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プロロジス|物流施設クロニクル

日本発のマルチテナント型物流施設が米国に逆輸入
ECの進展でグローバルスタンダードの可能性 

エグゼクティブ ディレクター / 設計担当 / コンストラクション・マネジメント部 部長 荻原 康利

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エグゼクティブ ディレクター / 設計担当
コンストラクション・マネジメント部 部長
荻原 康利

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日本の先進的物流施設開発をリードしてきたプロロジス

当社は1983年に米国で産声を上げました。その後、物流不動産開発のリーディング・グローバル・プロバイダーとして、米国内はもちろん、欧州、アジアの計19ヶ国で、約3,300棟の物流施設を展開しています。日本においては1999年の進出以降、2002年には東京江東区でDHL様専用の物流センターを開発。2003年には先進的物流施設としては日本初となるマルチテナント型物流施設を竣工し、デベロッパーとしての開発、運営を含めたサービスを展開しています。2018年7月末現在で93施設、延床面積にして623万㎡の開発実績を誇っています。また、2013年にはJ-REIT市場に上場し、総額約5,000億円の資産を保有するまでに成長してきました。

とはいえ、日本進出に際しては大きな課題を抱えていました。それは土地の広さとそれに伴う施設仕様の日米の違いです。米国においては、広大な土地に平屋の倉庫を建設するのが当たり前です。また、同じ敷地を複数社で利用いただく場合には、そのカスタマーごとの施設を作るのが一般的です。しかし、日本で物流適地と考えられていたエリアには開発可能な土地は少なく、同等の面積を取得するには、コストの面からも容易なことではありませんでした。土地を有効に活用するためには、容積率上限まで床面積を確保する多層階の施設とする必要があります。しかし、1階だけにしかトラックバースがない従来のボックス型の施設では複数のカスタマーにご利用いただくマルチテナント型施設としては、使い勝手が良くありません。そこで、トラックが走行できるランプウェイを併設し、すべての階に乗り入れられるようにし、どの階も平屋と同様にお使いいただける施設として計画しました。これにより1つの建物に複数のカスタマーが同時に入居いただいても、それぞれにとって使いやすいマルチテナント型施設になりました。トラックが各階に行くことができるので、荷物用エレベータや垂直搬送機などの設備が不要となることから、純粋に倉庫として利用できる有効面積の割合が格段に高くなります。加えて、人員の配置人数、フォークリフト数、必要な設備の保守点検費等を考慮すると、コストメリットが高く経費削減を図ることが可能になります。

また作業効率の点では、荷役にかかる時間がボックス型の施設と比較して約半分との試算もあるほどです。さらにセキュリティやワーカーのマネジメントが行いやすい、雨にぬれずに荷さばきが可能など、様々なメリットがあるのが特長です。当時、同様の施設はすでに日本にありましたが、賃貸用物流施設というビジネスモデルを日本に浸透させ、かつ開発し続けたのは、日本では弊社が最初になります。弊社が開発してきた施設は、今では日本の物流施設のスタンダードになっています。

日本固有の進化を遂げたマルチテナント型物流施設

プロロジス

2002年の東京都大田区、および成田での用地取得とともにマルチテナント型施設の設計がスタートしたわけですが、開発計画を上申した際、米国本国における評価は芳しいものではありませんでした。

米国では、高速道路沿いの広大な敷地に平屋で建てるのがスタンダードです。しかも輸送に使われるのは53フィートのコンテナセミトレーラーが一般的で、ヘッドの部分を合わせると70フィートほどもあります。このトラックは日本の10トン積のトラックの1.8倍もの荷を載せることができます。その米国基準が頭にあるので、「ランプウェイで事故の危険性はないのか」「渋滞しないのか」「同じ方向にくるくる回っていると、ドライバーが酔うのではないか。タイヤは片減りしないのか」といった安全性に対する懸念のほか、「上層階は賃料を安くしないといけないのか」といった運営上の懸念まで様々な指摘がなされ、「クレイジーだ」とさえ言われていたそうです。

