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実例研究 キャノン販売

CANON S TOWER

2003年に話題を集めた都内大型再開発の一つ、品川グランドコモンズ。ここに竣工したキヤノン販売(株)の新本社ビル「CANON S TOWER」は、同社のマーケティングの中心拠点となるセンターオフィスであり、同時にコミュニケーションの拠点、グループへの情報発信拠点と位置付けられている。

1~4階までの低層階は、ユーザーに開放された「コミュニケーションスペース」。パーソナルユースからビジネスユースまで対応するギャラリー、ショールーム、プレゼンテーションスペースや、多目的ホール等が設置されている。オフィスフロアは5~27階となっており、実際の執務スペースは10~26階の17フロア。ここに現在、約3,000人の社員が働いている。

さて、この新社屋への大規模移転は、どのような過程を経て実施され、移転後の状況はどうなっているのか。本稿では、ドキュメント(ここでは紙ベース文書、電子文書の両方を指す)マネジメントに焦点を絞り、入出力機器販売で蓄積された同社の膨大なノウハウがどのように活用されたのか、総務部ファシリティ管理課主管スタッフ 岩城広行氏にお話を伺った。

4000人が大移動

CANON S TOWER

キヤノン販売(株)は、2003年春、品川グランドコモンズに竣工した新社屋「CANON S TOWER」に、本社・営業機能を移転、集結させた。それまで、幕張本社(自社ビル)と三田周辺(テナントビル数棟)に分散していた本社機能と営業部門を 品川に統合することにより、経営の一層の効率化とスピード化とともに、グループ連結経営の強化を図ることが目的である。なお、幕張本社は引き続き幕張事業 所として機能し、IT部門、業務部門、研修部門等を集結した。

移転対象は、主に幕張本社に入居していた本社管理部門と企画部門、三田地区に入居していた営業部門、およびその他首都圏の拠点に勤務する社員で、そ の中から合計3,000人が移動することとなった。さらに、品川周辺に点在していた関連会社も合わせると、総勢4,000人がCANON S TOWERおよび近隣の太陽生命品川ビル(7~18階を賃借)に引越すという、一大移転プロジェクトであった。

実際の移転作業は、2003年4月の第1週から5月の連休明けまでの5週に分け、金曜の夜から土曜の夜にかけての週末に実施された。多い週には、一度に1,800人もの引越しが行われたそうである。

この移転作業を指揮した事務局メンバーは、数名のみ。実際に活動を開始したのは、2002年1月のことであった。少ない人数で短期間に、 3,000人ものワーカーの移転をスムーズに完了さるためには、周到な計画、準備が必要だったことはもちろんだが、対処すべき問題は移転スケールの大きさ だけではなかった。このプロジェクトは、始動した当初から、重大な課題を抱えていたのである。

2001年1月に経営陣は、CANON S TOWERの入居人員を、当初計画のほぼ倍となる3,000人とすることを決定。試算によると、全員の机を配置することは物理的には可能であったが、そう すると文書庫等の収納スペースや、ファンクションエリアを確保するのが困難であることが判明した。

このような状況下、限られたスペースを有効活用してコスト削減を図ると同時に、業務効率と生産性を向上させるため、次の施策が採られた。紙ベース文書を 徹底して削減したうえで展開する、同社のコアビジネスでもあるドキュメントソリューションの実践と、個々の席を固定しないフリーアドレス制の導入である。

紙ベース文書の削減に向けて

現状の人員と書類がそのまま移動したのでは、移転コストが無駄となるだけでなく、新社屋に収納しきれない。そこで、移転プロジェクト事務局では、第 一段階として、各部門毎に保有している紙ベース文書のボリュームを調査することからスタートした。ただし、机の周辺等に溢れ出している書類すべてのカウン トを依頼するのでは現場の負担となるため、部門単位で、机と共用キャビネットの中のファイルメーター(書類の量を表す単位で書類を積み上げた厚さ/以下、 fm)を申告してもらうこととした。その結果、営業部門では平均3.5~4fm、管理部門だと多いワーカーで10fmもの書類を保有していることが明らか になった。

また一方で、実際に3,000人のレイアウトを組み、物理的に書類収納が可能なスペースを算出。フロア毎に入居する予定人数を出し、ワーカー一人当たり何fm確保できるのかを計算した。つまり、最低でもその差額分を削減しなければ、入居できないわけである。

