新築への移転需要は旺盛、賃料上昇は加速見通し
2014年の東京23区の新規需要面積は、新規供給178,568坪の1.7倍に相当する302,398坪となり、リーマンショック後、最大となった。その結果、2014年末の空室率は2013年末から2.1ポイントと大幅に低下して4.1%となった。景気低迷により潜在化していた移転需要が、2014年になって大きく顕在化した。アベノミクスによって企業の業績が向上し、業容拡大やオフィス集約のためのコスト負担力が向上したことがその背景として挙げられる。
新築ビルでは立地や設備改善のための移転が進み、移転元では割安な賃料が移転需要を喚起した。また、期毎に空室率が低下したことが賃料の先高観を高め、早期に移転先を確保しようとする動きを促した面もある。その結果、グレードAを中心とする優良ビルで稼働率が向上した。「新宿」、「品川・田町」エリアでは空室率が2013年に一時10%を超えていたが、2014年末には5%を切っている。通信、IT、製造、国内金融機関などの幅広い分野で、事業拡大に伴う拡張移転や館内増床のほか、グループ企業の統合によるオフィス集約や、生産性や効率性の向上のために分散フロアを集約するような事例がみられた。
東京23区全体では、2015年には190,493坪、2016年には216,779坪の新規供給が予定されている。この2年間の年平均供給床は20.3万坪で、過去6年間の年間平均18.1万坪を2万坪以上(約12%)上回る。しかし、今後も業容拡大やオフィス集約、立地や設備改善などの移転ニーズは十分に期待できる。実際、既存ビルでは稼働率が既に高い状況にあるため、今後竣工予定のビルを物色する動きも多く、グレードAビルの中には既に満室での稼働が見込まれているものもある。中期的には、国家戦略特区の動向や、オリンピック決定を契機に進み始めたインフラ整備が、都心でのオフィス需要を更に喚起する可能性も考えられる。
2014年の東京のグレードAビルの新規需要面積は新規供給面積102,242坪を上回って132,211坪となり、リーマンショック以降、最大となった。また、2014年の空室率は2013年に比べて3ポイント低下して4.1%となった。2014年竣工のグレードAビルは、広いフロアプレートとBCP対応に優れた高い設備水準がテナントニーズにマッチし、竣工時には平均で90%程度の高稼働となった。
一方、既存ビルでは移転による二次空室が発生したが、グレードAビルの希少性が高まる中、空室消化に時間は要していない。人材確保を目的とする移転が多くみられた「丸の内・大手町」エリアのグレードA空室率は6年ぶりに1%台に低下した。業種では国内金融機関や大手法律事務所の動きが目立った。
グレードAの新規供給は、2015年には119,079坪、2016年には146,931坪が予定されている。この2年間の平均13.3万坪は、過去6年間の年間平均7.9万坪を5万坪以上(約7割)上回る水準である。ただし、満室が既に見込まれる2015年竣工のビルがあること、2016年竣工のビルでは賃貸可能面積の4割程度のリーシングが進んでいることが推定される。需給逼迫を背景にオーナーサイドは賃料水準の引き上げを優先し、一部のビルでは募集区画を残して竣工する可能性もある。ただし、業績回復を背景に設備・事業投資の拡大が見込まれており、業容拡大による移転需要を中心に、空室は早期に消化されるであろう。
グレードAの想定成約賃料は、需給バランスの改善を背景に3年連続上昇し、2014年は前期比5.1%上昇して32,200円/坪となった。新築ビルをはじめ、既存ビルでも稼働率が高まっており、需給はタイトな状況が続き、賃料上昇のスピードは加速する見通しである。CBREでは、東京のグレードA賃料につき、向こう2年間で17%程度の上昇を予想している。
各グレードの定義
グレードA
〔立地〕立地東京:主要5区中心、大阪、名古屋:主要区内 〔規模〕貸室総面積:6,500坪以上、延床面積:10,000坪以上、基準階面積:500坪以上(大阪、名古屋は350坪以上)〔築年数〕11年未満
グレードAマイナス
〔立地〕東京23区内 〔規模〕貸室総面積:4,500坪以上、延床面積:7,000坪以上、基準階面積:250坪以上 〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
グレードB
〔立地〕東京23区内、大阪市内、名古屋市内 〔規模〕東京23区内:原則として延床面積2,000〜7,000坪未満、基準階面積200坪以上/大阪市内、名古屋市内:原則として延床面積2,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル
オールグレード
〔立地〕CBREが独自に設定した全国13都市のオフィスエリア内 〔規模〕延床面積1,000坪以上〔築年数〕新耐震基準に準拠したビル