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オフィスで発生する“新しい時代の労災”にどう対応すべきか

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2018年10月30日

株式会社メディカルトラスト 取締役 事業部長 佐藤 典久 氏

株式会社メディカルトラスト
取締役 事業部長 佐藤 典久

オフィスで起きる労災が変化

精神障害等の労災補償状況(年度別)
労災の申請状況の推移(年度別)

社員の健康管理で最優先すべきは、労働災害の予防です。これを理解していないと、思わぬ落とし穴に落ちることになります。

最近のオフィスでは、工場などとは違い、安全よりも衛生面での労災が重要となっています。【図1】のように精神障害での労災申請と労災として認められたという意味の支給決定件数は右肩上がりで、脳卒中や心筋梗塞などの2倍となってしまいました【図2】。労働時間が長い、または不規則、人間関係が悪い、ハラスメントがある…などの職場では、いくら快適なオフィスをつくってあげても、労災を防ぐことには直結しません。

健康管理体制の構築の目的は、「会社としてのリスク管理」「経営問題という視点から行う健康リスク管理」が最優先事項となります。法律で義務付けられている、年に1回以上の健康診断の結果や、毎月の実労働時間などを基にした社員の監視体制ができていなければ、健康リスク社員の発見はできません。実際に、高血圧の社員に対して、毎年精密検査を受けるように指導するだけで、長時間労働をさせ自宅で脳卒中により死亡させてしまった会社が、東京高等裁判所から3,200万円の損害賠償の判決を受けています。

健康診断は受けさせることが目的ではなく、就労ができる状態かどうかを会社が判断するために行わせるもので、労働者には法律で受診する義務が課されています。折角お金と時間をかけて行った定期健康診断がやりっぱなしだと、企業側のリスクとなってしまうのです。

働き方改革法で何が変わる?

働き方改革の重要な法律の一つとして、労働基準法とセットで「労働安全衛生法」も改正されました。それを先取りする形で第13次労働災害防止計画が2018年4月から5年間の期間でスタートしています。

その中には過労死防止対策の一環として、時間外労働時間の上限規制が導入されることと、“産業医・産業保健機能の強化”が打ち出されています。産業医を選任している事業場は、その業務の内容や来所日時などを常時各作業場の見やすい場所に掲示する義務や、産業医が辞任もしくは解任された場合には、その理由などを衛生委員会で報告する義務などが新しく導入されました。

その目的は、産業医にきちんと長時間労働者の面接をさせて、過労死を防止させることと、そのために産業医に責任を持たせ「事業主に対する勧告権」を利用するよう促すためです。2017年6月からは、労働安全衛生規則の改正で、産業医に対して毎月必ず長時間労働者の氏名や状況を報告しなければならないことになっていましたが、それが労働安全衛生法に明記され、今まで100時間超の長時間労働者を対象に行ってきた医師面接指導は、80時間超に対象ラインが下がります。2019年4月以降は、中小企業を除き1ヶ月の時間外労働時間が法律で休日労働を含めて100時間未満でなければならなくなりますので、理論的には一般の労働者で100時間を超える時間外労働はなくなるはずです。こうして罰則付きのルールがスタートすることになりました。

労働時間の把握をしなければならない理由

もう一つ、労働安全衛生法と第13次労働災害防止計画の関係で大きく変わるものがあります。それは“労働時間の客観的な方法での把握”です。今まではどちらかと言えば残業代を正確に支払うための経理中心の時間管理だったものが、疲労の発生・蓄積の把握のための労務・総務・人事中心の“健康管理時間”のための時間管理へと変化せざるを得ないということです【図3】。

労働基準監督官や裁判官からは、タイムカードやICカード、パソコンのオンオフなど客観的な方法で把握された労働時間の管理が、オフィス内での労働者はもちろん、在宅勤務者に対しても要求されることになります。

事務所衛生基準規則とは

それではここで、具体的な対応策を検討してみましょう。快適な職場を提供することは当然のことですが、みなさんは「事務所衛生基準規則」をご存知ですか。省略して「事務所則」と呼ばれる、事務所に関しての安全衛生規則です。その第5条には部屋の気温と湿度の基準が設けられており、部屋の気温は17℃~28℃、相対湿度は40%~70%の範囲内にする旨の規定があり、労働者数とトイレの便器の数の規定もあります。また、第21条では、常時50人以上、または常時女性30人以上の労働者を使用する場合は「労働者が臥床することができる休養室または休養所を男性用と女性用に区別して設けなければならないとされています。設計図の段階から、この休養室または休養所をどこにするのかを検討しておかなければなりません。

なお、この規則は罰則付きの規則となっており、処罰される場合は、法人とその代表者が6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

続いて、オフィスで発生する“新しい時代の労災”リスク対策を考えてみましょう。長時間労働を伴う健康問題や精神障害については、早い段階で医師や産業保健スタッフなどの専門家が介入することで、労務問題にならずに落としどころを見つけることが可能になると思われます。精神障害が労災のメインであることを理解して対応してくれる産業医の確保が最も重要であることは当然ですが、その産業医が面談する相談室または面談室についても十分配慮していますか?

相談室や面談室を前述の休養室の隣に作ったりしているケースをたくさん見てきましたが、労働者のプライバシーが十分保護され、相談や面談の内容が他の人に漏れない保証ができている施設はまだ多くありません。面談者ができるだけ他の労働者に顔を見られることなく、相談や面談に来られるルートの確保も大切です。

ただ、多くの会社では、面談専用の小さな部屋の用意は難しいと思われます。日中の長い時間、復職面談や長時間労働者への面接対応のために会議室を占拠して、社内からクレームを受けるケースも多く見受けられます。

家賃の高いオフィスで、プライバシーが守られる面談室を用意するのは、費用対効果の問題でも難しいという声も多くなっています。産業医業務を受託している弊社(メディカルトラスト)では、「社外産業保健室」という社外の相談・面談専門施設を全国で展開しており、毎年数千人の長時間労働者やストレスチェック後の高ストレス者、復職予定者などの方々の、医師や保健師による相談・面接を実施しています。派遣会社や客先常駐が多い企業、小規模多店舗の企業様などからの依頼が多くなっています。

本社だけ快適でよいのですか?

全国展開している企業・団体の地域の支店や営業所を訪ねると、本社に対するいろいろな不満を耳にします。

例えば、本社のオフィスを快適職場にするならば、せめて産業保健上でのサービスを本社レベルにして、小規模事業場でも保健指導や医師面接などが受けられる仕組みを導入するなど、オフィス整備以外の部分で配慮をしてください。WEB会議システムなどを上手に利用すれば、全国の労働者に同じサービスが提供できますし、国内や海外の小規模事業場の部分だけの健康管理業務をアウトソーシングする企業も増えてきています。働き方改革は、いろいろな面からアプローチし、全社規模で考えていただければと思います。

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上記の記事の内容は BZ空間誌 2018年秋季号 掲載記事 掲載当時のものです。

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