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日本郵便株式会社

ケーススタディ

2016年11月30日

大規模・機械化郵便局の開発によるネットワーク再編で生産性を向上。
事業の多角化で収益性向上も目指す日本郵便。

2015年4月、日本郵政グループが中期経営計画として示した「新郵政ネットワーク創造プラン2017」。その中でも、郵便物・流事業に関して日本郵便が掲げる「郵便・物流ネットワークの再編計画」は、これまでの同社の郵便ネットワークを大きく改変し、生産性の向上やコスト削減、そして、今後の成長基盤を構築するものと目されている。今、日本郵便は、どのように変わろうとしているのか。同社の今後の成長戦略について、郵便・物流施設部企画役である若松幸嗣氏に話を聞いた。

若松幸嗣

郵便・物流施設部 企画役
若松 幸嗣 氏

生産性向上を目指した郵便・物流ネットワーク再編計画

2007年10月、郵政民営化に伴い誕生した日本郵政グループ。グループの経営戦略を策定する日本郵政を筆頭に、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵便によって構成されている。なかでも日本郵便は、我々にとってもっとも身近な存在であるとともに、はがきや封書、小包などの取扱口数では圧倒的な物量を誇る、日本最大級の物流企業でもある。

その同社の動向が、近年、物流マーケットの中で注目されている。その要因となっているのが、同グループが2015年4月に公表した中期経営計画における、「郵便・物流ネットワークの再編計画」が、いよいよ現実のものになってきたからだ。再編計画では、2015年から2017年までの3年間に、1300億円の巨額な費用を投じて、区分作業拠点を集約することが明記されているのである。

「2012年度にスタートしたネットワーク再編構想が、ようやく本格的に稼働し始めました。大規模な機械化施設を作る最大の目的は、コスト削減を含めた生産性向上にあります」と説明するのは、同社の郵便・物流施設部企画役である若松幸嗣氏だ。

機械化の推進で効率化とコスト削減を同時に実現

現在、日本全国には2万4000を超える郵便局がある。その多くは、我々が日常、街中で目にする窓口業務を専門とする郵便局だが、その他に窓口業務に加えて郵便物や小包の集荷・配達をする集配局、さらにその上流に、区分・分配機能を担う地域区分局がある。地域区分局は、いわばハブの役割を果たす要の拠点であり、各都道府県におおむね1局、エリアが広大な北海道や大都市を有する都府県には複数が設置されており、現在、全国に70局が存在している。今回、大規模・機械化郵便局として開発が進められるのは、すべてこの地域区分局である。

従来、ある地域で集められた郵便物は、一度、集配局に設置された区分機で区分け作業が行われ、さらにその地域の地域区分局でも、機械による区分が行われている。こうしてより分けられた郵便物は、他の都道府県にあるそれぞれのエリアの地域区分局に輸送され、集配局に分配し、各家庭や会社に配達されている。

だが、今回の再編では、集配局に分散配置されていた機械を地域区分局に集中配置するとともに、新たに大型郵便物用の区分機を導入し一括で処理するという。また、これに伴い、大型地域区分局の新設が行われる地域の一部では、従来の地域区分局の配置を見直し、地域区分局の統合・集約を行う予定である。「つまり、投資を集中し、機械化を推進することで、これまでの人力に依存したオペレーションを簡素化することが狙いです。現在、76%に留まっている機械処理率を、再編後には95%まで高めることで、安定したサービスを提供できるとともに、人件費全体のコスト削減が可能になります。特に、お中元期や年末年始など時期により波動性の高い郵便物や荷物処理のために確保しなければならない短期労働力の省力化にもつながります。また、長距離輸送を伴う地域区分局間の配送も効率化できることになります」と、若松氏は力説する。

通販の拡大で増加する小包処理能力の拡大が急務に

日本郵便が今回の再編に取り組む一因となっているのが、荷物の増大である。郵便物等引受物数の推移を過去と比較すると、2005年度の総数が約248億通であったのに対し、2015年度は約221億通と、全体としては減少傾向にある。だが、その内訳を見ると、小包便である「ゆうパック」は、約2億4700万通から2倍強の約5億1300万通に、書籍や雑誌などが送れる「ゆうメール」は、約18億2800万通から約35億3900万通へと、大幅に増加している。つまり、引受物数の半分以上が、はがきや通常の封書と比較にならないほど大きな荷物で占められているのだ。

その背景にあるのが、インターネットをはじめとする、通販の増大であることは言うまでもないだろう。これらの小包等が増加したことで、集配局はもちろん地域区分局のスペースが手狭になり、作業が行い難いばかりか、一部の局ではスペースを確保するために、分室として倉庫を借りるなど、非効率性が顕在化してきたのだ。

