物流拠点の立地選定からレイアウト作成支援まで。物流不動産仲介における「付加価値」とは?
急激な為替変動、エネルギー・原材料価格の高騰、労働力人口の減少――。国内経済を取り巻く外部環境が著しく変化しつつある中、多くの企業において、物流戦略見直しのニーズが高まっています。物流拠点の移転や新規開設にあたっては、これまで以上に多角的な視点が必要となりました。こうした中、CBREでは企業が抱える物流課題に対し専門的なサポートを行う、ロジスティクス・アドバイザリーというサービスを提供しています。今回は同サービスを担うチームメンバーに、その業務内容を聞きました。
2023年に当社入社後、不動産仲介の付加価値サービスとして物流アドバイザリー業務に従事。物流におけるクライアントの課題に対し、寄り添ったサポートを行っている。
入社以前はマテハンメーカーに15年勤めソリューション提案の経験があり、前々職では大手3PL企業に7年勤め現場、立上げ、営業を経験。あらゆる視点から物流センターの設計を多数行った経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
国内3PL / 国内食品スーパー、食品卸 / 国内ドラッグストア / 国内アパレル / 国内ホームセンター
――まず、ロジスティクス・アドバイザリーのサービス概要を教えてください。
当社CBREにおいて、物流不動産の賃貸仲介で業界最大級のシェアを誇るのが、アドバイザリー&トランザクションサービス インダストリアル&ロジスティクスサービス(以下、ILS)という部門です。北海道から九州まで約70名もの営業担当者を配しているのですが、担当者が対応するお客様の中には、単に物件を探しているだけでなく、「どのエリアに拠点を構えるべきなのか」「労働力は確保できるのか」「概算物流費はいくらか」といった、根本的な物流課題を抱えている企業が当然いらっしゃいます。そのようなニーズを営業担当者を通じて汲み取り、賃貸仲介を越えた付加価値サービスとして課題解決のサポートを行うのが、我々ILSのロジスティクス・アドバイザリーグループです。
代表的な業務としては、例えば倉庫移転や新たな物流センター構築に際しての「立地選定支援」があります。一般的に物流コストの実に半分が輸送費と言われていますが、より効率的で低コストな配送ルートを実現できるよう、お客様の出荷データを受領し重心地分析を行い、ご希望の坪数・入居時期・温度帯なども加味しながら候補物件を複数ご提案しています。提案根拠として定量的かつ視覚的なデータもお示ししますので、社内の稟議資料にご活用いただく場合が多いです。
より専門性を要するものとしては、移転先や新規に立ち上げる物流センターおける「レイアウト作成支援」があります。オペレーションの設計、ロボットでの自動化導入の支援、そしてDX化の支援までを盛り込んでレイアウト作成のお手伝いをするケースが多くなっております。そのほかにも、検討エリアにおける雇用確保のリスク分析を行う「労働力分析」、物流業務の委託先を選ぶ際の「物流コンペ支援」など、多様なサポートを行っています。
ロジスティクス・アドバイザリーのサポート領域

