2019年11月下旬、中国湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」として最初の症例が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、パンデミックと呼ばれる世界的大流行となった。〔図1〕はG7(先進7ヶ国)と中国における累計感染者数と人口1万人あたりの感染者数を表している(2020年8月4日時点)。アメリカの累計感染者数は460万人を超えており、直近も1日の新規感染者数が6万人前後と感染拡大が続いている。
一方、ヨーロッパ各国(イギリス、イタリア、ドイツ、フランス)は1日の新規感染者数が減少し、感染収束の傾向にある。ただし、ワクチンや抗ウイルス薬の開発には時間を要しており、行動制限を緩和したことによる感染「第2波」の懸念は残っている。中国の感染者数は累計8.7万人と、アメリカやヨーロッパの感染者数を大きく下回っている。1万人あたりの感染者数も0.6人に抑えられており、日本の3.0人よりも低い値となっている。
次に、人々の移動傾向をみる。〔図2〕は、小売店や娯楽施設への訪問数の推移を世界の地域や国別に集計したものだ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の行動が制限される直前の移動量1をベースライン(0%)として表している。3月中旬から5月下旬にかけて国単位のロックダウン(都市封鎖)がおこなわれていたヨーロッパ各国(イギリス、イタリア、ドイツ、フランス)は、ロックダウン期間中に最大でマイナス80%と大きく落ち込んだものの、ロックダウンが解除された5月以降は右肩上がりに訪問数が伸びており、直近はマイナス10%程度に改善している。同じく、3月中旬から5月下旬にかけて州や地域によっては封鎖や行動制限がおこなわれていた北アメリカは、期間中に最大でマイナス50%を超えたものの、直近はマイナス15%未満に改善している。ただし、再び感染が拡大したことによって、マイナス幅の改善は足踏み状態にある。
一方、東アジア各国(香港、台湾、韓国)2は最大でもマイナス20%と、大きな落ち込みなく感染拡大前の移動量に戻りつつある。また、4月7日から5月27日の間、緊急事態宣言が発出されていた日本は、期間中にマイナス40%近く落ち込んだものの、直近はマイナス15%未満に改善している。ただし、日本でも感染の再拡大がみられており、マイナス幅の改善は足踏み状態にある。