「物流」は単なるコストセンターにあらず。物流を制する企業が売り上げを制する。
顧客に寄り添い、物流不動産仲介の付加価値サービスを提供する、CBREのロジスティクス・アドバイザリーグループへのインタビュー。前編に続く今回の後編では、物流施設の立地選定支援をはじめとした各種サービスの概要、そして実際のアドバイザリーの参考例をご紹介します。最後には、今後の意気込みも語ってもらいました。
――前回、「立地選定支援」「労働力分析」「レイアウト作成支援」「物流コンペ支援」といった多様なサービスがあることをお伺いしました。それぞれの概要をお伺いしたく、まずは立地選定支援について教えてください。
立地選定支援は数多くのプロジェクトで手掛けており、単なる物流拠点の移転・新規開設の際のニーズにとどまらず、「今後のビジネスの見通しに合わせて物流拠点のサイズ・立地を適正化したい」などといった、より戦略的なご要望にもお応えするサービスです。
流れとしては、まずお客様の出荷・配送データなどをもとに、新設拠点や集約統合の候補地を分析して配送重心地を特定。その後、弊社の仲介営業担当者と連携しながら、重心地付近にある実際の物件の中から、ご希望の坪数や入居時期・温度帯等の条件がフィットする物件を一覧・比較表にしてご提示します。候補物件は地図上のプロットとしてもお示しするので、全体感がつかみやすいと思います。
また、ただ物件をご提案するだけでなく、ある程度候補物件を絞り込んだ後には想定配送コストの分析も実施。実際の配送ルートがどのようになるのか、必要な車両台数はいくつか、月間でいくら費用がかかるのかなどをシミュレーションし、お客様の拠点選びの判断材料としていただいています。
――数あるサービスの中でも、立地選定支援が最もコアとなるのでしょうか。
おっしゃる通りです。ロジスティクス・アドバイザリーでは物流戦略の策定支援を主軸にサービスを提供しており、その要となるのが拠点配置の検討となります。
候補物件の提案にあたっては、国内不動産仲介で最大級のシェアを誇る弊社の豊富な物件情報、多様なオーナーとのリレーションをもとに、真にお客様本位の目線で行います。仮にこのような業務をデベロッパーが行うと、往々にして、その企業の保有物件を勧める流れになるかと思います。一方で我々のサービスはそのような心配がございません。これは、物流不動産仲介に軸足を置くCBREの強みでしょう。
また、サービスは単独で行うというよりも、いくつかのサービスとともに複合的に提供することが多いですね。これはロジスティクス・アドバイザリーのサービス全般に言えることですが。例えば、立地選定支援とセットでよくご提供しているのが労働力分析。拠点配置のシミュレーションをする過程で、対象エリアの労働力人口や近隣の物流不動産情報をもとにした、雇用リスクの分析を交えることがあります。
コンビニ・チェーンA社の事例
背景
- 今後のビジネス予測に合わせた拠点サイズと、立地について適正化を検討。
- 計画上、不動産・ロジスティクス・建築とそれぞれに専門性分野の知見を要した。
- 物流部門は日常業務の対応で人手不足。業務領域を定めCBREに支援を依頼。
- 事前のCBREによる推定で、配送パターンの見直しと固定費削減により、少なくとも数千万円/月間規模のコスト削減が見込めると判明。
CBREのサービス
- 店舗納品データから配送重心地を特定。候補物件をリスティング。
- 既存拠点の詳細データを分析し、あるべき拠点のブロックレイアウトを作成。
- マテハン・メーカー候補の紹介や打合せをファシリテート。
- 物流業務の委託先選定においては、セカンドオピニオンとして助言。
- その他、プロジェクト・プラン作成などの全面バックアップも。
結果
- 複数拠点の見直しで、固定費は約2億円/年間のコスト減として投資計画を承認取得。
- 横持ち、人員配置の効率化により、持続可能な業務が期待効果として得られた。
◎ =CBRE主体で実施 〇 =顧客と共同で実施 △ =助言/サポート
| サービス | 立地選定支援 | 労働力分析 | レイアウト作成支援 | 物流コンペ支援 |
|---|---|---|---|---|
| 支援スコープ | ◎ | ◎ | ○ | △ |
立地選定支援 分析結果のアウトプットイメージ
――雇用リスクの分析というと、具体的には何を行うのでしょうか。今度は労働力分析についてお聞かせください。
仮に立地選定支援の過程で、重心地が圏央道エリアのとある市町村に特定されたとしましょうか。人手不足が叫ばれて久しい昨今、そこに物流施設を置いたとして、働き手が集まりやすいかと言うと、必ずしもそうではありません。仮に数百人もの人手が必要な大規模施設を開設するならば、その持続可能性を慎重に考える必要があります。
一方で、より首都圏の中心部に近い物件ほど労働力は確保しやすくなりますが、当然、賃料水準は上がります。このように、拠点配置を考えるうえでは物流の効率性や維持コスト、雇用のしやすさを総合的に検討する必要があります。
