カルチャー発信地の渋谷に拠点を置き、その人らしい個性と活躍を支えていきたい。
TikTokの流行を予感し、いち早くインフルエンサーマーケティングに取り組んできた株式会社TORIHADA。SNSを舞台にした広告制作・配信のほか、子会社PPP STUDIOではクリエイターの支援事業も手がけている。創業7期目を迎えた昨秋には、組織拡大に向けてオフィスを移転。これまでの変遷と今後の展望について代表取締役社長CEOの若井氏に訊いた。
株式会社TORIHADA
代表取締役社長 CEO
若井 映亮氏
「鳥肌が立つ感動」をめざし、ガムシャラに働いた創業期
TORIHADAは、インフルエンサーやSNSに特化したマーケティングをもとに広告制作・配信などを行っている会社です。「鳥肌が立つ感動をつくる」をビジョンに2017年10月に創業。当初はミュージックビデオの受託制作を主な事業にしていましたが、TikTokの盛り上がりを追い風にショートムービーやインフルエンサーマーケティングの領域へとシフト。2020年2月には100%子会社の「PPP STUDIO」を設立し、インフルエンサーやクリエイターのマネージメントも行うようになりました。
私自身はもともと、2013年に新卒でサイバーエージェントに入社し、アドテクノロジー事業に携わっていました。インターネット広告のマッチング精度を高め、広告効果を最大化する。それを目標に働く中で、世の中は今後、AIやロボティクスによってどんどん合理化されていくだろうと思うようになりました。極端なことを言えば、働いてお金を得ることに人は価値を見出さなくなるかもしれない。そのような状況になるとしたら、はたしてお金に代わるものは何だろう?人が本質的に求める価値って何だろう?と突き詰めた結果、それは「感動」ではないかと考えるように。そのような仮説をもとに会社を離れ、前職の同僚ら3名で立ち上げたのがTORIHADAです。
とはいえ、創業時の資本金は50万円。まずはとにかく生き抜こうと、ミュージックビデオの制作のほか、アプリ開発の受託をしたり、時には経営コンサルティングの一環として企業でパソコンの操作を教えたり。鳥肌が立つ感動をめざしたものの、とにもかくにもキャッシュフローを安定させるのにガムシャラでした。
事業の方向転換で売上が倍増、社員の増員に合わせて移転を実施
もちろん、オフィスを借りる余裕もありません。当時拠点にしていたのは、友人が経営するバーです。営業が始まる18時まで月3万円で間借りし、営業が始まれば近くのファミレスに移動して打ち合わせをする。そんな毎日でした。2021年に私たちにジョインし、現在弊社のCOOと子会社の代表を兼任する卯木研也は、前職時代にバーへ顔を出してくれましたが、「ここで会社をやってるの!?」と驚かれたことを覚えています。それでもバーを拠点にしていた2ヶ月間でメンバーは増え、社員は7名に。そこで2018年1月、当時リクルートが渋谷で運営していたシェアオフィスへ移転。面接審査を通れば、半年間無償で利用できるという好条件だったので、応募したところ入居できました。ただし、1社につき5名までという人数制限があったので、あふれた数名は近くの別のシェアフィスで勤務することに。自分たちの城と呼べる単独のオフィスを初めて借りられたのは、その半年後、渋谷区の通称「奥渋」と呼ばれる住宅街で、3階建のごく一般的な戸建住宅を1棟借りした時でした。
2019年1月には、同じ奥渋で広いワンフロアのマンションへ移り、社員が40名になった年末には北青山のシェアオフィスへ。戸建住宅とマンションは定期借家契約で借り、シェアオフィスも建て替えの予定があるなど、それぞれ限られた期間ながらコストが抑えられることを理由に、転々としていました。
2020年10月に池尻大橋駅近くの雑居ビルへ移りましたが、学習塾やジムが入居していて上層部はマンションになっていて、卯木からはバーの時と同様に「ここにオフィスがあるの!?」と言われましたね(笑)。そのビルでは、当初ワンフロアのみ借りていましたが、映像の受託制作をやめ、インフルエンサービジネスに舵を切ったところ、人を増やせば増やすほど利益が出るようになり、年間売上も一気に2倍以上に。結果的にさらに1フロアを借り増すことになりました。
2フロアで100坪弱。すでに子会社は立ち上げていたので、さらなる増員を見越して2022年3月、親会社のTORIHADAを渋谷・神南の新築オフィスビルへ移転。8月には子会社も神南の別のビルへ移しました。渋谷は、若者の新しい文化が生まれる街で、インターネット広告関連の企業も集まっています。私たちとしても常に注視しておきたい場所です。企業の撤退が続いたコロナ禍だったため、入居費も格安でしたし、親会社と子会社の事業を明確に分け、独立した会社として運営することで、取引先とのお付き合いもそれぞれで広がりました。その意味でも渋谷への移転は正解だったと考えています。
これからは「個人の時代」柔軟な働き方に応える拠点を構築
渋谷に移転してからは、親会社と子会社の関係性に加え、組織コミュニケーションのあり方も見直してきました。例えば、規模が大きくなった親会社では、現場のスタッフたちに余計なプレッシャーを与えないよう、経営陣からの直接的なやりとりは控え、オフィスに役員室も設けました。ただ、その広さがフォンブースぐらいで、社員たちからは「狭くて可哀想だ」と、逆に心配されたりもしましたね(笑)。
創業7期目を迎えた2023年10月に社員数は100名を超え、さらなる増員を見据えて現在入居する道玄坂の複合ビルへ移転してきました。その時に親会社と子会社を再びワンフロアにまとめましたが、子会社の代表は私から卯木になり、ベンチャースピリットを維持しながら独自に経営してもらっています。
現在のオフィスは、広いフリースペースを確保しており、社員同士のコミュニケーションはもちろん、TikTokクリエイターや取引先の方々が来社した際にも、気軽にご利用いただけるように意識しています。また、役員室も打ち合わせができる広さになりました。
コロナ禍が明けたので出社を原則としていますが、九州や北海道など、遠方在住の社員や自宅の方が業務がはかどる場合には、リモート勤務も認めています。社員たちが柔軟に働けることはもちろん、今後はSNSのクリエイターをはじめ、人それぞれの個性や活躍を大事にする時代になっていくと考えています。
弊社が掲げるパーパスは、「意思ある個人による新しい経済をつくる」です。今のオフィスは広さに余裕があるので、まだまだ増員でき、以前のように移転を繰り返すことはなくなるでしょう。この渋谷にしっかりと腰を据え、個人の活躍を支えるインフラやサービスの構築をめざして、事業に取り組んでいきたいと思います。
子会社のPPP STUDIO株式会社の代表は株式会社TORIHADAのCOOも兼任し密な連携をとっている。
PPP STUDIO株式会社
代表取締役社長
卯木 研也氏