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株式会社ムトウ|事業拠点構築ケーススタディ

ケーススタディ

2019年10月25日

株式会社ムトウ

医療材料総合商社のムトウは、今年4月、首都圏の物流をカバーする物流拠点「東京SPDセンター」をロジフロント越谷Ⅰに移転・統合した。物流量の増加から、旧センターのスペース不足が問題になってから10年。病院ごとに異なる医療材料ニーズにきめ細かく対応し、かつ深刻化する人手不足も解決する物流センターをどのように構築していったのか。その軌跡を追った。

病院ごとに異なる医療材料ニーズに対応。
ピッキング機能付自動搬送ロボットの導入など、
成長性を先取りした物流拠点を構築。

株式会社ムトウ

病院ごとに異なるニーズに細かく対応 地域色強い医療材料物流の特殊事情

ムトウは、病院やクリニックなどの医療現場で使用されるあらゆる医療用機器を販売する総合商社である。取り扱う商材は、注射器や点滴チューブといった身近な医療デバイスから、MRIやCTなどの大型装置まで多岐にわたり、その数は100万アイテムを超える。1918年に札幌で創業したムトウは、 1970年以降、東京を皮切りに全国展開とM&Aを推し進め、今では全国164ヶ所に営業拠点網を築き上げている。その物流の要となるのが、札幌、東京、大阪、福岡など全国6ヶ所に設けられた物流センターである。

ムトウグループの物流を担う(株)ムトウ物流社長の土田隆之氏は、ムトウにおける物流の重要性を次のように語る。「医療材料の販売会社は地域に根差した中小企業が大半を占めるうえに、医療現場のニーズは少量多品種です。この業界独特の流通環境のなかで顧客ニーズにきめ細かく速やかに対応していくことが、物流センターに求められる役割です」。土田氏によると、医療材料の業界は元々、都道府県単位もしくは病院単位で代理店制度が根付いており、地域限定の商流が発達してきたという。ところが、医療費の削減が叫ばれるようになると、地域限定のビジネスでは成長が期待できなくなってきた。北海道を基盤に成長してきたムトウが、全国展開を目指したのもそれが理由である。全国展開を狙うムトウが直面したのが、地域や病院ごとに異なる商流や顧客ニーズへの対応だった。取り扱う商材の数も、エリアを拡大するたびに増大していった。「地域レベルの顧客ニーズにきめ細かく応えながら、全国レベルで物流品質を保つために、各地域の“中央倉庫”を中心とする物流体制を構築してきたというわけです」と土田氏は話す。

ジャストインタイム方式で急成長 一方、倉庫スペース不足が深刻化

株式会社ムトウ

今年4月、同社は首都圏の物流をカバーする東京SPDセンター(埼玉県越谷市)をロジフロント越谷Ⅰに移転させた。近隣の流 通団地内にあった旧センターは2階建て1,200坪で、2000年に稼働。当時はスペースに余裕があったものの、19年間で東京管轄の売上が約6倍に拡大し、物流量の増加に対応できなくなっていた。「スペース不足はすでに10年前から問題になっており、移転もこれまでに何度も検討されてきました。実際に契約直前まで進んだこともありましたが、その時は6,000坪というオーバースペックの物件だったために断念しました。また、移転を検討するにあたり最も懸念したのが、現在地から遠方に移転した場合、センターで働く多数の人材をそこで確保できるかという問題です。ここ数年ほどで急激に悪化した雇用環境を考えると、昨今は特に移転に踏み出すことができませんでした」(土田氏)。

ムトウの物流量が増加した背景には、同社が独自にシステム開発したSPD(Supply Processing Distribution)という新物流サービスがあった。これは、病院側が在庫を抱える代わりに物流会社が一定の在庫を確保しておき、病院で消費した分だけジャストインタイムで商材を補充するシステムである。ムトウはこのSPD方式を積極的に病院に提案し、成長の原動力にしてきた。一方、SPD方式の契約が増えれば、そのぶん在庫量も煩雑な業務処理も増えていく。旧センターでも多数の病院のSPDを担当することになり、通常の出入庫のための作業スペースを圧迫していったのだ。「物流センターはSPD機能だけでなく、当社各営業拠点への通常配送も担っています。GWやお盆、年末などの休暇前の繁忙期には物流量が通常の1.5倍に跳ね上がりますが、そうなると商材がプラットフォームにまで溢れかえり、シャッターを閉められない状態でした」と、土田氏は旧センターでの深刻なスペース不足を振り返る。

この状況に対し、何も手を打たなかったわけではない。スペース問題が顕在化し始めた2010年には、神奈川SPDセンター(延床面積1,000坪)を設立し、旧東京SPDセンターのSPD機能を切り分けて移した。SPD方式での契約は、旧センターが担当していた以外にも、病院の近くで100坪ほどの倉庫を構えて対応するケースが首都圏で7ヶ所に増えており、それらも一緒に神奈川SPDセンターに集約したのである。これで一旦は旧センターのスペース不足は解消したものの、その後もSPD方式での契約が入り続け、手狭な状態が続いてきたのである。

