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インアゴーラ株式会社|物流拠点構築ケーススタディ

ケーススタディ

2019年11月11日

インアゴーラ株式会社

日本企業に対し、中国向け越境Eコマース(EC)事業を支援するInagora(インアゴーラ)は、創業5年を迎える若い会社だ。今年5月、手狭になった東京・青海の物流センターを千葉県松戸市に移転。従来の2,500坪に対し、2倍近い4,800坪に拡張したのである。マルチテナント型施設ではなく、一棟借りを選んだのには同社の強いこだわりがあった。急成長するEC企業が抱える物流の課題と、自社に適した物流拠点構築の取り組みを取材した。

東京のベッドタウン・松戸の市街地に、
旧倉庫の2倍の施設を一棟借りした、
急成長越境Eコマース企業の物流拠点戦略。

インアゴーラ株式会社

中国向けECをワンストップで支援する日本商品に特化した越境Eコマース企業

Inagora(インアゴーラ)は、中国の消費者向けに日本の商品を販売する越境Eコマース(EC)事業を手がける会社として、2014年に創業。同社が運営するECアプリワンドウ」は、中国国内で唯一、日本商品に特化した越境ECである。商品紹介からマーケティング支援、物流、決済まで、越境ECに必要な全工程を同社がワンストップで担うことで、日本企業が日本にいながら簡単に中国向けEC事業を行うことができるのが売り。現在、約3,600ブランド、約40,000アイテムの日本商品を取り扱っている。

物流の仕組みはこうだ。日本企業は商品をインアゴーラの国内物流センターに送るだけで配送作業は完了。アプリを通じて中国から注文が入ると、同社独自の国際物流システムを通じて中国の購入者に届けられる。中国までの運送手段は、飛行機と船の両方を利用。エア便で直送される商品は、最短3日で配送。通常は、事前に船便で中国国内の保税倉庫に送られており、最短2日で購入者に届けられる。同社の物流のモットーは、「商品を早く、安く、正しく中国の消費者に届ける」ことである。

物流のスピードと品質を妨げる倉庫スペースの不足

インアゴーラ株式会社

中国向け商品を一手に引き受ける日本国内の物流拠点が、千葉県松戸市にある「インアゴーラ ロジスティクスセンター」である。この物流センターは、今年4月に東京都江東区青海から移転し、翌5月に本格的に稼働し始めたばかりだ。

創業から5年を迎え、急成長を遂げてきた同社は、これまでも規模の拡大に応じて物流拠点を構築してきた。同社の物流責任者である谷口彰平氏によると、最初の拠点は東京都大田区平和島で借りた600坪の倉庫スペースで、「それこそ1日10件の出荷から始まった」という。徐々に中国の顧客や日本の取引先企業が増えていき、次に拠点を移した先が青海だった。最終的に倉庫の1階と2階を合わせて2,500坪を借りていたが、それでもスペースが足りなくなったという。当時、倉庫オペレーションにどのような問題が生じていたのか尋ねると、谷口氏は次のように答えた。

「トラックバースが大型トラック4台分しかなく、トラックが常に列を成して待っているといった状態でした。入荷口も狭いため、入荷の処理能力が追いつかず、大量の荷物を軒下に並べていたのです。倉庫内では通路にも荷物が置かれていました。我々が重視する物流のスピード感と品質を実現するには、荷物が到着したその日に処理して、出荷しなければなりません。十分な倉庫スペースが確保できないために荷物が放置されているのは、大きな問題でした」。

築30年という建物の古さもネックだった。例えば、照明に使われていたのは水銀灯だ。暗いうえに、明るくなるまでに時間がかかる。また、物流をネットワークで一元管理するにも、WiFi環境が整っていない庫内では自分たちで配線作業をしなくてはならなかった。特に深刻だったのは、電気容量不足の問題だったという。

「使用できるアンペア数が少なかったため、極端な話、電子レンジ1台入れるだけでもブレーカーが落ちるような状況でした。新しい取り組みをしたくても電力が足りず、そのたびに工事が必要になったり、コストもかかりました。拡張性のない場所でムダなお金や時間をかけるくらいなら、自分たちが目指すオペレーションに適した建物や場所に移るのがベストな選択だと考えたのです」(谷口氏)。

湾岸から多少離れても市街地の至近に倉庫を構える理由

インアゴーラ株式会社

2017年秋から、物流センターの移転を具体的に検討し始めた。不動産仲介会社や建物管理会社から物件情報を収集するにあたり、移転候補地の条件を次のように設定した。

まず、港や空港から40キロ圏内であること。これは車でおよそ1時間の距離である。「湾岸から離れるほど倉庫の賃料は下がる傾向にあるのに比べ、40キロ程度までなら輸送コストはさほど変わりません。これらを踏まえ、賃料と輸送コスト、輸送時間などのバランスを考慮しました」と谷口氏は話す。

人員確保の面から、人口密集地の近くであることは外せない条件だったという。というのも、居住区から離れた青海倉庫では、人員確保が一苦労だったうえに、「公共交通機関で通えない場所だったので、自社バスを走らせていた」など、コスト負担も大きかったからだ。そのため移転先は、公共交通機関で通える場所であり、かつ労働単価が比較的低いエリアに狙いを絞ったのである。

