたとおり、倉庫作業員やドライバーの雇用確保が一番の課題に挙がった。物流業界では人材不足が著しいことが、政府統計にも表れている。
  • 採用難に伴う賃金の上昇や予定外の人員補充などにより、物流業界は人件費総額の膨張にも悩まされている。
  • その他には、多様な課題に回答が分散した。このことは、物流に関わる企業が、複雑で複合的な課題に直面していることの表れといえるだろう。

利用したい新技術や新サービスは?

利用したい新技術や新サービスは?

ロボット、AI、シェアビジネス。最先端の技術やサービスを活かす

  • 現在利用中、または今後利用したい技術や機能について聞いた。(3つまで選択可)
  • 「無人搬送機、物流ロボット」、「自動化設備」が2トップ。人手不足対策に有効と考えられる技術に、最も関心が集まった。
  • シェア・エコノミーに対する関心も高い。ただし、新しいビジネスゆえに、実際の使い勝手や費用対効果などの評価は未知数である。
  • 回答は全般的に分散し、どの技術やサービスにも一定の興味や期待が注がれている。労働集約型だった物流業界は、最先端の技術を活かすことにより、最先端の産業に生まれ変わる可能性を持っている。

物流施設利用に関するテナント意識調査2019|まとめ

拠点の集約・統合・再編や、荷物の種類や量の変化を要因として、多くの企業が物流センターの拡充や合理化を計画している。移転や新設を検討する場合、コストは物件選択の重要な条件であることは当然だが、決してコスト削減に注目しているのではない。労働力確保に有利な立地かどうかを最重要な要件に挙げている。人手不足対策に有効と考えられる、ロボットや自動化設備にも多くの関心が集まった。今後数年にわたって、人手不足への対応が物流業界の最大の課題であり続けるだろう。

物流業と荷主企業で回答が分かれた項目は注目に値する。物流業の回答者は、最大公約数である中間立地に、合理化に有効な大型拠点を希望する傾向がみられた。一方で荷主企業の回答者は、立地も規模も希望は千差万別。従業員を多く抱える作業環境を反映し、空調設備の設置を検討する企業が多いなど、設備面の要件にも違いが出た。貸主の開発戦略は、テナントターゲットをどこに置くかによって変える必要がありそうだ。

地域別にみると、近畿圏と中部圏で、拠点の大型化を急ぐ企業の割合が高い。合理化が遅れている地域の物流施設ニーズは、より切迫している。首都圏の物流整備が進んだ企業は、積極的に第二、第三の都市圏に物流改革を推し進めていくことになろう。また、いずれのエリアでも老朽化した倉庫はいまだ相当数あり、それら現存倉庫は昨今の物流合理化に適さない可能性がある。これらに鑑みると、多くの地域で新しいタイプの物流施設の供給が求められているといえそうだ。

シービーアールイー リサーチ
シニアディレクター高橋 加寿子

2002年シービーアールイー入社、2008年からリサーチに異動。オフィスマーケットデータベースの構築、定期レポートの発行に携わった後、2013年から物流施設のリサーチ業務の専任担当。各種レポートの執筆とともに幅広いクライアントに対してマーケットの考察を提供している。

高橋 加寿子

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2019年夏季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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