一般的に、個人が抱え込んだ書類を捨てさせることは困難だ。頻繁には使わないが、そのうち必要になる時があるだろうと、キャビネットの奥に何年も しまい込まれたまま“過去の遺物”となった書類の量は、たとえ個人では僅かでも、数千人規模の組織では膨大なものとなる。しかし、いわゆるファイリングシ ステムの考え方には、「統計上、書類は半年経過すると10%、1年経過すると1%しか使用されない」という原則がある。つまり、法的に保管する必要のある 書類以外は、半年も過ぎれば私物と言っても過言ではなく“自分のための資料”となってしまうのである。

移転プロジェクト事務局でもこの原則を指標に、紙ベース文書削減の第二段階となる実際の廃棄作業を、2002年8月から9月にかけて実施した。手始め に、机上やその周辺に積まれた書類をすべてキャビネットに収納し、溢れたものは廃棄するように指示。ここで、年数を経た使用頻度の低い書類は、ふるいにか けられることとなった。また、就業後は、机上にある書類は全部収納してから帰宅するというルールを敷いた。9月の段階で、事務局のメンバーが土曜日に出社 して各部門を巡回し、進捗状況の監査を行っている。監査の際には、一番整頓が進んだ部門と、そうでない部門の様子を撮影し、イントラネット上で掲載すると いう徹底ぶりであった。結果として、2ヵ月で削減目標の8割を達成するに至った。

一連の紙ベース文書削減作業がスムーズに進行した背景には、事務局の綿密な計算に基づいた誘導があるのはもちろんだが、これを力強く後押ししたの が、同社の村瀬社長である。移転前、ワーカーの9割以上がノートPCを使用していたため、個人の荷物に関しては、「どうしても必要な書類は電子化して、 ノートPCと風呂敷一枚分の荷物にまとめて自分で運びなさい。それ以外は廃棄し、持って行くことは認めない」と社長名で号令。これは、移転該当部門だけで なく、全社に向けて通達された。逆に言えば、会社のトップの命令であるのだから、廃棄してしまってから後々問題が生じても、責任は問われないということ だ。これが功を奏し、最終的には、一人当たり平均2.7fmまで紙ベース文書を圧縮。移転時には、キャビネットに3分の1ものゆとりが出た部門もあった。 同社の引越しでは、ダンボールではなくオリコン(折畳式コンテナ)が使用されたが、その配布数が多すぎるとクレームが出るほどであったという。

高効率なオフィスプランニング

紙ベース文書削減とともに省スペース実現の両輪となったのが、モバイル環境下でのフリーアドレス制の導入だ。CANON S TOWERでは現在、ワンフロア約1,000m2の執務スペースに、多いフロアで260人、少なくても140人が執務しているが、原則として全館フリーア ドレスとなっている。また、電話も構内PHSを導入。共有スペースには無線LAN設備を完備してモバイル環境を整え、オフィスワークの効率化を図ってい る。

営業部門では、座席数をワーカー数の7割に抑えた。ノートPCを携帯して仕事をするスタイルが浸透した結果、机上で行うのは事務作業のみ。

グループ単位で動く営業メンバーにとって重要な打ち合わせは、ミーティングコーナーや会議室で行われている。さらに、フロアの中央と両サイドにはコラボレーションスペースも用意され、フレキシブルに活用されている。

机や椅子は、ユニバーサルデザインで統一した。個人の収納スペースは、営業メンバーは一般的な3段型ローキャビネットを4分割したサイズの“フ リーアドレスボックス”のみ。内勤者は、机の下に入る可動式ワゴンを与えられているが、個人ではなく共有スペースとして利用するよう指導している。原則と して、就業後は書類をすべてここに収納し、入りきらない書類等は保有できない。これは、移転後に紙ベース文書が再び増殖するのを防止するのはもちろん、組 織替えに伴うレイアウト変更にも柔軟に対応できるというメリットがある。

書類は即、電子化

ITインフラの整備が進んでも、紙ベース文書は一向に減らないのが、どの企業の総務課でも悩みの種であろう。“デジタルソリューションプロデュー サー”を標榜する同社では、デジタル複合機の活用によるドキュメントソリューションを実践。1台でコピー、FAX、プリンタの機能を兼ねるため、特に社員 数の多い企業では、ランニングコスト減および物理的な設置スペース減に貢献することはもちろんだが、同社は紙ベース文書が再び増加するのを防ぐため、次の ように活用している。