そこで労働力分析では、候補物件の周辺エリアにおける総人口や男女比、そして近隣大型拠点の総数、物流作業の求人数といった詳細な情報をリサーチし、数値やプロット、ヒートマップなどで可視化。パートタイム労働者の雇用リスクについて定量的にお示しするとともに、物流施設の賃料水準も考慮しながら、お客様のご要望を鑑みて、総合的に見てベターだと思われるエリア・物件選定をサポートしていきます。
――よりマクロ的な分析を行うわけですね。他方、レイアウト作成支援は、特定の物流施設を対象とした限定的な作業に感じます。こちらのご説明もお願いします。
レイアウト作成支援はお客様のご要望のもと、倉庫機能や面積などの適正化を図るサービスです。弊社が仲介した物件に対して行うこともあれば、お客様がすでに利用している物件に携わることも。庫内の全体的なゾーニングのイメージを作ったり、もう少し詳細に詰めたレイアウト図面を作成したりと、お客様が物件の運用をイメージしやすい資料としてアウトプットします。
外資系原材料メーカーB社の事例
背景
- C社は原材料を輸入し、国内工場で加工した後、倉庫へ格納。国内外に納品をされるビジネスを営む。
- 以前、物流費の抑制、拠点収容キャパシティや物流業務の品質向上、物流管理体制の強化といった課題解決のため、委託先切り替えの物流コンペを実施。
- しかしRFPの要件設定や評価基準に改善要素が多かった。
CBREのサービス
- 委託先選定に際してのRFP(提案依頼書)再作成を支援。特に、要件定義~評価までの項目で、必要に応じひな形や内容の助言提供を行った。
- 立地選定支援や労働力分析による拠点配置シミュレーションを実施。立地評価を支援。
- 新規拠点の建屋デザイン、造作要件整理、面積算出、庫内レイアウトを準備。その上で、概算コストを算出。
- 業務効率化の一環で、倉庫作業の分解、工数算定や必要人員の評価を実施。保管マテハンを再検討(委託先アワードまでを支援)。
結果
- 投資利益率や損益計算、資本的支出等の資料を作成、APACレベルで投資承認取得。
- 拠点重心地の検証から、総配送距離は約20%を削減。
- 総物流費としては約5%の削減見込み(ただし、物流業務の品質面でグローバルレベルの向上前提)。
◎ =CBRE主体で実施 〇 =顧客と共同で実施 △ =助言/サポート
| サービス | 立地選定支援 | 労働力分析 | レイアウト作成支援 | 物流コンペ支援 |
|---|---|---|---|---|
| 支援スコープ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
レイアウト作成支援 アウトプットイメージ
サービスの中ではマテハンなど、物流自動化設備の選定支援も行っています。近年、大半のお客様からご相談をいただくのが、実はこの自動化について。自動化前だと、庫内に保管棚を並べ、作業員が入庫やピッキングを徒歩・手作業で行うなど労働集約的な運用方法になりますが、そこにロボットを導入することで何人分を省人化できるのか、作業や取り扱う製品に適した設備はどのメーカーのものを選べばいいのかなどを助言しています。
ご提案にあたっては当然、庫内のスペックも考慮した効率化策を考えます。例えば、国内におけるマルチテナント型物流施設の梁下有効高は5.5mがほとんどですが、一般的な保管棚の高さはせいぜい1.8m程度。したがって上部空間が未活用となっている場合が多いですが、そのようなケースでは保管・作業効率を高めるため、ラック内を3次元移動して上部の保管物へも容易にアクセスできるような、シャトル型ロボットの導入をご提案することがあります。
――真野さんは大手マテハンメーカーでのキャリアがあり、その領域にはお詳しそうです。
当時も実際に自動化の提案をしていたので、その経験が今に生きていますね。ただし、倉庫の自動化市場は日進月歩です。特に近年では、中国企業の自動化設備が存在感を増し、数多くの製品が生まれています。常に最新の情報を得るべく、ロジスティクス・アドバイザリーのメンバーで物流関連の展示会に行ったり、メーカー主催のウェビナーへ積極的に参加したりして、グループのナレッジを溜めるようにしています。お客様へより良いご提案ができるように、リサーチは欠かせません。
――たゆまぬ知識のアップデートが必要かと思います。サービス内容の話に戻るのですが、最後の物流コンペ支援では、どのような業務を行っているのでしょうか。
物流コンペとは荷主が物流業務の委託先を選ぶ際、複数の物流会社から業務の提案内容を募り、その評価を通じて委託先を決めるプロセスです。我々ロジスティクス・アドバイザリーグループが提供しているのは、そのノウハウ。荷主側としてはあまり頻繁に行うようなイベントではないので、どのような委託先候補がいるのか、委託の要件定義をどうするかなど、わからないというお客様が多いのです。
とくにネックとなるのが、荷主側から各物流会社へ提供する、物流業務の依頼要件をまとめたRFP(提案依頼書 )の作成です。情報不足、あるいは不正確なRFPだと、物流企業側は受託しようとする業務の実態がわからず、予備費などの費用を見積もりに上乗せせざるを得なくなったり、提出した見積もりが適正な水準から乖離したりしてしまいます。