しかし様々な検証と検討を行い、なんとか米国本社を説得し無事に着工へとこぎつけました。こうして2003年に竣工したのが、「〔旧〕プロロジスパーク成田」と大田区の「〔旧〕プロロジスパーク東京」でした。幸い、ヤマト運輸様や日本通運様などの大手企業に汎用性や作業効率の高さを評価して入居していただいたことで認知度が高まり、上々のスタートを切ることができました。今でこそ物流適地には当たり前のように建ち並んでいるマルチテナント型施設ですが、誕生までにはこうした紆余曲折があったのです。

その後、ご利用いただいているお客様から様々なアドバイスやご意見をいただき、検証を加えながら精査した結果、2007年にプロロジスの施設設計の基本となる「プロロジス設計基準書」をまとめることができました。今では一般化しているランプウェイの形状や、床荷重1.5トン、梁下5.5m、柱のスパン10mといった基準はこうして生まれたのです。また同基準書では、耐震などのBCPに対する考え方や、太陽光発電といった環境配慮などについても同様に標準化し、当社の施設開発の基準としています。昨年に2017年版を発行しましたが、現在も改訂を継続しており、常に先進的施設づくりを目指しています。

eコマースの発展を背景に米国に逆輸入されたマルチテナント型

このように純国産の施設として誕生・発展してきた多層階のマルチテナント型物流施設ですが、この度、米国に逆輸入されることになり、我々も設計サポートに参加しました。それが「Prologis Georgetown Crossroads」です。場所はシアトルの中心地から2~3マイルと非常に近く、ダウンタウンから車で5分ぐらいの距離です。もともと当社が所有していたいくつかの土地の一つを再開発した物件で、以前は駐車場として利用していた場所です。

これまで述べてきたような米国の主流である郊外型物流施設ではなく、住宅や商業施設として利用できそうな都市部に近いこの立地に、なぜ物流施設を開発するという発想が生まれたのか。その背景となっているのが、eコマースの急速な発展です。

eコマースビジネスにおいて、小売店を経由せずに消費者に直接商品を届けるようになった現在、物流施設は単なる配送センターではなく、受注から決済に至るまでの業務全般が行えるフルフィルメントセンターとしての機能が求められています。こうした中で、流通加工作業の効率化を促す設計、設備を導入した施設開発が行われるようになりました。また、翌日はもちろん、当日配送さえも当然のように要求される昨今の風潮から、eコマース事業者は、消費者により近い都市部に物流施設を求めるようになったのです。

個包装対パレット、高在庫回転率、多品種対応、返品対応等のため、eコマース事業者が必要とする物流施設内のスペースは、従来型の店舗販売をするカスタマーの約3倍と言われています。しかし、都市部における土地の拡張は難しいのが現実であり、それにより多層階物流施設の需要が増加してきたのです。このように、消費者への迅速な商品配送に対応可能な立地にある施設のことを、当社では「Last Touch®」と称しています。

例えば先頃、アマゾンやFedExがサンフランシスコの都心部から1時間ほどの距離にあるトレーシーに拠点を構えたことからもわかる通り、消費者により近い立地に施設を持つことが以前とは比べ物にならないくらい重要になってきています。しかし、こうしたニーズに応えるには、平屋では施設延床面積がどうしても小さくなると同時に、コストも膨らむことになります。そこで注目を集めることになったのが、床面積が広く取れる多層階のマルチテナント型施設なのです。「Prologis Georgetown Crossroads」も当初は平屋建ての予定だったそうですが、「Last Touch®」の観点から、多層階になりました。