  • 紙で入手した文書は、すぐにスキャンして電子化し、ネットワーク上のPCに送信。原本の紙は極力廃棄して、机上に書類が積み上げられるのを防止している。スキャン操作はコピーと同様のため、特に手間と感じることはないという。
  • 複数が閲覧すべき紙ベース文書は、スキャンして共有化フォルダに送信し、PC上で閲覧している。会議の資料等も、出席者全員分をコピーすることなく、プロジェクターで投影し、必要に応じてメールで配信している。
  • 受信したFAXは、送信先番号によって自動的に担当者のPCへ転送する機能を、希望する部門が利用できる。そのため、FAXに受信紙が放置さ れることがなく、紛失リスクも低減できる。モバイル環境が整備された同社では、外出先でも閲覧できるように対応可能となっている。

以上の取り組みは、移転プロジェクトのメンバーが率先して実践しており、新社屋全体でも着々と浸透してきているということだ。

移転後のドキュメント管理

さて、このように電子化された文書を、どのように管理、運営していくべきか。同社ではCANON S TOWERに3,000人の入居が決定した時から、文書の電子化による省スペースと、それらの高効率な共有化を企図したファイリングシステムの構築に着手している。これは、突き詰めれば、「ナレッジマネジメントの規模はどこを指すのか」という根本的なテーマの追求でもあった。そのため、親会社であるキヤノン(株)が、2002年に下丸子の“世界本社棟”へ移転した際、プロジェクトに携わったメンバーも参加して検討を重ねている。

その結果、全社員を対象とすることはもとより、新社屋3,000名規模でドキュメントソリューションをシステム化するのは合理的ではない、という結論に達した。全社的なリアルタイムの情報伝達や営業活動に必要なツールの共有化は、イントラネット上で充足されている。そのうえ、組織規模の大きさを度外視して無理に蓄積情報の共有化を行っても、結果として浸透しないと判断した。同社の場合では、キャビネットを共有する単位、すなわち部門単位でドキュメントを共有化すれば十分であると考えたのである。

キャノン販売株式会社のオフィス しかし、その反面で、ドキュメントマネジメントの権限を各部門に完全に委譲すると、弊害が出てくるのも事実である。実際、移転前は部門毎にサーバーが乱立し、多種多様なソフトウェアが稼動しており、コストやセキュリティの面で問題が発生していた。社内のITインフラを管轄するIT本部にとっても、解決は急務となっていたという。そこで、新社屋への移転を機にサーバーを統合して一元管理するとともに、その中に組織構成単位でディレクトリの階層を作り、それぞれの部門毎にドキュメント共有化を行うこととしたのである。

さて、電子化した文書でも、無作為に収納場所に放り込んでいけば、いつかは破綻することが目に見えている。経過年数が不明になって捨てられなくなるのは、紙ベース文書と同様だ。そのため、同社では、保存してから時間が経過した文書を削除するため、2003年7月から、次のようなルールの下でドキュメント管理を行っている。

  • 組織単位のディレクトリは、組織の改変時に新しく作成する。
  • それぞれのディレクトリは、一定期間保持され、期間を過ぎると自動的に削除される。
  • 新しいディレクトリの作成時に、古い方から新しい方へ、無理にファイルの移動をせず、随時必要なものを移動させる。

このルールに従って運営されれば、作成されてから時間を経て使用頻度の少なくなった文書は、機械的に消去されることとなる。前述した通り、書類は半年経過すると10%、1年経過すると1%しか使用されないという前提に立てば、まさに簡潔かつ合理的な管理体制と言えよう。

新本社体制がスタートしてから、間もなく1年が経つ。3,000人が日々のオフィスワークの中で、“机上に書類を出さない環境”をどこまで維持できるか、移転前は懐疑的な面もあった。しかし現在は、特に総務部等で管理を行わなくても、ほぼ移転直後の状態で推移しているという。

このルールが遵守されているのには、次のような理由がある。まずは、実際にやってみて非常に仕事をしやすい環境であることに気が付き、全体として意識の改革が起こったこと。そして何よりも、同社がドキュメントソリューションといった“仕組み”を売る会社であり、新社屋そのものがショールーム的機能を果たしていることを、社員一人一人が自覚していることであろう。

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上記内容は オフィスジャパン誌 2004年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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