労働環境の改善、物流量増加を見越し従来の3倍のスペースを確保

株式会社ムトウ

スペース不足に加えて、築年数を経た建物の老朽化も移転を考えるには十分だった。特に問題だったのは脆弱な電気系設備である。「ジャストインタイムのSPD方式にはデータの一元管理が不可欠であり、そのため庫内のIT化を進めてきました。しかし、旧式の高圧受電設備では電気の供給が追い付かない状況です。そして、ここにきてもう一つ、人材確保のための庫内環境整備も重要になってきました。働く人のことを考えれば空調は必要ですが、空調設備を入れるにも電気が必要です」(土田氏)。

転機は2年前、突然訪れた。旧センターから徒歩5分ほどの工場跡地に、マルチテナント型物流施設「ロジフロント越谷Ⅰ」が開発されることになったのだ。ワンフロア3,700坪の4階建てで、2階部分のテナントが決まっていなかった。ただし“、ワンフロア貸し”が条件で、旧センターの1,200坪と比較すると3倍近い広さとなる。「このチャンスは逃せないと思いましたが、かなりオーバースペックなので悩みました。2倍くらいまでならなんとか拡大しようと思っていたのですが……」と土田氏。

最終的に決断したのは、SPD方式の大型契約が立て続けに決まった時期と重なったことも大きかった。「大規模なSPDを運用するには、何百坪単位の面積が必要です。営業部門ではその後も大規模病院をターゲットに挙げていましたから、契約が取れるたびに倉庫を探していたのでは後手にまわります。『将来の大型契約に備えた拠点構築が必要ではないか』と社内を説得して回りました」(土田氏)。ここに埼玉SPDセンター(700坪)も統合する計画として新東京SPDセンターの設立に至ったのである。

作業効率化およびBCP対策も考慮し、ピッキング機能付自動搬送ロボットを導入

株式会社ムトウ

旧センターの3倍の面積を持つ新センター。その広さこそ、スペース不足を解消する最大の長所であると同時に、作業員の作業効率に悪影響をもたらしかねない最大の欠点にもなったと土田氏は話す。「旧センターの庫内は、直線距離にしてせいぜい40m。ワーカーの作業時の歩数を測ったところ、平均で1万5000歩でした。一方、新センターは最大で120mあり、今度は人が物を運搬するには広すぎるという問題が出てきました」。

運搬を自動化する最もベーシックなマテハン機器として、まず検討したのはベルトコンベアの導入だった。しかし、「ベルトコンベアなら設置コストも抑えられますが、動線を固定することで庫内の自由な往来が妨げられることがネックでした」と土田氏。そこで、ベルトコンベアに代わり採用したのが、必要な場所に必要な荷物を届けてくれる自動搬送ロボットだ。これにピッキング支援機能を組み合わせることで、庫内作業に不慣れな派遣作業員や、アルファベットや数字しか読めない外国人労働者でも、ミスなくピッキング作業ができる環境を整えたのである。

庫内の機械化に際してもう一つ外せなかったのが、災害時にも倉庫機能を持続させるBCP対策だった。「自動倉庫型ピッキングシステムを導入した場合、停電に備えた自家発電も用意するとなると億単位のコストがかかり、現実的ではありません。また、地震で装置が壊れたら、修理に2ヶ月近くかか るそうです。我々が取り扱う商材は災害が起きた次の瞬間から要求されるもので、物があるにもかかわらず出荷できないということは許されません。災害時のことを考えれば、人の手を使ってピッキングできる余地を残しておいたほうがいいという判断です。BCP対策として、パソコン用の小型非常用電源を用意しておきます。棚の地図をパソコンに保存しておけば、システムが遮断されてもローテクで物を出し続けられます。これは東日本大震災の経験を経た教訓です」(土田氏)。

1年の自動化実証実験を経て本格導入へ 物流効率化のための挑戦は続く

株式会社ムトウ

自動搬送システムを開発するにあたっては、ムトウ側もアイデアを出し、開発担当のシャープと二人三脚で進めていった。「新システムをいきなり導入して間違いなく機能するのか不安だった」(土田氏)ため、事前に旧センターで1年かけて実証実験を行うなど、念入りに準備を進めていった。

懸念していた人材確保については、旧センターで働いていた作業員全員が引き続き新センターで働くことになった。今回統合した埼玉SPDセンターの作業員は現在募集中だが、このピッキング支援システムがあることで、「不慣れな方でも作業できます」と訴求できることが利点だという。「ただ、応募数は多いのですが、このエリアの特性なのか扶養控除の範囲内での働き方を希望する方が大半です。いろいろな働き方の人たちを組み合わせながら雇用を確保していくことになりそうです」と土田氏は話す。

新センターは、現時点で十分なスペースを備えているが、これは今後増加が見込まれる物流量や、ムトウの物流システムをさらに進化させるために必要な“伸びしろ”である。一方、深刻化する人材不足は待ったなしの状態で、それを補うための機械化は世の中の流れである。「今回の移転を機に庫内搬送システムのベースはできたので、次はよりブラッシュアップさせたシステムを構築していきたい」と土田氏は抱負を語った。

プロジェクト概要

企業名 株式会社ムトウ
施設 東京SPDセンター
所在地 埼玉県越谷市西方3076-1
ロジフロント越谷Ⅰ
東京外環自動車道草加IC 6km
開設 2019年4月8日
規模 ロジフロント越谷Ⅰ
2階ワンフロア約3,700坪
CBRE業務 物流拠点構築アドバイザリー
施設賃貸借仲介
株式会社ムトウ

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2019年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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