また、荷物の増加は輸送するトラックの大型化や、便数の増加につながる。だが、1970年代頃まで郵便物の輸送は鉄道が主流であり、このため地域区分局は各県主要駅の駅前などに立地している拠点が多い。そのため、今日では市街中心部に毎日、何十便もの大型車両が出入りすることになり、周辺道路の混雑や歩行者の安全確保など、周辺環境への影響が少なからず発生する状況になっている。

つまり、郊外地域への大型地域区分局の新設は、事業の生産性向上だけでなく、地域環境への配慮という観点からも必然であり、経営上の重要課題だったのである。

インターチェンジ付近の物流適地に建設される新局

今回の再編計画において、既に15の地域区分局の建設計画が発表されているが、すべてがトラック輸送に便利な高速道路のインターチェンジ付近という、いわゆる物流適地に位置している。その先鞭をつけたのが、2015年5月に開局した「東京北部郵便局」である。場所は埼玉県和光市新倉、東京外環自動車道、和光北インターチェンジから目と鼻の先だ。

15の新局のうち、同局だけが2015年開局と、他局と比較して早期に建設されたのには理由がある。これまで首都・東京の郵便は、江東区にある「新東京郵便局」と、府中市の「東京多摩郵便局」の2局体制だった。だが、都内の物流量が増加の一途をたどっていたため、10年以上前から新局の必要性が訴えられていたのだ。だが、土地探しが難航するなど計画が思うように進まず、BTSによる賃借となったという経緯がある。ちなみに、他の新局の土地・建物は、基本的に自社所有である。

こうして東京エリア向けの3つ目の地域区分局として、晴れて誕生した東京北部郵便局は敷地面積3万2000㎡に7万8000㎡の床面積を有するメガ施設である。内部には、最新の書状区分機やパケット区分機など、多くのマテハン機器が設置されている。

「実は、地域区分局は長い期間にわたって利用されており、一部の局では老朽化が目立っていたのも事実です。その意味でもすべての新局は、大震災などの災害にも耐えられる、一般の郵便局よりも高い耐震性能を確保するなど、事業継続や早期の事業復旧が図れるようにしています」(若松氏)。

余談だが、今年4月に発生した熊本県の震災時には、熊本県の地域区分局である熊本北郵便局のバックアップを、福岡県の新福岡郵便局で行った経緯がある。こうした近県の郵便局による業務支援体制の強化も、今回のネットワーク再編の狙いの1つとなっている。

新たなサービス展開を目指す物流ソリューション事業

今回のネットワーク再編により、日本郵便が新たに取り組もうとしているサービス。それが「物流ソリューション事業」の展開である。物流事業の展開に適した地域に新設される地域区分局を対象に、物流ソリューションセンターとしても活用し、主に通販事業者を対象とした新サービスを提供するのである。具体的には、局内に在庫を預かり、仕分け、ピッキング、封入、ラベル貼付などを行う。つまりは3PL事業者と同様のサービスを提供するのだ。しかも、一般の3PL業者は、宅配業者の集配時間に合わせてしか出荷できないが、日本郵便の集配局内なら、注文からわずかな時間で出荷できるというメリットがある。つまり、通販における川上から川下までのサービスを、一気通貫で提供することで、スピードアップが図れるという競争優位性があるのである。

また、再編により地域区分機能を新設局に移管したかつての地域区分局は、集配局として存続することになる。ここで注目されるのが、既存の集配局も含めた、区分機の撤去、および区分け作業用に使われていたスペースの利用方法だ。

日本郵便では、この空きスペースの有効活用と、新たに部外賃貸などの不動産活用も検討している。例えば、さいたま中央郵便局では、認可保育所に貸し出されている。まさに民営化したからこその、多角的な事業展開といえるだろう。「生み出した空間は、増大する荷物の取り扱いや配達のための作業用など、あくまでも郵便・物流用のスペースとして有効活用することが優先」とする若松氏だが、今後、こうした新たな事業展開が多方面に広がることは想像に難くない。

発展途上の郵便・物流ネットワーク再編、さらなる新局開発も視野に

今回、発表された15の新設局について、若松氏は「将来的な荷物の増加量も考慮して、新設する地域区分局への統合・集約効果が高いと考えられる地域を優先的に検討した結果が15だったということで、今後の検討によっては、さらに増える可能性もある」と語る。つまり、人口減少時代を迎えた現在でも、統合・集約の効果が見込まれる地域では、まだまだ検討段階にあるということである。

「機械化により、従来の複雑なオペレーションを克服し、より生産性を高めることで、質の高いサービスが提供できる郵便・物流ネットワークを構築することが理想像です」と若松氏は語る。いずれにしても、巨大企業だからこそ可能だったといえる今回のネットワーク再編。一般ユーザーにとっても影響が大きな郵便事業だけに、今後の展開に注目したいところだ。

上記の記事の内容は BZ空間誌 2016年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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