世界の製造業の見通し
今後8年間で、全世界の製造業は実質ベースで2.7%成長すると見込まれ、総額にして約18兆ドル、雇用者は5億9000万人に達するとされる。その推進役となるのは、特に中国のような新興国市場において急速に拡大する消費である。新たな製造拠点が主としてアジア太平洋地域に出現し、先進国の製造業は繁栄するが、ますます生産性が上がりハイテク分野に重点が置かれるだろう。中国や新興国の製造業が目覚ましい発展を遂げる中にあっても、依然としてアメリカ、日本、西ヨーロッパ諸国では、従業員1人当たりの労働生産性の絶対水準において圧倒的優位に立っている。メディアでは、先進国に製造業の仕事が失われていることを頻繁に報道しているが、実際のところ、生産高も効率性も継続した成長を遂げており、先進国、とりわけアメリカの生産性は飛び抜けて高い。
市場規模もまた重要である。当レポートの見通しでは、 2025年の予測値でアメリカとヨーロッパ諸国のGDPを合算(世界全体のGDPの44%)すると、依然としてアジアの新興国全体(世界全体のGDPの28%)よりもはるかに大きい。かなりの数の製造業企業が、地元市場のためにアメリカやヨーロッパ諸国に継続して本拠地を置き続けるだろうし、この傾向はより強くなると思われる。アメリカの自動車生産の3分の1以上はアメリカに進出した外国のメーカーによるものであり、最近では韓国のメーカーがアメリカとヨーロッパに生産拠点を置き始めている。