一方で我々は、いずれのメンバーも物流会社での業務経験があり、どのような情報があれば精度の高い見積もりを出せるか、委託先の目線で把握しています。必要な入荷・在庫データや物流の作業項目を洗い出したり、ときには荷主であるお客様がそもそも把握していないようなデータをピックアップしたりして、RFPの作成を支援します。
もちろんその後、各物流会社からの提案書のとりまとめや、プレゼンテーションのアレンジメント、見積もりの比較検討などもサポート。委託業務の効率化や、荷主企業内における説明責任も担保したうえで、実に1年以上かけて選定プロセスを支援した事例もあります。
――まさに、物流業務の成功に向けて、クライアントとともに併走するわけですね。本日は、ロジスティクス・アドバイザリーのサービス概要がよくわかりました。最後に、今後の意気込みをお願いします。
我々がお手伝いさせていただいているプロジェクトは、物流の効率化やクオリティの向上、コスト削減などに資するものですが、物流業務の変革が企業にもたらす価値は、そのような言葉では捉えきれません。一般的な事業会社の物流部門といえば、かつては単なるコストセンターとして見なされ、営業部門などと比べると、いささか注目されづらい存在だったと思います。例えば、製造業であれば生産拠点の構築や製品開発に重点が置かれ、物流へ優先的に投資する動きはなかなか見られませんでした。
しかし、昨今は事情がだいぶ変わってきています。自社の製品が正しい数量で期日通りに届けられなければ、顧客との信頼関係に影響を及ぼす懸念があります。ECなどをイメージするとわかりやすいと思いますが、適切に物が届くということが、顧客の信頼獲得、リピート率向上につながります。「物流を制する企業が売り上げを制する」といっても過言ではありません。
このような多大な可能性を秘める企業の物流部門・物流機能を、企業価値を底上げするプロフィットセンターとして、さらに飛躍させていく――。我々はロジスティクス・アドバイザリーの業務を通じ、今後もそのお手伝いをしていきます。
ロジスティクス・アドバイザリーメンバー
シービーアールイー株式会社
アドバイザリーサービス|リーシング
ロジスティクス・アドバイザリー
アソシエイト ディレクター
三瓶 政人
2016年に当社へ入社後、不動産仲介の付加価値サービスとして物流アドバイザリー業務に従事。20年超のキャリアを活かし、物流現場の改善提案から物流施策の立案まで多岐に渡るクライアントニーズに対し支援を行っている。
入社以前は外資系エクスプレス/3PL会社において、多数の物流オペレーションの営業企画/立上げ/現場管理を行う。特に、プロジェクトマネージャーとしてBTSの企画/立ち上げや新規物流ソリューション立ち上げに幅広い経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
外資系3PL / 外資系アパレル / 外資系情報通信 / 外資系通信機材 / 外資系雑貨品
シービーアールイー株式会社
アドバイザリーサービス|リーシング
ロジスティクス・アドバイザリー
シニアスペシャリスト
野中 哲也
2020年に当社入社後、不動産仲介の付加価値サービスとして物流アドバイザリー業務に従事。その経験を活かしクライアントの物流不動産戦略をサポートしている。
入社以前は日系の3PL企業で17年間勤め、プロジェクトマネージャーとして、国内外の数々の小売業、製造業の3PL新規営業~物流センター設計~立上を経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
国内大手ガス会社 / 国内高級食品スーパー / 国内ホームセンター / 国内自動車部品メーカー / 国内切削工具メーカー
シービーアールイー株式会社
アドバイザリーサービス|リーシング
ロジスティクス・アドバイザリー
シニアスペシャリスト
真野 義一
2023年に当社入社後、不動産仲介の付加価値サービスとして物流アドバイザリー業務に従事。物流におけるクライアントの課題に対し、寄り添ったサポートを行っている。
入社以前はマテハンメーカーに15年勤めソリューション提案の経験があり、前々職では大手3PL企業に7年勤め現場、立上げ、営業を経験。あらゆる視点から物流センターの設計を多数行った経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
国内3PL / 国内食品スーパー、食品卸 / 国内ドラッグストア / 国内アパレル / 国内ホームセンター
シービーアールイー株式会社
アドバイザリーサービス|リーシング
ロジスティクス・アドバイザリー
スペシャリスト
佐々木 亮
2025年に当社入社。入社以前は日系の3PL企業で19年間勤め、プロジェクトマネージャーとして、国内外のヘルスケア領域の顧客を中心に、3PL新規営業~物流業務設計や業務立上の経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
国内外医療機器メーカー / 国内医療機器商社 / 国内医薬品商社 / 病院 / 調剤薬局 / 国内化粧品 / 国内化学メーカー



