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東京倉庫株式会社・日本通運株式会社|物流拠点構築ケーススタディ

ケーススタディ

2019年11月25日

東京倉庫株式会社・日本通運株式会社

東京・品川の大井競馬場の備品倉庫の管理に端を発し、設立から35年以上、BTSにこだわって施設開発を行ってきた東京倉庫。その同社がCBREの協力を得て、初めてマルチテナント型の物流施設開発に乗り出したのは、流通適地として極めてニーズが高いものの、土地勘のない千葉県下の湾岸エリアだった。そして、同施設を一括で借り上げた日本通運は、どのような事業戦略のもと、同地に拠点を構築したのか、その全貌に迫った。

首都圏の物流適地として知られる「新習志野」に
2019年春に誕生したマルチテナント型物流施設を巡る、
デベロッパー、テナント二つのストーリー。

東京倉庫株式会社・日本通運株式会社

ヘッドリースによる施設開発で堅実経営を実践する東京倉庫

2019年4月、首都圏全体を網羅する物流ネットワークの適地として知られる千葉県習志野市の茜浜に、新たな施設が誕生した。 JR京葉線「新習志野」駅徒歩3分、東関東自動車道「谷津船橋」IC約1.4km、京葉道路「花輪」IC約2.6kmに位置する、敷地面積約5,200坪の土地に延床面積約10,400坪を持つ、地上4階建てのマルチテナント型物流施設である。この開発を手がけたのは、大井競馬場などを所有する東京都競馬のグループ会社である東京倉庫だ。親会社の東京都競馬は、東京都が戦後の財源確保のために競馬を開催するのに際し、競馬施設の整備・管理を目的に東京都と民間が50%ずつ出資して1949年に設立された会社である。当初は、競馬事業に関わる施設の整備や客用の駐車場運営、競走馬の寝藁の保管用倉庫の管理などを東京都競馬が担っていたが、 1951年に場内サービスを手がける別会社を設立。さらに1984年に倉庫部門を分離・独立させて誕生したのが東京倉庫である。BTS倉庫を最初に手がけたのは大井競馬場の来場者減少により使用しなくなった駐車場の一部に、倉庫を建設したのが始まりだ。現在では品川区を中心に17棟、延床面積にして9万坪強の物流施設を運営・管理している。

「当社の倉庫ビジネスの基本は、ヘッドリースによるBTS。つまり、最初に顧客をつけ、相手の望む仕様の倉庫を建設して長期契約を結ぶというものです。競馬の収益は景気に大きく左右されるため、グループの基盤となる事業として、安定収入が得られる手堅いビジネスを目指したのです」。そう語るのは、同社の成長を推進してきた常務取締役、萬場章弘氏である。

同社の極めて堅実なビジネススタイルに、最初の大きな変化が訪れたのが2013年のこと。品川区勝島の、自社に隣接している延床面積2万坪超の倉庫を大手倉庫会社から購入し、従来のBTSによる開発一棟貸しによる運営とは異なるマルチテナント型施設の営業を開始したことだ。購入時にはテナントが入居しほぼ満室稼働であったが、当初社内では、複数テナントのマネジメントやテナント退去後のリーシングについてのノウハウがないことから、購入には賛否両論があったという。しかし、それでも購入に至った背景としては、一つは地続きであったため、長期的には両方を合わせて建て替え、大型倉庫を開発することも可能だという判断があったこと。もう一つは、倉庫群の孤立を回避するためだったという。実はこの頃、大手倉庫業者から周辺の倉庫がいくつも売りに出されており、マンションデベロッパーが購入するケースが目立っていた。「ここで隣地を購入しておかないと、将来的に周辺にマンションが林立し、近隣住民とのトラブルが避けられない。物流に適した土地なので、なんとしても死守すべきと判断したのです」(萬場氏)。