効率的な倉庫レイアウトは?
庫内レイアウト配置の検証

労働力は十分集まる?
周辺労働人口調査

人件費は安く抑えられる?
周辺の平均時給など雇用力調査

どのエリアに何拠点を構えたらよい?
拠点配置シミュレーション

移転した場合の概算物流費は?
財務分析(倉庫費・配送費)
――そのようなサービスを提供する上では、物流業務に関する専門的な知見が重要だと思います。チームメンバーにはどのような背景を持つ方がいるのでしょうか?
ロジスティクス・アドバイザリーでは私を含め、現在4名(2025年5月時点)のチームメンバーが在籍しています。いずれも3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業者や外資系エクスプレスといった物流関連企業でキャリアを積んでおり、各々が物流業務に関する確かな知見を有しています。
例えば私は、3PL事業者などを経て大手マテハンメーカーに15年勤め、製造・販売に関わるソリューション営業に携わってきました。数多くのクライアント・現場に対して、マテハン機器の選定をはじめとした自動化の提案を行っており、その経験を現職に生かしています。
ほかのメンバーには、物流オペレーションの営業企画・立上げの豊富な経験から、配送コスト分析などに秀でた者もいます。プロジェクトの対応にあたっては、メンバーそれぞれの持ち味を生かせるよう業務分担を行い、ときにはチーム一丸となって、お客様の幅広いニーズにお応えしています。
――このようなアドバイザリーサービスは、一般的なものですか?
物流業界全体でいえば、3PL事業者などが包括的に提供したり、物流専門のコンサルティング企業が部分的に携わったりするサービスは少なからずあります。しかし、こと不動産業界において我々のような機能を持つ企業はほとんどありません。物流不動産の仲介に関わる事業者の多くは、仲介業務のみに終始しているのが実情ではないでしょうか。
仲介業務と合わせてアドバイザリーをご依頼いただくメリットはいくつもあります。まず何よりも、拠点とするエリアのご検討から賃貸借契約の締結、その後オペレーションまでワンストップでサポートを受けられる利便性があるでしょう。また、仲介の営業担当者を窓口とした、ご相談のしやすさも感じていただけると思います。
コスト面でも利点があります。繰り返しになりますが、我々の業務は賃貸借の仲介を前提としたものですので、サービスのフィーはその仲介手数料に含まれています。(一部オプションもあり)そのため、トータルコストで見ると、比較的低コストでご依頼いただけると考えています。
――そのほか、ロジスティクス・アドバイザリー独自の強みには何がありますか。
ご提案の中立性という点でも自負があります。類似のアドバイザリーを行う3PL事業者やコンサルティング企業などにおいては、サービスを通じて一定の利害関係があったり懇意にしていたりする企業の製品やサービスへ、誘導する事例が少なくありません。一方で我々CBREは、大手デベロッパーやベンダーの資本が入っていない独立系の不動産ソリューションプロバイダー。常に公平な立場からのご提案が可能です。
人手不足や人件費高騰の昨今、物流業務の効率化にあたっては、実に多様な選択肢が生まれています。例えば倉庫の自動化ひとつとっても、海外製品を含め数多くの製品がリリースされています。そうした選択肢そのものについては認知が広がっているものの、いざ具体的に選ぶとなると、何を基準とすれば良いのかわからない場合がほとんどです。我々はそうした方々に寄り添い、お客様本位のベターなご提案をいくつもお出しできるよう日々努めています。
物流課題を抱える企業に対し、幅広いサポートを行うCBREのロジスティクス・アドバイザリー。続く後編では、サービスについてさらに深堀りしていきます。(後編は後日掲載予定)
ロジスティクス・アドバイザリーメンバー

シービーアールイー株式会社
アドバイザリー&トランザクションサービス
ロジスティクス・アドバイザリー
アソシエイト ディレクター
三瓶 政人
2016年に当社へ入社後、不動産仲介の付加価値サービスとして物流アドバイザリー業務に従事。20年超のキャリアを活かし、物流現場の改善提案から物流施策の立案まで多岐に渡るクライアントニーズに対し支援を行っている。
入社以前は外資系エクスプレス/3PL会社において、多数の物流オペレーションの営業企画/立上げ/現場管理を行う。特に、プロジェクトマネージャーとしてBTSの企画/立ち上げや新規物流ソリューション立ち上げに幅広い経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
外資系3PL / 外資系アパレル / 外資系情報通信 / 外資系通信機材 / 外資系雑貨品

シービーアールイー株式会社
アドバイザリー&トランザクションサービス
ロジスティクス・アドバイザリー
シニアスペシャリスト
野中 哲也
2020年に当社入社後、不動産仲介の付加価値サービスとして物流アドバイザリー業務に従事。その経験を活かしクライアントの物流不動産戦略をサポートしている。
入社以前は日系の3PL企業で17年間勤め、プロジェクトマネージャーとして、国内外の数々の小売業、製造業の3PL新規営業~物流センター設計~立上を経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
国内大手ガス会社 / 国内高級食品スーパー / 国内ホームセンター / 国内自動車部品メーカー / 国内切削工具メーカー

シービーアールイー株式会社
アドバイザリー&トランザクションサービス
ロジスティクス・アドバイザリー
スペシャリスト
佐々木 亮
2025年に当社入社。入社以前は日系の3PL企業で19年間勤め、プロジェクトマネージャーとして、国内外のヘルスケア領域の顧客を中心に、3PL新規営業~物流業務設計や業務立上の経験を有する。
【主要プロジェクト実績】
国内外医療機器メーカー / 国内医療機器商社 / 国内医薬品商社 / 病院 / 調剤薬局 / 国内化粧品 / 国内化学メーカー