広さに関しては、当時必要な面積は3,000坪だったが、将来の拡張も見越して「5,000坪以内」で探すことにした。候補に挙がった他物件の中から、コストと利便性を総合的に判断した結果、松戸の新築物件(地上4階建て)を一棟借りすることに決めたのである。

移転先は、松戸駅から車で10分ほどの市街地にあり、近年延伸した東京外環自動車道の松戸ICからも15分で行ける距離である。この地を谷口氏は「とても魅力的な立地」と評価する。「東京のベッドタウンである松戸は、若い世代の人口が多く、働き手の確保が期待できます。市街地に近いので、主婦の方にも自転車で気軽に働きに来ていただける立地だと思います。立地の選定にあたっては、CBREさんから提供された人口動態や子育て世帯数などの統計調査も参考にしました。物件情報だけでなく、エリアに関する的確な情報を提供してくださったので、非常に助かりました」。

拡張の自由度を優先し、約4,800坪を一棟借り

インアゴーラ株式会社

新物流センターは、地上4階建て倉庫の一棟借り、延床面積4,800坪である。建物のスペックに関しては、十分なトラックバースや床荷重、BCP対応などが確保されているかを重視したという。多階層の物流センターの場合は上下搬送が問題になるが、「垂直搬送2基とエレベータ2基が設置されているので、上下搬送もそれほど苦になりません」と谷口氏は話す。

青海倉庫の2倍近い広さのため、余剰スペースも多い。空間を遊ばせておくぐらいなら、マルチテナント型施設に入居し、成長に応じて借り増す方が効率的だという考え方もあるだろう。しかし、同社が一棟借りを選択したのには、急成長企業ならではの理由があった。

「マルチテナント型施設で拡張したい時、都合よく隣のスペースが空いているとは限りません。特に変化のスピードが速い我々のビジネスでは、2~3ヶ月先を見越して柔軟に対応していかなければなりません。売り出す商品によっては、急にスペースが必要になることもあるでしょう。実は青海で一度拡張したのですが、隣のスペースを借りることができず、上の階でしかも斜め上のスペースを確保することしかできませんでした。上下搬送が非常に困難になったのは言うまでもありません。そうした苦い経験があったので、多少広めでも一棟借りして、自分たちのコントロールのもとで拡張できる方が、我々にとってメリットが高いと考えたのです」(谷口氏)。拡張の自由度こそが、急成長企業のビジネスを支える物流拠点には不可欠ということだ。余剰スペースは外部に貸し出せばいいと発想を転換した同社は、現在は入居希望テナントと交渉中だという。

一棟借りは、雇用の面でもプラスに働くと同社は考えている。谷口氏曰く「マルチテナント型の施設に比べて、一棟借りの方が会社の顔が前面に出るので、『この会社に勤めている』という実感を持って働いてもらえると思います。また、我々雇用側にしても、マルチテナント型施設で見られるような、周辺パート人員の奪い合いといったものを避けられるのもメリットでしょう」。

新たな物流センターの設立にあたり、最も苦労したのは引っ越しだという。引っ越しは、今年4月の竣工後、5月の開業に合わせて行われたが、その時期がちょうど運営する「ワンドウ」アプリの春の大型キャンペーンと重なったのだ。「キャンペーンの日程はあらかじめ決まっていましたし、新物流センターの5月開業も動かせませんでした。ですから、既存の青海のセンターでキャンペーン商品の出荷を終了してから、数日間の出荷停止期間を設け、引っ越しすることにしたのです。ただ、キャンペーンが予想以上に盛況となったため、大量の出荷作業と引っ越し準備を進めるのが大変でした」と谷口氏。引っ越し前から人員募集を開始し、採用者に対しては青海のセンターで事前研修を行い、開業の日を迎えた。

最新の施設に移った感想を尋ねられ、「電気の心配をせずに新しい機械を導入したり、自由にレイアウトを引けたりできるメリットは大きいと感じています」と谷口氏は話す。また、両面がシャッターのスルー型だった青海のセンターとは違い、新物流センターはストック型の施設だ。温度管理や防犯の面からも、同社の在庫型ビジネスにマッチしているという。今後は、WMSと連携した自動化を進め、より一層の作業効率化に取り組んでいきたいとのこと。「お客様のニーズに合わせて多様化する営業部門や運営側の業務を物流で支えていくことが、我々物流チームの使命だと思っています。会社の成長に応じ、拡張の柔軟性を持ちつつ、コストを抑えたオペレーションを実現していきたい」と抱負を語った。

インアゴーラ株式会社
インアゴーラ株式会社 インアゴーラ株式会社

プロジェクト概要

企業名 インアゴーラ株式会社
施設 インアゴーラ ロジスティクスセンター
所在地 千葉県松戸市稔台5-13-3
開設 2019年4月
規模 敷地面積約7,900㎡、延床面積約16,000㎡、地上4階建
CBRE業務 施設賃貸借仲介

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2019年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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