2013年は、折しも同社初の中期経営計画(5ヶ年)が発表された年でもある。「今でこそグループの売上も利益も好調ですが、当時は本業である競馬の売上が芳しくありませんでした。そのため、倉庫の売上がグループの屋台骨を支えるような状態で、基盤を固めるために積極的に開発用地を探し始めたのです」。萬場氏は当時をそう振り返る。幸い、グループの業績はその後に好転し、中期経営計画は2015年末までのわずか3年で目標を達成した。その後、1年をかけて第二次中期経営計画(5ヶ年)が策定されたのだが、そのなかで倉庫事業における既存倉庫の有効活用と、新規物件の取得がより明確に打ち出された。既存物件に関しては、物流事業者のニーズを集めきれない施設は個人向けのレンタル収納スペースに作り変えたほか、空き倉庫をMV(ミュージックビデオ)などの撮影用に貸し出すビジネスを開始。新規物件の取得については、従来は品川区や大田区に限定されていたエリアを、広く東京近郊まで広げて、積極的に新たな開発用地を探すことになったのである。

首都圏の物流適地で取り組む初の自社開発マルチテナント倉庫

東京倉庫株式会社・日本通運株式会社

いくつもの候補地が浮かんでは消えるなか、新習志野の売却案件の情報が同社に入ったのは、折しもその中期経営計画策定期間の最中だった。もとはボートレースの投票券を販売するボートピアの駐車場用地。湾岸エリアは物流デベロッパーにとって非常に人気が高く、なかなか出物がない。品川から自動車で1時間もかからない至近な場所で、喉から手が出るほど欲しい物件だった。当初は、東京・品川を拠点とする企業が千葉県の物件に投資する点を疑問視する声もあったが、社内協議の末、なんとか購入にこぎつけたという。土地購入当初は、同社の得意とする安定性の高いヘッドリースによるBTSで開発する計画だったが、1棟で借りてくれるテナントがなかなか見つからず、マルチテナント型を視野に入れ汎用性のある施設に設計変更することとなった。そのときに設計・監修として協力したのがCBREだった。東京倉庫社内にはマルチテナント型施設の開発に対するノウハウがなかったため、専門家に依頼する点は自然な流れで決まったという。こうして同社の「新習志野駅前プロジェクト」がスタートした。

当然、CBREには過去にいくつも開発案件の経験があり、一棟貸しとマルチテナント型の双方に対応できる施設のあり方がわかっていた。貸床を最大化し収益性を確保する面から、各階に至るランプウェイを設けるフロアごとの賃貸でなく、1階と3階にバースを設けて1・2階、3・4階の2分割から最大4分割まで可能なフロア構成に決まった。しかも、都心部に近いスルー型の施設に不可欠な同時接車の可能台数は、最大38台と十分なキャパシティ。また、BCP対応として、災害時にも物流を止めない3日間稼働できる非常用発電設備を採用している。「周辺に先行するいくつかの競合施設があったため、それらの設備の内容や賃料を考慮しながら、スケジュールとコスト、クオリティとグレードの最適なバランスを持った施設を提案してもらいました。もちろん、その後のリーシングを期待していたのも事実ですが(笑)」(萬場氏)。

こうして2019年4月、「新習志野駅前プロジェクト」は習志野茜浜倉庫として稼働を開始したのである。

世界を網羅するネットワークが武器 日本が誇る総合物流企業「日本通運」

東京倉庫株式会社・日本通運株式会社

マルチテナント型の施設として開発されたものの、テナントは1社1棟借りで入居。それは日本通運だった。日通といえば、国内外を問わず、トラックや鉄道を利用した陸送をはじめ航空・海上輸送まで、あらゆるモードを利用して貨物を運ぶ、世界に名だたる総合物流企業である。同社の強みの一つは国内外に張り巡らされたネットワークだ。世界46ヶ国(2019年3月末時点)をカバーし、特に東アジア、南アジア地域においては、日系、欧米系を問わずライバル企業に負けないネットワークを誇る。物流において自社ネットワークとはどういうことか。例えば貨物を日本から欧州に運ぶとしよう。より早く運びたければ空輸で1日だが、その分運賃は高額。逆に船なら運賃は断然安いが、日数は40~50日もかかる。だが日通なら、空路や航路はもちろん、例えば日本から中国までは航路で運び、そこから欧州までは鉄道を利用するといった組み合わせが自社のネットワークだけで可能となる。お客様が求めるリードタイムやコストレベルを見ながら、複数のサービスから最適なものを提供できるのだ。そのなかにあって、航空事業支店は主に航空輸送を使ったサービスを中心としている。輸送のメインターゲットは、空輸のスピードを活かした緊急性の高い企業間物流だ。国際航空貨物は、具体的には半導体・電子部品や自動車部品、サーバや医療機器といった精密装置などで、医薬品や高級ブランドのアパレルも扱う。とはいえ輸送手段は航空便だけではない。「かつては海運、陸送、航空と事業ごとの縦割りの色合いが強かったのですが、現在ではあらゆるサービスをワンストップで提供できる体制を構築しています。ですから、どのようなお客様にもアプローチができるのです」。そう語るのは、航空事業支店国際貨物部の次長、田島健彦氏である。

