投資マーケットは大型取引を中心に引き続きオフィスが牽引
2014年の不動産投資マーケットは、大型案件を中心に引き続きオフィスセクターが牽引した。大手町タワー、パシフィックセンチュリープレイス、目黒雅叙園など1,000億円を超える大型取引が相次いだことがオフィス投資額ならびに全体の投資額を押し上げ、結果として2014年の不動産投資総額は前年比3.5%増の4兆7,000億円となった。
オフィスビルへの投資に限定して見ると、賃料の上昇傾向が鮮明になってきたことを背景に都心周辺エリアでの投資額が拡大し、投資額全体に占める比率は都心5区で前年に比べてわずかながら低下した一方で(60%⇨58%)、その他東京18区の比率が上昇した(18%⇨27%)
一方、大阪・名古屋を含む地方都市では、投資額も全体に占める比率も、前年に比べて低下した。現在と同じく都心で投資案件の品不足感が強まった2007年に、地方での投資のウェイトが大きく高まったこととは対照的で、投資家は当時に比べてやや慎重姿勢であることがうかがえる。ただし足元では、地方の収益不動産に対する投資家の関心は国内外を問わず高まっている。2014年には地方都市でも賃料の底打ちが明らかになったため、今後は地方都市での投資事例が増加すると予想される。
資金調達関係は引き続き良好
金融政策は2015年も緩和傾向が続くとみられている。この事は、企業にとって良好な借入環境が続くということに加え、利上げが見込まれる米国との金利格差を背景とした円安傾向の継続を意味する。更に、円安に加えて原油価格の下落も企業業績を押し上げるという期待から、株式市場についても強気の見方が多い。そのため、エクイティとデットのいずれについても良好な資金調達環境が続こう。
日本銀行は2014年10月31日に、質的・量的金融緩和の拡大を決定した。マネタリーベースの増加ペースを拡大するとともに、長期国債買い入れの平均残存期間を延長、更に上場投資信託(ETF)とJ-REITの年間の買い入れペースも、それぞれ従前の3倍に引き上げた。黒田日銀総裁は更なる追加緩和についても「政策余地は依然としてある」と、今後の物価動向次第では追加緩和の可能性を示唆している。
原油価格の下落でインフレ率は抑えられることが想定されるため、中央銀行が2015年中の金利引き上げを表明した米国においてさえ、引き上げの先送りの可能性や、引き上げたとしても小幅なものにとどまるという見方が台頭しつつある。更に1月22日には、デフレ進行の懸念を背景に欧州中銀(ECB)が量的金融緩和の導入を決定した。世界的な低インフレ、低金利を背景に、利回りを求める資金が不動産マーケットに向かうという流れは2015年も続くと考えられる。
2014年の日本の不動産投資マーケットにおいては、海外投資家による投資額が前年比倍増の1兆円超えとなり、近年のピークであった2007年に次ぐ水準となった。低金利に加え、賃料の上昇傾向が明らかになってきたことを背景に、2015年も国内外の投資家の関心は引き続き高いと考えられる。とは言え、2014年の投資総額を押し上げたのもわずか数件の大型案件だったということが示唆するように、引き続きマーケットでの品薄感は強い。従って、2015年の投資総額が2014年に比べて更に大きく増加することは現時点では考えにくい。
執筆
シービーアールイー株式会社
リサーチ
エグゼクティブディレクター
大久保 寛
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シニアディレクター
鈴木 孝一
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アソシエイトディレクター
山口 武
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