「Prologis Georgetown Crossroads」は、先にも述べた通り、シアトルの中心部から約5分、幹線道路にすぐにアクセスできる恵まれた立地に開発される3階建ての多層階マルチテナント型施設で、3フロアの合計延床面積が54,676㎡となっています。1階は22,206㎡で有効高8.5m、62個のドックシェルターを備えています。2階は専用のオフィスがあり15,824㎡、38以上のドックシェルターを備え、有効高は7.3mです。3階は16,646㎡で専用オフィスと執務スペースがあり、有効高は4.8m。2階へは大型のトレーラーが上がれるスロープがあり、3階へはフォークリフトが荷を持ったまま昇降できる荷物用エレベーターでグランドレベルからのアクセスが可能になっています。また多層階の駐車スペースを用意した3階には、ロビーやカンファレンスルーム、休憩室、シャワーなどの共有アメニティスペースも完備しています。各階とも分割が可能であり、カスタマーの様々なニーズにお応えすることができます。竣工は今年の10月を予定していますが、引き合いはかなりあると聞いています。

米国にも建築のエンジニアはおりますが、なにぶんにも多層階の施設を手がけるのが初めてのことなので理解しきれていない点が多く、我々がサポートに入ることになりました。具体的にアドバイスしたポイントはいくつもありますが、その一つがスロープです。大型トレーラーを考慮してやたらと長く緩やかだったスロープを適正な長さに変えています。また、上層階の床構造についても、ただ荷物を置くだけでなく、フォークリフトの使用を前提として、動荷重に配慮したものに変更しました。柱のスパンも平屋の場合とは大きく異なるため、これも修正しました。さらに設備の配線等についても、カスタマー毎に分割して供給しやすいように配管ルートの変更を行いました。

彼らにとっては前例がないことなので、床荷重や柱のスパンなどは始めから念頭にないことが多く、改めて多層階施設開発の難しさを目の当たりにした気がします。同時に、外国サイズのマルチテナント型施設開発のために、新たな基準づくりが必要であることを痛感した次第です。

余談ですが、米国と日本の一般的な施設の違いをいくつか挙げてみましょう。米国ではあまり地震がないので、地震における建物の変形などを考慮する必要がなく、外壁は10m以上もある長い建材を使って建てられています。火災の際には基本的に自分たちで消すという発想でありスプリンクラー設置は基本となりますが、防火区画はありません。

また米国では、内装はスケルトンで、すべてカスタマー負担なので、共有部を作り込むという発想がありません。レストランやカフェのような厚生施設も、日本では入居カスタマーがシェアしていますが、そういった設備は見られません。日本と比べると、全体にシンプルな設計という印象が残ります。

米国の一般的な物流施設と日本のマルチテナント型物流施設

米国の一般的な物流施設と日本のマルチテナント型物流施設

近い将来、日本発の施設が 世界の物流を席巻する可能性も?

これまでの物流の歴史を振り返ると、米国では広大な国土を背景に、郊外にハブとなるような大型施設が数多く作られてきました。しかし、今日のようなeコマース全盛の時代になると、このような施設では対応が難しく、都市部に近いエリアに拠点を作らざるを得なくなったのです。一方、かつては原材料を輸入して製品化後に輸出するという物の流れだった日本が、今は製品を輸入するようになり、それに伴い倉庫需要にも変化が訪れました。eコマースビジネスの台頭などによって市場のニーズが少品種大量生産ではなく多品種少量生産に変わったとき、従来の経済構造に合わせた物流施設では対応できなくなりました。拠点の集約が必要になった際に、大型の物流施設が登場したのです。その変化が、今日のようなマルチテナント型施設が隆盛を迎える要因になったのだと言えます。言い換えれば、eコマースビジネスの進展こそが、マルチテナント型物流施設発展の原動力だとも言えるのです。

海外におけるマルチテナント型の施設開発が、今後どのようになるかはまだわかりませんが、すでに米国内において、当社だけでもニューヨークやサンフランシスコ、ニュージャージーなどで計画が進んでいます。また欧州のパリやロンドン、中国でも多層階に対するニーズが顕在化しています。

どの国であれ、都心部に近いエリアにはそう大きな土地が余っているとは思えません。ですが、eコマースビジネスが今後さらに拡大することはあっても、衰退していくとは考えにくいでしょう。日本発のマルチテナント型物流施設が、世界の物流を支える核となる日は、そう遠くはないかもしれません。

Prologis Georgetown Crossroads

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上記内容は BZ空間誌 2018年秋季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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