原木エリアの4棟の倉庫が満床 日通ネットワークを拡充する施設に

東京倉庫株式会社・日本通運株式会社

同社の物流拠点構築には、二つのパターンがあるという。一つは自社ネットワークの構築を踏まえて、中長期的視点に立った戦略的なもの。もう一つはお客様の新しい案件に基づくニーズに応えてのものだ。では、今回の新習志野はどちらに属するのだろうか。「ハイブリッド型です。実は、2駅隣の二俣新町に、原木インターナショナルロジスティクスタウンという4棟のロジスティクス用倉庫がありますが、そこがほぼ満床の状態にあるのです。ビジネス的にさらなる拡大が予想されるため、2018年頃から一体で運用できる施設を周辺で探していました」(田島氏)。

同湾岸エリアは、成田空港と羽田空港の中間地点にあり、東京を中心とした一大消費地へのアクセスも良く、東京港や横浜港も遠くない魅力的な場所だ。同社の既存施設とも近く、一体型運用はもちろんワーカーの融通が利くというメリットがある。しかも何より、新習志野駅から徒歩3分という、パートや派遣の労働力を確保しやすい立地が最大の利点だという。

「東京倉庫様とは30年以上のお付き合いがありましたし、開発にあたり専門家のアドバイスを仰いでいるということでしたので施設の心配はありませんでした。当社もいくつかのお客様で運用していくつもりですので、汎用性の高いマルチテナント仕様は、むしろありがたいといえます。必要な設備はそろっていたので、入居にあたっては、庫内ワーカーの作業環境確保のため全館空調を追加でお願いした程度でした」(田島氏)。ここを拠点に、新たなビジネスの構築や運営ノウハウの蓄積につながることを期待しているという。

図らずも、以前から付き合いのあった2社が、千葉の湾岸エリアで再び関係を持つに至った習志野茜浜倉庫。運用を開始した現在、どのような想いでいるのだろう。「最終的には一棟貸しとはいえ、マルチテナント型施設開発が成功したのは事実です。この一歩を活かすべく、今後も積極的に開発用地を探していきたいですね」東京倉庫の萬場氏はそう胸を張る。一方、「原木の施設群との一体化運用により、お客様のロジスティクスの輸送から流通加工までを含めて、我々がどのような役割で如何に付加価値をご提供できるか、アピールしていくつもりです」と、事業の拡大を目指す日通の田島氏。

成功体験を手にした東京倉庫と、巨大物流企業日本通運の両社の思惑がマッチした物流拠点構築プロジェクト。今後、この施設で提供される新たなロジスティクス・サービスが楽しみとなる。

東京倉庫株式会社・日本通運株式会社
東京倉庫株式会社・日本通運株式会社
東京倉庫株式会社・日本通運株式会社

プロジェクト概要

企業名 デベロッパー:東京倉庫株式会社
テナント:日本通運株式会社
施設 習志野茜浜倉庫
所在地 千葉県習志野市茜浜2-7-1
JP京葉線新習志野駅 徒歩3分
東関東自動車道湾岸習志野IC 1.6km
規模 地上4階建、敷地面積:約5,200坪、延床面積:約11,600坪
CBRE業務 コンストラクションマネジメント

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2019年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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